品番だけでまとめず、所有者と使える範囲を分ける
同じ品番の材料でも、所有者と使える注文が違えば、同じ在庫として払い出すことはできません。支給材・購入材・預かり品は、入手経路、契約で定まる所有者、使用を認められた案件、現在の状態を別々に残しましょう。台帳の行だけでなく、現物の容器や区画も分けます。棚にある数量が、そのまま目の前の注文に使える数量とは限らないためです。
材料在庫表は入出庫と残数を、ロット記録は材料から製品までのつながりを追うために使います。ただし、その前に「誰の物か」「どの仕事に使えるか」が分からなければ、払出しを決められません。本記事では、返却や処分を誰が決めるかまで含めた運用例を説明します。現場の棚札だけで所有権や経理上の扱いを決めず、契約・注文条件を扱う担当者の情報を台帳へ反映します。
支給・購入という入手経路だけで所有者を決めない
| 呼び方の例 | 契約・注文条件で調べること | 表示・記録の例 |
|---|---|---|
| 自社購入材 | 所有権の扱い、引当済み案件、使用可能な数量 | 購入材/所有者は自社(契約照合済み)/注文C用 |
| 無償・有償の支給材 | 支給元、所有者と移転条件、指定用途、残材の扱い | A社支給/有償・無償/注文A用 |
| 預かり品 | 所有者、預かる目的、加工・使用の可否、返却予定 | B社預かり/測定用/加工不可 |
| 区分が分からない到着品 | 送り主と発注担当へ、どの注文・支給指示に基づく物か照会 | 区分の回答待ち/払出し保留 |
たとえば、有償支給だから受取時点で自社所有、無償支給だから使い切ってよい、と現場だけで判断するのは避けましょう。支給元が指定した材料商から直接届く場合も、送り主と所有者が同じとは限りません。上の表を使い、到着した物がどの注文・支給指示に対応するかを、発注担当者と突き合わせます。
取引条件の項目を考える参考として、技研施工が公開している取引契約約款があります。有償・無償の支給、所有権、受領時の検査、現物と帳簿の区別、残材の扱いが、それぞれの条項に分かれています。これは同社の取引条件の例ですから、自社へそのまま適用するものではありません。自社の契約で何を調べるかを考える資料として参照してください。技研施工「取引契約約款」第5~10条(PDF)。
受入時に台帳と現物へ同じ管理番号を付ける
- 到着品を送り状と照らし合わせる。品番・規格・数量・単位、送り状や支給書の番号、外観の状態を読み取り、記載数量と実数を別に残す。
- 所有者と使用条件を調べる。入手経路・所有者・指定注文・加工や転用の可否を、注文・支給指示の根拠と結ぶ。判断できるまで払出しを保留する。
- 管理番号を付ける。受入単位の番号を台帳と容器へ付ける。元の材料ロット番号は別欄に残し、管理番号で置き換えない。
- 状態ごとに置き場を決める。使用可・検査待ち・返却待ち・処分の判断待ちを分け、棚位置と管理担当を残す。
- 受領差異を連絡する。不足や傷を見つけたら、事実と写真の保存先を伝え、連絡先・返答・処理結果を残す。受入時の記録は訂正後もたどれるようにする。
台帳に登録した後は、現物から同じ情報へ戻れるようにします。ラベルは色だけで分けず、「A社支給・注文A-35用・使用可」のように文字も添えましょう。小分けした容器や元の束から離れた端材にも、管理番号と所有者を引き継ぎます。なお、棚を移しただけなら材料を使ったわけではないため、数量の消費ではなく、移動元・移動先の記録として残します。
架空例:同じ板材160枚でも、自由に使える160枚ではない
ここからは、同じ材質・寸法の板を保管する架空例で考えます。A社から無償で支給された100枚、自社で購入した40枚、B社から測定用に預かった20枚があるとします。この例では、所有者と使える用途を、それぞれの取引条件と照合できている前提です。
| 管理番号 | 所有者・用途 | 数量 | 払出し判断 |
|---|---|---|---|
| A-0915-01 | A社所有、注文A-35の加工用 | 100枚 | A-35にだけ使用可 |
| J-0915-01 | 自社所有、未引当の購入材 | 40枚 | 品質・在庫条件を満たす範囲で引当 |
| B-0915-01 | B社所有、測定後に返却 | 20枚 | 加工・他注文への使用は不可 |
上の表を合計すると、保管総数は100+40+20=160枚です。しかし、注文C-20へ新たに引き当てる候補になるのは、自社購入材の40枚です。A社の100枚とB社の20枚まで足して「材料は足りる」とは判断できません。自社購入材も品質・在庫の条件を満たす範囲で引き当てます。別の用途に使うなら、担当者が先に使用許可と条件を取り付け、認められた対象を残してください。
払出しと使用を分けると、残材を二重に減らさない
次に、A社の100枚から70枚を加工場へ払い出し、65枚を加工で使用した後、未使用5枚を元の棚へ戻したとします。材料置き場の未使用残は、100-70+5=35枚です。ここで払出し70枚を使用済みとして引き、加工使用65枚も再び引くと、同じ材料を二重に減らしてしまいます。移動と使用を分ける理由が、この違いにあります。
材料置き場の台帳は「払出しと戻し」、加工側は「受取70枚、使用65枚、返却5枚」として、同じ管理番号で対応させます。工場全体の使用量を集計する際には、内部移動の70枚を消費に加えず、実際に使った65枚を拾います。場所ごとの残数なのか、工場全体の使用量なのかを表題に書いておくと、集計の違いを伝えやすくなります。
その後、棚の35枚から10枚をA社へ返却すると、未使用残は25枚です。受入100枚は「使用65枚+A社へ返却10枚+未使用残25枚」で説明できます。さらに残る25枚のうち3枚に傷があり、判定を待っているなら、保管残は25枚のまま、使用可22枚・保留3枚へ区分します。保留したことを廃棄したことに置き換えると、現物と台帳が合わなくなるためです。
材料の使用記録を受注別の原価計算へ渡す
数量の対応が取れたら、使用記録を受注番号と元資料へ結び付けます。上の例なら、注文A-35について「受取70枚・使用65枚・未使用返却5枚」と、その根拠の保存先を渡します。原価を集計する担当者にも、受取70枚と使用65枚は同じ種類の数量ではないと分かるようにし、両方を消費量として足さない運用にしましょう。
ただし、使用65枚という数量だけでは、自社が負担する材料費は決まりません。所有者・支給条件・費用の負担範囲・単価の根拠を担当者が調べ、金額がまだ決まらなければ未確定として残します。数量をそのまま原価へ自動連携する前提にせず、見積と実績の工数・費用を比較する手順に沿って、同じ受注番号の日報や外注費と照合してください。
端材・不足・取り違えは通常の使用と分けて記録する
| 場面 | 止める処理 | 記録・連絡する内容 |
|---|---|---|
| 端材が残った | 自社の共用材へ無断で移す | 元管理番号、寸法・数量、再使用・返却・処分を判断する相手 |
| 数量が不足した | 別所有者の同規格材で帳尻を合わせる | 再計数、移動記録、使用実績、連絡と処理の判断 |
| 傷・さび・変質を見つけた | 通常在庫として払い出す | 発見日時、状態、写真、保留場所、相手への連絡 |
| 違う注文へ使ってしまった | 台帳だけ正しい注文へ書き換える | 使用先製品、対象数、元所有者、隔離・連絡・処置を決める担当 |
端材が残る場合は、枚数だけでは再使用できるか分かりません。切断後の寸法、元材の管理番号、所有者を残し、長さや重量で扱うなら、その単位へ換算した根拠も持ちます。たとえば枚数とkgを同じ残数式へ混ぜたり、切りくずをそのまま枚数差異にしたりせず、どの量を測った記録なのかを区別しましょう。
上の例外表にある事態では、先に現物と記録の対応を保ち、担当者へ連絡します。返却も発送した時点で閉じず、明細・発送記録・取り決めに沿った受領記録まで残してください。廃棄や他案件への転用は、権限者の判断と対象が分かってから進めます。費用や責任の協議が続く間も、状態と数量を調べた時点を残し、その後の移動を追えば、協議の前提が食い違いにくくなります。
まず1棚で、現物と台帳を往復して照合する
まずは混在しやすい1棚を選び、現物の管理番号から台帳の所有者・用途・状態へ戻ってみましょう。次に、台帳に載る品を現物で探します。この往復によって、ラベルだけある物、台帳だけある物、所有者が分からない物を拾えます。不明な品は払出しを保留し、調べる担当者と次に状況を追う日を決めてください。
すでに材料在庫表を使っているなら、材料在庫表の列と更新ルールへ、所有者・用途・状態の欄を補う方法から始められます。一方、材料がどの製品・出荷先へ使われたかを追う場合には、材料ロットを追跡する記録の作り方もあわせて参照してください。所有区分は使える範囲を、ロット番号は材料のつながりを追う情報です。片方だけで代用せず、同じ受注と現物へ戻れるように結び付けましょう。

