月締め請求は「対象の納品明細」を1回ずつ拾う
分納の請求数量は、受注総数や累計出荷数を転記するのではなく、取引先と決めた締め条件に合う納品明細を積み上げて確定します。同じ注文を何度かに分けて納めると、合計数量が合っていても、前月分をもう一度請求する場合があります。受注番号に加えて、受注明細番号、納品書番号、納品明細番号、請求番号を結び、どの納品分を今回請求するかまで追える形にしましょう。
出荷担当が扱うのは「今日送り出した数量」、請求担当が扱うのは「今回の締めで請求する数量」です。前月の出荷や締め後の受領、返品があれば、両者が同じ数になるとは限りません。まずは、その違いを前提に記録を分けましょう。以下は取引先との取り決めに合わせて使う運用例です。出荷前の数量を決める手順は、受注残と今回出荷数の管理手順で先に合わせておくと、請求時に予定と実績を取り違えにくくなります。
注文・出荷・納品・請求の数量を別々に持つ
| 記録 | 数量の意味 | 照合する元資料 |
|---|---|---|
| 受注 | 変更を反映した注文数量 | 注文書と確定済み変更記録 |
| 出荷実績 | 実際に送り出した数量 | 確定した出荷記録・送り状等 |
| 納品明細 | その納品書に記載した数量 | 有効な版の納品書と受領・検収の記録 |
| 月締め請求 | 今回の締め対象として確定した数量 | 対象納品明細一覧・前回請求の控え |
| 未出荷予定 | まだ出荷していない数量 | 残数と次回出荷予定。今回の実績へ加えない |
上の表では、注文、実出荷、納品書、請求対象、未出荷予定を分けています。とくに請求対象を選ぶ日付は、取引先と合意した出荷日、納品日、検収日などに合わせます。担当者の都合で切り替えず、取引先別に締め日、日付の種類、受領の記録を求めるかを書いてください。この表で行うのは業務上の数量照合です。売上を計上する日や税額まで、数量の一致だけで決めるものではありません。
架空例:1,000個の注文を月をまたいで分納する
下の表を、説明用の架空例で読みます。注文A-100の明細01は1,000個で、月末までに納品が済んだと判定できた分を当月請求する取り決めとします。返品、値引き、数量変更はありません。8月に300個を納品して請求済み、9月は400個と200個を納品し、残る100個は10月の予定です。この前提を置くと、注文全体と今回の請求分を分けて計算できます。
| 納品日・予定日 | 納品書/明細 | 数量 | 9月の扱い |
|---|---|---|---|
| 8月25日 | D0825-01/01 | 300個 | 8月請求済み。9月には入れない |
| 9月10日 | D0910-01/01 | 400個 | 9月対象 |
| 9月25日 | D0925-02/01 | 200個 | 9月対象 |
| 10月5日予定 | 未発行 | 100個 | 未出荷予定。対象外 |
9月請求数量は400+200=600個、累計納品数量は300+600=900個、未出荷残は1,000-900=100個です。表の8月分はすでに請求済みなので、9月請求へ累計900個を入れると300個が重なります。一方、未出荷残100個は、これから出す予定の数です。これを請求欄へ入れても、今回の600個を集計したことにはなりません。計算結果だけでなく、その数字がどの明細を表すかまで読み合わせましょう。
この例では、9月の請求番号I-0901に、D0910-01/01とD0925-02/01を結びます。600個という合計だけを保存せず、足した2明細へ戻れるようにしてください。納品書に複数の品番がある場合も、書類番号だけでなく明細番号まで付けます。取引先ごとに同じ番号が使われる運用なら、取引先を含めた組で識別し、別の相手の明細と混ざらないようにします。
締め日に行う照合を5段階に分ける
- 対象を抜き出す。取引先・締め期間・対象日付の条件で納品明細を抽出する。前月から判断待ちの明細は、別一覧で理由と回答状況を見る。
- 実績と照合する。出荷指示ではなく確定した実出荷数量を見て、品番・単位・納品書の有効版と比較する。箱数と個数は区別する。
- 重複と漏れを探す。取引先・納品書番号・明細番号を組にして、今回一覧と過去の請求控えの両方で重複を探す。未請求で対象一覧から漏れた明細も拾う。
- 差異を確定させる。納品数の誤記、受領記録の不足、取消伝票などを関係担当者と調べる。数量だけ合わせず、訂正理由、判断した人、合意内容を残す。
- 請求控えを固定する。確定した対象一覧に請求番号・発行日・照合担当者を付け、発行した請求書と一緒に保存する。発行後の変更は訂正として別に追う。
上の5段階では、明細を抜き出してから、実績、重複と漏れ、差異、発行控えの順に進めます。ただし、同じ納品明細を複数月に分けて請求する取り決めがある場合は、請求割当番号と割当数量も持たせます。このとき、同じ納品番号を見つけただけで行を消してはいけません。過去分と今回分の割当を足し、訂正や返品の扱いを反映して確定した請求可能数量を超えないかを照合しましょう。こうした例外が自社にあるかを、表を作る前に調べておきます。
返品・締めまたぎ・再発行は元の記録を残して処理する
| 状況 | 残す記録 | 避ける処理 |
|---|---|---|
| 月末出荷、翌月受領 | 出荷日と受領日、取り決めた請求対象月 | 出荷日だけで当月分と決める |
| 請求後の返品・代品 | 元納品明細、返品数、代品数、合意した請求上の扱い | 代品出荷を自動的に新規販売として足す |
| 納品書の訂正・再発行 | 元番号と版、訂正版、訂正理由 | 旧版と新版を両方集計する |
| 残数の取消 | 受注変更の記録と未出荷残 | 未出荷の取消数を過去の実績から引く |
たとえば10月に、9月納品分の20個を返品し、同数20個を無償の代品として送るケースを考えます。物の移動は、返品20個と代品出荷20個の2件です。ただし、出荷の20個をそのまま追加請求する扱いにはしません。返品と代品を元明細へ結び、取り決めや原因に応じて請求の修正方法を担当者が判断します。元の9月納品記録を書き消さず、物の移動と請求上の訂正を別に追えば、同じ返品を二重に差し引くことも見つけやすくなります。
上の表で判断が残る明細には、理由、照会先、次に回答を得る日を付けます。「翌月」とだけ書くと、次の締めでも同じ不明点が残るためです。受領の記録が足りないのか、訂正の合意を待っているのかを分けて担当者へ渡してください。締めや支払条件へ影響する場合は、決裁できる担当者へ上げ、確定済みの分をどう扱うかも取り決めに沿って決めます。
書類の番号を結び、出荷側の記録から請求へつなぐ
国税庁の通達では、納品書と請求書などの関連が明確で、書類を合わせて所定の記載事項を適正に読み取れる場合、複数の書類全体で適格請求書の記載事項を満たす扱いが示されています。番号を結ぶことは、その対応関係をたどる助けになります。ただし、番号と数量が合うだけで、ほかの記載事項まで満たすわけではありません。国税庁「適格請求書の意義」を参照し、帳票の内容は経理担当者などと合わせてください。
出荷側で、注文数量と今回送る数量を分けて記録したい場合は、自社商品「出荷確認・数量変更記録」Excelテンプレート(2,980円・税込)が候補になります。受注数量、今回前累計、今回数量を手入力し、出荷前後の残数や入力上の問題を表示する帳票です。整数の「個」を扱い、出荷記録と数量変更履歴は各100行までです。累計の更新も手作業で、在庫管理、納品書発行、月締め請求の自動照合には対応しません。そのため、本記事の請求対象一覧は別に持たせます。動作検証はWindows版Excel 16.0で行われており、Mac版とGoogleスプレッドシートは未検証です。
出荷実績を対外帳票へ渡す流れは、Misocaの紹介も含む出荷指示を書面化し、実績を次の帳票へ渡す手順で扱っています。まずは直近1か月の1取引先を選び、請求控えから対象の納品明細へ戻ってみましょう。その後、納品明細側からも請求先をたどると、重複だけでなく請求漏れも探せます。戻れなかった箇所へ番号や割当の欄を補い、次の締めで同じ照合を試してください。

