シルクスクリーン印刷の文字がかすれるとき|休止前後を比べる確認手順

シルクスクリーン印刷で細い文字や線がかすれたら、どの文字が、いつから、どの順番の品で欠けるかをそろえて伝えましょう。休止後の最初だけに出るのか、続けて印刷しても同じ位置が欠けるのかでは、比べる現物や記録が変わります。「文字が読みにくい」から一歩進めて、変化が起きた区間と位置を特定することが出発点です。

この記事は、プラスチック・金属部品へ印刷する現場で、休止前後の印刷物と作業記録をつなぐ方法を説明します。目詰まりなどの原因候補を担当者へ相談するための記録例です。版の変更、希釈、印圧や速度の変更を一律に勧めるものではありません。対象品の承認仕様と作業手順に沿って、担当者が調査と処置を決めます。

見比べる3点セット

比べる現物は、休止前の品 → 再開直後の品 → 対応後の品、と分けます。
各品に作業番号、時刻、印刷順、対応内容を付け、どの時点の状態かを記録からたどれるようにしましょう。

かすれと文字つぶれは、見えた形を分けて記録する

かすれは、本来ある線や面が十分に印刷されず、途切れたり薄く見えたりする状態です。一方、文字つぶれは、空いているはずのすき間や抜き文字が埋まる状態です。どちらも読みにくくなりますが、同じ現象として対処すると違いを見落とします。下の表を使い、文字のどの部分がどう見えるかを具体的に書いてみましょう。

十条ケミカルのFAQでは、希釈が足りない場合と多すぎる場合で、起こり得る現象が違うことが説明されています。そこで、読みにくさだけを理由に溶剤を足す前に、下の表の状態と、実際に使ったインキ・希釈剤を照合します。メーカー資料を使う際も、該当する製品と条件を合わせて担当者へ相談してください。参照資料:十条ケミカル「スクリーン印刷・スクリーンインキ一般」

見える状態記録する言い方次に照合するもの
線の一部が途切れる「E」の中央線が欠ける。位置を写真へ示す基準見本、版番号、発見時刻
文字全体が薄く見える同じ照明条件で濃さの違いを記録する製品表面、印刷条件、インキ記録
すき間が埋まる「8」の内側が埋まるなど、該当文字を書く図柄・版の仕様、希釈や作業条件
位置だけが違う基準位置との差を記録する別記事で見当ずれの記録方法を読む

開始前に、比較の基準と使う材料をそろえる

比較の基準には、現在有効な図柄データの改訂番号と承認見本を使います。さらに、製品の材質・ロット、スクリーン版の番号、インキ・希釈剤の製品名を同じ作業へ結びましょう。スクリーン版はインキを通す網と図柄を持つ版、スキージは版の上からインキを押し出す部材です。識別番号や承認仕様があれば記録へ転記すると、どの組合せで起きたかを伝えやすくなります。

細線の幅や文字サイズは、対象品の図面と版の仕様に照らします。似た文字でも、材質、版、インキ、設備が違えば、同じ条件で再現できるとは限らないためです。本記事で一律の限界値を決めず、今回の仕様が何版か、どの見本を比較に使ったかまで残してください。

休止前後を比べる前に、休止中の処置、再開時の点検・試験項目、判定者を作業標準書で読み合わせます。手順が決まっていない箇所は、その不足を責任者へ伝えましょう。作業者の記憶で再開条件を補わず、担当者が決めた範囲で、下の4段階の記録を進めます。

休止前後を比べる記録の4段階

  1. 現象を見つけた品を識別します。発見品と未検査の品を混ぜず、最後に良否を判定した区切りを記録します。
  2. 時系列を作ります。休止した時刻、再開した時刻、再開後の印刷順を残します。設備停止時間と、製品の検査時刻を同じ欄へ混ぜません。
  3. 同じ向き・照明で比較します。「文字Aの右端」など比較する位置を決め、承認見本、休止前、再開後の品を比べます。拡大画像なら倍率や撮影条件もそろえます。
  4. 実施した処置を記録します。版の点検・清掃、材料交換、条件変更などを行った場合は、承認手順に従い、実施者、時刻、変更前後の識別情報を残します。

目詰まりは、版のインキを通す部分が塞がる状態です。ただし、かすれた印刷物の写真だけでは、目詰まりが原因とは決まりません。メーカーの溶剤型インキのFAQには、指定外の希釈溶剤を使ったことで生じたトラブル例があります。このため、記録には「シンナー」だけでなく製品名まで残し、使った組合せを資料と照合します。参照資料:十条ケミカル「溶剤型インキのトラブル対策」

架空例:15分の休止後に文字の一部が欠けた

下の表は、休止前の現物、休止記録、再開直後の現物を時刻で結んだ架空例です。時刻、数量、文字は説明用の仮定で、15分が不具合の境界という意味ではありません。また、5個調べれば検査が十分という提案でもありません。どの品について分かった事実なのかを、現物番号と一緒に読んでください。

区切り観察した事実記録
10:15 休止前直前に調べた品で指定文字に欠けなし現物B-01/版SC-12
10:20~10:35印刷休止。実施した休止処置は作業票を参照停止記録ST-03
10:35 再開直後検査5個中2個で「E」の中央線が欠ける再開順1・2/現物A-01・A-02
10:40 相談版の状態と材料・希釈記録の照合を依頼品質担当へ連絡/対象箱を保留

この表から分かるのは、今回調べた再開直後の5個のうち、印刷順1・2の品に欠けがあったことです。休止が原因だった、3個目以降はすべて良品だった、とまでは言えません。表に結果が載っていない残りの品も含め、調べた範囲と未検査の範囲を分けて残します。その資料をもとに、品質担当が追加の検査と対象品の扱いを決めます。

見え方の回復と、保留品の処置・再開を分ける

何枚か刷って見え方が戻っても、その間の品を無条件に製品へ戻しません。再開時の評価用の品、保留品、判定済み品を識別し、どの結果がどの現物に対応するかを保ちます。そのうえで、作業標準の項目を満たしたことを担当者が判定し、通常生産へ戻すかを決めます。見え方の回復と、既存の保留品の処置、通常生産の再開を分けて残しましょう。

調整を行う場合は、何をいつ変えたかを、変更前後の現物へ結びます。複数の材料や設定を一度に変えたなら、すべて記録し、どの変更が効いたかは未確定として扱います。また、版の洗浄や機械内部の点検は、SDS(安全データシート)、取扱説明書、職場の安全手順に従ってください。記録や撮影のために、稼働中の機構へ近づかないようにします。

インキや希釈剤の適合はインキメーカー、版の状態と再現性は製版担当、設備やスキージの条件は設備担当へ相談します。その際は、前の節で結んだ現物番号と記録を添えましょう。「再開直後だけ」「同じ文字の同じ位置」「版やインキを変更した時から」といった観察上の傾向を示すと、相手が調べる対象を絞る助けになります。

次に起きたとき、現物と記録をすぐたどれるようにする

再発したときに前回との違いを比べられるよう、作業番号を共通のキーにして、休止・停止記録、検査記録、現物と写真の保存先を結びます。欄を増やす前に、次の担当者が「どの品を、何と比べればよいか」を記録だけでたどってみるのもひとつです。途中で分からなくなった番号や版、時点を補えば、使う目的に合った記録になります。

すでに再開チェックリストがあるなら、比較する位置と現物番号を、その記録へ追加する方法もあります。同じ結果を別表へ重ねて書くより、承認された帳票と元資料を結ぶほうが、改訂時の食い違いを防ぎやすくなります。まずは休止前後の現物を区別し、観察した事実を担当者へ渡すところから始めましょう。

比較する基準を合わせるなら、検査基準と見本のそろえ方/位置が違う現象なら、パッド印刷の見当ずれの記録/使った版と治具をたどるなら、印刷版と治具の取り違え防止

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