パッド印刷の版と治具は「保管番号」と「使える組合せ」を分ける
棚から番号の合う印刷版を取り出しても、今回の図柄に対応するとは限りません。一方、同じ図柄から作った版が2枚あれば、図柄の版数だけでは、どちらの実物を持ち出したか分かりません。そこで、実物を識別するIDと、製品・図柄・治具の承認済みの組合せを分けて記録します。「どこにあるか」と「今回使ってよいか」を別々にたどることが、取り違えを防ぐ出発点です。
本記事では、特殊印刷のうちパッド印刷を対象に、印刷版と治具の持出し・返却を追う表を紹介します。まず識別する項目を決め、次に動きと返却後の状態を残す順に見ていきましょう。版の製作、治具の取付け、印刷機の調整は、この帳票で決めるものではありません。実際の作業は承認された設備・工程の手順に従います。
印刷版の実物IDと、図柄データの改訂を分ける
ナビタスマシナリーの説明では、パッド印刷は、凹版のインキをシリコンパッドへ移し、そこから対象物へ転写する方式です。このとき使う印刷版という実物と、図柄データの改訂は別のものです。台帳でも両方を「版」と呼ばず、「印刷版ID」「図柄データRev」のように欄を分けましょう。下の表では、実物の番号と、印刷する内容・位置を対応させています。ナビタスマシナリー:パッド印刷とは
| 項目 | 架空例 | 何を区別するか |
|---|---|---|
| 印刷版ID | PL-21A、PL-21B | 同じ図柄でも別の実物 |
| 図柄データの番号・Rev | D-21/Rev04 | 印刷する内容の改訂 |
| 色・印刷位置 | 黒/正面ロゴ | 多色・複数面の取り違え |
| 治具ID | JG-18 | 実際に持ち出す位置決め用の物 |
| 組合せの適用資料 | 適用表C-21/2版 | 製品P-21への適用が承認された関係 |
上の表でPL-21AとPL-21Bを分けるのは、同じ図柄でも別の実物を追うためです。形が同じ、棚に置かれていたという理由だけで使用可にはしません。新しい台帳を作る際も、技術・品質などの管理担当が既存資料と現物を照合します。対応が判明していない物は、使用を保留して所在と照会先を残してください。
物の一覧と動きの履歴を、実物IDで結ぶ
物の一覧には実物ID、保管場所、対象図柄・製品、使用状態、根拠資料を登録します。これに対して、動きの履歴には誰がいつ、どの作業へ出し、誰がどこで受け取ったかを残します。現在地だけを書き換えると、前に使った作業との関係が消えるためです。一覧と履歴を同じIDでつなぎ、所在の更新と履歴の追記を組み合わせましょう。
版と治具を専用ケースでまとめる場合は、ケース番号から構成品の一覧へ戻れるようにします。「ケース1箱が戻った」ことと、中身が全部戻ったことは別です。返却時は各実物IDと数量を読み合わせます。実物へ直接表示できない場合は、容器や承認された識別方法を使い、印刷面などへ独自に刻印や加工を加えないようにしてください。
架空例:1作業に2枚の版と1個の治具を持ち出す
下の表は、作業W-22で2色のパッド印刷を行う架空例です。組合せ表C-21の2版に、印刷版2枚と治具1個が登録されていると仮定します。持出しの予定と実物を照合し、戻った後は所在と状態を別に書きます。ここで示すのは受渡し記録であり、印刷や装着の作業方法ではありません。
| 物のID | 用途 | 持出記録 | 返却記録 | 返却後の状態 |
|---|---|---|---|---|
| PL-21A | 黒・正面/D-21 Rev04 | 9/22 9:00、W-22、担当A | 9/22 15:00、棚P-01、担当B受領 | 所定の返却点検済み |
| PL-22A | 赤・正面/D-22 Rev02 | 同上 | 9/22 15:00、保留置場、担当B受領 | 表示不鮮明・使用保留で相談中 |
| JG-18 | 製品P-21の治具 | 同上 | 9/22 15:00、棚J-03、担当B受領 | 所定の返却点検済み |
表では3点とも自社へ戻っていますが、所定の返却点検が済んでいるのは2点です。PL-22Aは表示が不鮮明なため、保留置場で回答を待っています。一式返却済みという理由で、次の作業へまとめて貸し出さないでください。また、点検済みの物でも、次の製品・図柄に適用できるかは持出時に照合します。返却点検の完了と、次回の使用許可を分けて扱います。
持ち出す前から戻すまでの5つの手順
- 作業担当が使用する対象を照合する。作業番号、製品番号、図柄Rev、印刷面・色を、その作業へ適用する承認済みの指示と読み合わせます。
- 管理担当が承認済みの組合せを示す。印刷版ID、治具ID、適用資料の版と対象を照合します。代替品は所定の承認記録へ戻り、対象外なら使用しません。
- 持出担当が実際に出したIDを残す。予定の番号をそのまま写さず、現物から読み取ります。持出日時、行先、作業番号、担当を履歴へ記します。
- 作業中の交換は前後のIDを追記する。PL-21AからPL-21Bへ替えた場合は、前後のID、時点、製品・作業範囲を別行へ残します。装着と交換は承認された作業手順に従います。
- 返却担当が各実物と状態を受け取る。各ID、数量、保管先と所定の点検結果を残し、回答待ちは使用保留へ区別します。返した人の申告と、受け取った担当の照合記録を分けます。
持出記録だけでは、実際に印刷へ使ったかまでは分からない場合があります。使わずに戻した物は「未使用返却」とし、使用実績を追う場合は作業記録へ結びましょう。途中で版を交換した場合も、持ち出した順だけで製品区間を推定しません。使用したIDと範囲を実績から残すことで、後に不具合を調べる際も候補を根拠なく広げずに済みます。
改訂や所在不明のときは、使用を保留して根拠をたどる
| 例外 | 残す内容 | 保留すること |
|---|---|---|
| 図柄がRev04から05へ変わった | 変更通知と対象の版ID、現行・旧版の状態 | 古い実物へ新Revを付け替えるだけで済ませない |
| 同じ図柄の予備版を使いたい | 予備版の実物IDと承認済みの適用資料 | 見た目が同じという理由で代替使用を決めない |
| ケースは戻ったが版1枚が見当たらない | ケースID、構成品の不足、最終持出記録 | 一式返却完了にしない |
| 表示が読めない | 現物の所在、識別の根拠資料、照会先 | 棚位置から番号を推定して出庫しない |
図柄を改訂したときは、棚にある旧版だけでなく、現場へ持ち出している分も対象にします。保管棚の表示を替えても、持出先へ届かなければ旧版が使われ続けるためです。対象ID、適用する作業・製品、連絡先を定め、回収や使用停止の結果まで追ってください。廃棄・再利用・代替使用は、権限者の判断と根拠を残して進めます。
まとめと参照した一次資料
まずは印刷版の実物ID、図柄のRev、治具IDを分け、承認済みの組合せへ結びましょう。次に、持出先と実際の使用、返却先と点検結果を履歴へ残します。所在が戻っただけでは、次回も使えるとは判断できません。保留品の回答と処置を追い、次の作業への適用を照合してから渡す流れにしてください。本記事の表と手順は編集部の提案です。
貸出しの基本項目は工具貸出管理表、図柄改訂の伝達は図面の版管理も参考になります。また、作業中に実物を替えた記録は治具交換の記録へつなげて考えると、持出しだけでは分からない使用区間を補いやすくなります。
- ナビタスマシナリー「パッド印刷とは?」:印刷方式と、版・パッドの関係を参照しています。2026年10月4日閲覧。

