シルクスクリーン印刷で細い文字や線がかすれたら、どの文字が、いつから、どの順番の品で欠けるかをそろえて伝えましょう。休止後の最初だけに出るのか、続けて印刷しても同じ位置が欠けるのかでは、比べる現物や記録が変わります。「文字が読みにくい」から一歩進めて、変化が起きた区間と位置を特定することが出発点です。
この記事は、プラスチック・金属部品へ印刷する現場で、休止前後の印刷物と作業記録をつなぐ方法を説明します。目詰まりなどの原因候補を担当者へ相談するための記録例です。版の変更、希釈、印圧や速度の変更を一律に勧めるものではありません。対象品の承認仕様と作業手順に沿って、担当者が調査と処置を決めます。
比べる現物は、休止前の品 → 再開直後の品 → 対応後の品、と分けます。
各品に作業番号、時刻、印刷順、対応内容を付け、どの時点の状態かを記録からたどれるようにしましょう。
かすれと文字つぶれは、見えた形を分けて記録する
かすれは、本来ある線や面が十分に印刷されず、途切れたり薄く見えたりする状態です。一方、文字つぶれは、空いているはずのすき間や抜き文字が埋まる状態です。どちらも読みにくくなりますが、同じ現象として対処すると違いを見落とします。下の表を使い、文字のどの部分がどう見えるかを具体的に書いてみましょう。
十条ケミカルのFAQでは、希釈が足りない場合と多すぎる場合で、起こり得る現象が違うことが説明されています。そこで、読みにくさだけを理由に溶剤を足す前に、下の表の状態と、実際に使ったインキ・希釈剤を照合します。メーカー資料を使う際も、該当する製品と条件を合わせて担当者へ相談してください。参照資料:十条ケミカル「スクリーン印刷・スクリーンインキ一般」
| 見える状態 | 記録する言い方 | 次に照合するもの |
|---|---|---|
| 線の一部が途切れる | 「E」の中央線が欠ける。位置を写真へ示す | 基準見本、版番号、発見時刻 |
| 文字全体が薄く見える | 同じ照明条件で濃さの違いを記録する | 製品表面、印刷条件、インキ記録 |
| すき間が埋まる | 「8」の内側が埋まるなど、該当文字を書く | 図柄・版の仕様、希釈や作業条件 |
| 位置だけが違う | 基準位置との差を記録する | 別記事で見当ずれの記録方法を読む |
開始前に、比較の基準と使う材料をそろえる
比較の基準には、現在有効な図柄データの改訂番号と承認見本を使います。さらに、製品の材質・ロット、スクリーン版の番号、インキ・希釈剤の製品名を同じ作業へ結びましょう。スクリーン版はインキを通す網と図柄を持つ版、スキージは版の上からインキを押し出す部材です。識別番号や承認仕様があれば記録へ転記すると、どの組合せで起きたかを伝えやすくなります。
細線の幅や文字サイズは、対象品の図面と版の仕様に照らします。似た文字でも、材質、版、インキ、設備が違えば、同じ条件で再現できるとは限らないためです。本記事で一律の限界値を決めず、今回の仕様が何版か、どの見本を比較に使ったかまで残してください。
休止前後を比べる前に、休止中の処置、再開時の点検・試験項目、判定者を作業標準書で読み合わせます。手順が決まっていない箇所は、その不足を責任者へ伝えましょう。作業者の記憶で再開条件を補わず、担当者が決めた範囲で、下の4段階の記録を進めます。
休止前後を比べる記録の4段階
- 現象を見つけた品を識別します。発見品と未検査の品を混ぜず、最後に良否を判定した区切りを記録します。
- 時系列を作ります。休止した時刻、再開した時刻、再開後の印刷順を残します。設備停止時間と、製品の検査時刻を同じ欄へ混ぜません。
- 同じ向き・照明で比較します。「文字Aの右端」など比較する位置を決め、承認見本、休止前、再開後の品を比べます。拡大画像なら倍率や撮影条件もそろえます。
- 実施した処置を記録します。版の点検・清掃、材料交換、条件変更などを行った場合は、承認手順に従い、実施者、時刻、変更前後の識別情報を残します。
目詰まりは、版のインキを通す部分が塞がる状態です。ただし、かすれた印刷物の写真だけでは、目詰まりが原因とは決まりません。メーカーの溶剤型インキのFAQには、指定外の希釈溶剤を使ったことで生じたトラブル例があります。このため、記録には「シンナー」だけでなく製品名まで残し、使った組合せを資料と照合します。参照資料:十条ケミカル「溶剤型インキのトラブル対策」
架空例:15分の休止後に文字の一部が欠けた
下の表は、休止前の現物、休止記録、再開直後の現物を時刻で結んだ架空例です。時刻、数量、文字は説明用の仮定で、15分が不具合の境界という意味ではありません。また、5個調べれば検査が十分という提案でもありません。どの品について分かった事実なのかを、現物番号と一緒に読んでください。
| 区切り | 観察した事実 | 記録 |
|---|---|---|
| 10:15 休止前 | 直前に調べた品で指定文字に欠けなし | 現物B-01/版SC-12 |
| 10:20~10:35 | 印刷休止。実施した休止処置は作業票を参照 | 停止記録ST-03 |
| 10:35 再開直後 | 検査5個中2個で「E」の中央線が欠ける | 再開順1・2/現物A-01・A-02 |
| 10:40 相談 | 版の状態と材料・希釈記録の照合を依頼 | 品質担当へ連絡/対象箱を保留 |
この表から分かるのは、今回調べた再開直後の5個のうち、印刷順1・2の品に欠けがあったことです。休止が原因だった、3個目以降はすべて良品だった、とまでは言えません。表に結果が載っていない残りの品も含め、調べた範囲と未検査の範囲を分けて残します。その資料をもとに、品質担当が追加の検査と対象品の扱いを決めます。
見え方の回復と、保留品の処置・再開を分ける
何枚か刷って見え方が戻っても、その間の品を無条件に製品へ戻しません。再開時の評価用の品、保留品、判定済み品を識別し、どの結果がどの現物に対応するかを保ちます。そのうえで、作業標準の項目を満たしたことを担当者が判定し、通常生産へ戻すかを決めます。見え方の回復と、既存の保留品の処置、通常生産の再開を分けて残しましょう。
調整を行う場合は、何をいつ変えたかを、変更前後の現物へ結びます。複数の材料や設定を一度に変えたなら、すべて記録し、どの変更が効いたかは未確定として扱います。また、版の洗浄や機械内部の点検は、SDS(安全データシート)、取扱説明書、職場の安全手順に従ってください。記録や撮影のために、稼働中の機構へ近づかないようにします。
インキや希釈剤の適合はインキメーカー、版の状態と再現性は製版担当、設備やスキージの条件は設備担当へ相談します。その際は、前の節で結んだ現物番号と記録を添えましょう。「再開直後だけ」「同じ文字の同じ位置」「版やインキを変更した時から」といった観察上の傾向を示すと、相手が調べる対象を絞る助けになります。
次に起きたとき、現物と記録をすぐたどれるようにする
再発したときに前回との違いを比べられるよう、作業番号を共通のキーにして、休止・停止記録、検査記録、現物と写真の保存先を結びます。欄を増やす前に、次の担当者が「どの品を、何と比べればよいか」を記録だけでたどってみるのもひとつです。途中で分からなくなった番号や版、時点を補えば、使う目的に合った記録になります。
すでに再開チェックリストがあるなら、比較する位置と現物番号を、その記録へ追加する方法もあります。同じ結果を別表へ重ねて書くより、承認された帳票と元資料を結ぶほうが、改訂時の食い違いを防ぎやすくなります。まずは休止前後の現物を区別し、観察した事実を担当者へ渡すところから始めましょう。
比較する基準を合わせるなら、検査基準と見本のそろえ方/位置が違う現象なら、パッド印刷の見当ずれの記録/使った版と治具をたどるなら、印刷版と治具の取り違え防止
