二液型インキでは、同じ材料缶から作っていても、混ぜた時刻が違えば使用できる時間帯も変わります。そこで、混ぜた容器ごとに番号を付け、混合時刻・使用終了時刻・使用先を結ぶ形で記録しましょう。缶のロット番号は材料をたどる情報であり、現場で何時に混合したかを示すものではありません。混合した回と、実際に使った仕事まで結ぶことがポイントです。
対象は、プラスチック・金属部品のスクリーン印刷やパッド印刷で、指定された二液型インキを使う現場です。配合、混合順、待ち時間、使用可能時間は、その製品の資料と承認作業票に従います。この記事の時刻や数量は記録の対応を説明するための例なので、実作業の条件として転用しないでください。
混合番号 MIX-01
混合日時:9/23 08:30
使用終了の期限:9/23 11:30〈承認作業票の条件による〉
使用先:作業PR-21/照合担当:担当A
この表示は架空例です。3時間を共通の可使時間にしてよい、という意味ではありません。また、表示した期限と実際に使用を終えた時刻は別に残すと、交代時にも経過をたどれます。
可使時間と、缶の使用期限を分ける
二液型は、使用時にインキと指定の硬化剤などを組み合わせる方式です。可使時間(ポットライフ)は、混合後に使用できる時間のことで、未開封の缶の保管期限とは別に管理します。いつから数えるか、どの温度などの条件で扱うかは製品資料へ照らしましょう。開封済み材料の扱いも含め、缶が期限内だから混合後も使える、とは判断しません。
例えば十条ケミカルのAPインキ2000シリーズでは、硬化剤の種類、可使時間に対応する温度、乾燥・硬化条件が個別に示されています。そのため、材料名だけでなく適用資料と版を作業票へ結び、対象製品に使う条件をたどれるようにします。ほかのインキへ同じ時間や配合を当てはめないことも、この記録を作る前提です。十条ケミカル「APインキ2000シリーズ」
容器の中で流れている、まだ印刷できそうに見える、といった印象だけでは使用期限を延ばせません。資料の時間に幅があったり、現場の温度が記載条件と異なったりする場合も、長い側の時間を採用して済ませないようにします。メーカーと責任者へ照会し、対象の条件を確定して作業票へ反映してから使います。
混ぜる前に材料と適用条件をそろえる
| 準備するもの | 照合する内容 | 記録先 |
|---|---|---|
| 使用材料 | インキ、硬化剤、希釈剤などの製品名とロット | 混合記録 |
| 承認条件 | 配合の基準、質量か体積か、混合順、起算点と使用終了条件 | 作業票の番号・版 |
| 計量器と容器 | 指定範囲を測れる計量器、容器の適合・清浄状態 | 計量器番号、容器番号 |
| 作業環境 | 製品資料で指定された温度などの条件 | 測定方法・実測値・時刻 |
| 使う仕事 | 作業番号、製品、色、予定する区間 | 作業記録との対応 |
表の配合基準では、割合の数字と、その基準になる量を一緒に読みます。例えば「10%」とあっても、インキ単体に対する量なのか、混合後の総量に対する量なのかで計算が変わるためです。質量か体積かも含めて製品資料と照合してください。配合条件が未確定の段階では、記録シートへ計算式を入れても正しい量は決められません。
容器番号を中心に、使用するまでをつなぐ
- 混合前に番号を発行します。「9/23の黒」だけでは複数回の混合を区別できません。例えば「MIX-20260923-01」のように日付と連番を組み合わせ、複数担当で作る場合も番号が重複しない発行方法を決めます。本記事の表では同日内の例としてMIX-01、MIX-02と短く表記しています。
- 材料名と量を照合して混合します。実際に使う材料と計量値を残し、作業票で定めた照合と承認を受けてから進めます。硬化剤と希釈剤を取り違えないよう、略称だけにしないでください。
- 起算点と使用終了時刻を書きます。日付も表示し、休憩・交代後も期限を読めるようにします。時刻不明の容器は「時刻不明・使用保留」として分け、責任者へ連絡します。
- 使用先を記録します。どの製品ロットへ、何時から何時まで使用したかを作業記録へ結びます。複数の仕事に使用した場合は、それぞれの行を残します。
- 終了後の処置を記録します。残量、隔離先、処置の担当者を記入します。残材や洗浄物は、SDSと職場の廃棄・保管手順に従って扱います。
上の手順で記録する材料名は、似た名称を取り違えないよう製品の表示と対応させます。硬化剤や希釈剤の選択は乾燥や接着性にも関わり、Marabuの資料でもインキごとの技術資料が案内されています。別製品の残りを足したり、希釈剤を加えて起算時刻を更新したりして、独自に使用期限を延ばしてはいけません。補充できるかどうかも、承認条件へ照らして扱います。Marabu「Pad Printing Auxiliaries and Additives」
架空例:同じ黒インキでも、混合番号を分ける
次の表は、同じ黒インキでも混合した回を分けて追う架空例です。使用終了の期限は、それぞれの承認作業票から転記した設定とします。期限前に作業を終えた場合は実際の終了時刻を別に記し、残りをどう扱ったかまで記録します。
| 混合番号 | 混合/使用終了の期限 | 使用した範囲 | 交代時の表示 |
|---|---|---|---|
| MIX-01 | 08:30/11:30 | PR-21の箱1~3、計120個 | 11:10終了。残り35gは識別して所定の保留場所へ |
| MIX-02 | 11:00/14:00 | PR-21の箱4、40個 | 混合記録あり。MIX-01へ混ぜない |
| 番号不明の容器 | 不明/不明 | 使用先も未判明 | 使用を保留し責任者へ照会 |
この例では、インキを使用した製品は120+40=160個です。一方、残り35gは容器に残った量で、そこから使用量や印刷可能な個数を逆算したものではありません。蒸発や容器への付着もあるため、仕込み量と残量の差を、そのまま製品に付いたインキ量としないようにしましょう。製品の使用先と、残材の処置は、それぞれの記録で追います。
期限や時刻が分からなくなったとき
混合時刻や期限が分からなくなったら、使用を保留して責任者へ連絡します。ラベル、計量記録、担当者の記録をたどり、確定できない部分を推測で埋めないようにしてください。期限を過ぎた場合も、見た目で使用を続けず所定の扱いへ移します。すでに使っていたときは、分かる範囲の製品ロットと時刻を品質担当へ渡し、不明な範囲も含めた調査と処置の判断につなげます。
時刻を復元できても、それだけで容器の使用や製品の出荷を再開してよいとは限りません。適用条件と品質上の扱いを、所定の権限者が判断します。保留を解除した場合は、根拠となる事実、判断者、日時、対象範囲を残しましょう。記録の補完と、現物を使える状態になったことを分けて追えます。
小さく始めるなら、容器ラベルと一覧の2つ
始めるなら、容器ラベルと一覧の2つを混合番号で結ぶ方法があります。ラベルには混合番号・混合日時・使用終了の期限・使用先を見やすく載せ、材料ロット、配合実績、照合担当などは一覧から引ける形にします。ただし、危険有害性など職場で定めた表示を省くものではありません。所定の表示を維持しながら、同じ内容を何度も書き直さず参照できる形を選んでください。
まず混合番号を一つ選び、材料・容器・使用先・残材の扱いまでつながるかを試してみましょう。材料から使用先を追う記録や、担当間での判定の合わせ方は、次の記事でも解説しています。関連記事:材料ロットと作業をつなぐ管理/検査方法と判定基準をそろえる方法
