外注溶接の数量は、部品と組立品を同じ単位で引かない
外注先へ部品Aを200個、Bを100個渡し、組立品が80台戻ってきたら、残りはいくつでしょうか。「300個渡して80台戻ったから220個不足」とは計算できません。部品の個数と組立品の台数では、数えている物が違うためです。組立品1台にAを2個、Bを1個使うなら、まず部品別の対応数へ戻し、未加工の返却と外注先に残る物を分けて見ていきます。
記録の軸は外注依頼番号です。渡した品番・ロット・数量と、戻った組立品の番号・ロット・台数を結び、未加工品や作業中の品の所在も追います。この記事では、その受渡しを照合する表と記入順を説明します。溶接条件、施工の適否、強度、検査基準は、案件に適用する仕様や手順に従って判断してください。
構成表と、追跡する単位を外注先へ渡す
構成表は、組立品1台に使う部品と個数を示す資料です。依頼する図面の版と対応する承認済みの構成表を使い、似た部品や同じ品番の別ロットを取り違えないようにします。さらに、個体まで追うのか、ロットごとの対応を残すのかを外注先と決めましょう。下の表へ依頼番号と追跡の単位を並べると、戻り明細に何を書いてもらうかも具体化できます。
GS1のトレーサビリティ標準には、製造などで物が変わる際に、投入した物と出来上がった物の関係を記録する考え方があります。以下の表は、その考え方を外注溶接の受渡しへ当てはめた編集部の例です。帳票の使い方を示すもので、溶接の専門規格への適合を保証する表ではありません。GS1 Global Traceability Standard、R24
| 準備情報 | 架空例 | 記録する担当 |
|---|---|---|
| 外注依頼と図面 | 外注O-15/組立図W-10・3版 | 購買・依頼担当 |
| 部品構成 | 組立品1台=Aを2個+Bを1個 | 技術担当の承認資料を参照 |
| 支給する部品 | A・ロットA01、B・ロットB01 | 払い出し担当 |
| 戻り品の管理単位 | 組立ロットW01/台 | 外注先と依頼担当 |
| 余り・不適合・治具 | 返却区分、連絡先、治具JG-02の返却要否 | 双方の窓口 |
架空例:80台の戻りと、外注先に残る部品を照合する
まず、Aを200個、Bを100個支給し、組立品80台が戻った架空例で見てみましょう。構成変更、追加投入、廃棄、紛失はなく、外注先から下表の対応明細を受け取ったと仮定します。ここで数えるのは、どの部品がどこへ移ったかです。組立品80台を受け入れた記録と、品質を判定した記録は別に結びます。
| 支給品 | 支給数 | 戻り80台に対応 | 未加工で返却 | 外注先に残る | 照合 |
|---|---|---|---|---|---|
| A/A01 | 200個 | 160個 | 10個 | 30個 | 200=160+10+30 |
| B/B01 | 100個 | 80個 | 5個 | 15個 | 100=80+5+15 |
戻り80台に対応する部品は、Aが80×2=160個、Bが80×1=80個です。これに未加工返却と外注先残を足すと、部品ごとに支給数へ戻ります。一方、外注先残のA30個・B15個は、構成数量上は15台分でも、完成する15台を保証する数ではありません。現物の状態、工程の進み具合、ほかの構成品の有無を調べず、納期回答へ使わないようにしてください。
未加工で戻ったA10個・B5個は自社にあり、A30個・B15個は外注先に残っています。この違いを消して「残り」とだけ書くと、次回の支給を決める際に所在を探し直します。自社で受け取った物、外注先の作業中・未着手・処置待ちを分け、どの時点の数量かも添えてください。数量が合った後も、状態と所在の対応は残します。
数量が合っても、部品ロットと戻り品の対応を追う
次は、Aを別ロットA02から追加支給した場合です。品番別の数量が合っていても、戻り品W01へA01とA02のどちらを使ったかまでは分かりません。外注先の実績明細へ照会し、答えの出ていない製品区間には候補を併記します。対応不明のまま次工程へ流さず、適用する追跡条件に従って保留し、回答者と期限を残しましょう。
| 戻り品の区分 | 部品ロットの実績・回答待ち候補 | 明細の状態 |
|---|---|---|
| W01・先行50台 | A01、B01 | 外注明細D-01と照合済み |
| W01・追加30台 | A01またはA02、B01 | Aの対応を回答待ち・対象区間を保留 |
| 返却部品A10個 | A01 | 返却票R-01、保管棚A |
上の表は、途中で追加支給した別の架空例です。前の数量表へそのまま足すものではありません。先行50台は明細D-01へ戻れますが、追加30台のAは回答待ちです。この差を見せるため、候補を確定ロットと同じ欄の意味にしないでください。先入れ順だったはずと推定せず、根拠を得た時点で日時と回答明細を追記します。
依頼から受入までの記録を5段階にする
- 依頼担当が適用資料と追跡単位を決める。承認済みの図面版と構成表、外注依頼番号、追跡するロット・個体の範囲を外注先と共有します。
- 払い出し担当が実物の支給を記す。品番・ロット・数量・単位を送り状と受領記録へ結びます。治具は使用材料から分け、貸出と返却を追います。
- 外注先と戻り明細の内容を決める。組立品数と対応部品ロット、未加工返却、作業中、不適合・処置待ちを、所在と時点が分かる明細で受け取ります。
- 受入担当が戻り品の現物と明細を照らす。組立品、未加工部品、治具を区別して数えます。組立品の品質は所定の検査記録へ結び、受領だけで使用可にしません。
- 依頼担当が数量差と不明な対応を追う。数量が合わない、ロットをたどれない場合は、対象と差、照会先、回答期限を残します。回答後は日時と根拠、所定の処置・解除結果を追記します。
不適合や手直しで戻る場合の扱い
手直しで組立品を送り直す場合は、元の組立品番号と再送依頼を結びます。新規の支給部品へ混ぜると、1台が往復しただけなのに「2台完成」と数えるおそれがあるためです。追加の交換部品を送った場合は、品番・ロット・実数を別明細に残します。戻った後の再検査や使用可否も、往復の記録とは分けて追ってください。
数量差を埋めるために、担当者だけで廃棄や代替使用を決めてはいけません。不適合の理由、状態、所在、数量、判断者を記し、費用負担や処置は取引条件に沿って合意を残します。材料証明書や個体追跡が求められる案件では、その資料まで戻れるようにしてください。台帳の合計が合ったことを、要求する履歴がそろった代わりにはしません。
まとめと参照した一次資料
まずは外注依頼ごとに、部品別の支給数、組立品へ対応する数、未加工返却、外注先残を照合しましょう。次に、どの部品ロットをどの組立品へ使ったかを実績から結びます。数量差と対応不明の区間は、回答者と期限を付けて追ってください。この順番なら、数だけ合っている状態と、履歴・品質の条件まで満たした状態を分けて扱えます。
依頼前に渡す資料は外注先への加工指示の照合表を、材料から製品へたどる項目は材料ロットを追う方法も参考にしてください。送り出す担当と受入担当が同じ依頼番号へ戻れる形にしておくと、追加支給や再送の際にも元の明細を探しやすくなります。
- GS1 Global Traceability Standard 2.0、R24(40ページ):製造時の投入と産出の関係を残す考え方を参照しています。2026年10月4日閲覧。

