クラウドに同じ図番のファイルが並んでいたら、更新日時が新しいものを選ぶ前に、今回の注文や製作ロットへ適用する版を調べましょう。最新版が、すべての仕掛品に使えるとは限らないためです。使用を認めた図面の入口を1か所にし、作成、審査、公開を分けます。まず図番、Rev(改訂の識別記号)、適用対象、状態、変更理由、承認者を記す台帳を1枚作り、次の改訂から運用を試します。
この記事は、共有フォルダにPDFやCADデータが重複し、設計側と現場で参照する図面が食い違うチーム向けです。フォルダを分けるだけでは、承認や紙の差し替えは終わりません。誰が使用を認め、誰が公開し、どの工程がいつ切り替えるかまで決めましょう。下の表を入口に、図面の保管と、実際の作業へ適用する判断をつなぐ方法を説明します。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 続けて照合すること |
|---|---|---|---|
| 同じ図番のファイルが複数ある | 更新日時だけで現行を決めない | 候補を調査用の場所へ分け、対象作業を判断者へ戻す | 図面枠のRev、台帳、変更記録 |
| 改訂作業を始める | 現行図を直接編集しない | 作業中フォルダへ複製して更新する | 変更箇所と関連図面への影響 |
| 現場へ変更を伝える | 公開だけでは完了ではない | 対象工程と旧Rev・新Revを通知する | 紙図面の回収・差し替え記録 |
| 急ぎで変更したい | 暫定版と正式版を混同させない | 暫定使用の承認を得て、有効範囲を明記する | 正式審査の期限と切替記録 |
現場が使う現行図は1か所だけに置く
「最新」「最終」というファイル名だけでは、何に使ってよい版か分かりません。たとえば作業用の入口を「30_現行図」に固定し、現場へはこの入口を案内します。メールやチャットへ図面を複製して配る場合は、配布先と版を追う管理対象にしましょう。同じ図番で案件ごとに適用版が違う場合も、入口から案件と版の対応をたどれるようにし、見つけた最新ファイルを一律に使わせないことが大切です。
CADを設計側の編集データ、PDFを現場向けの閲覧データと分ける方法があります。ただし、用途によっては加工にCADデータも使うため、どちらを何の基準とするかを先に決めます。フォルダの位置だけで正しさを判断せず、図面枠、承認記録、台帳、適用対象が一致する版を置きましょう。PDFへ変換した後も寸法、注記、ページの欠けなどを元データと照合します。
フォルダと権限は図面の状態ごとに分ける
作業中、審査待ち、使用を認めた版、保存用の旧版を分けると、途中の図面を使う経路を減らせます。下のフォルダ名は構成例なので、自社の呼び方へ変えて構いません。その代わり、何が入る場所か、誰が編集や移動を行うか、誰へ見せるかを決めます。フォルダ名を付けただけでは権限は変わらないため、実際の利用者で閲覧と編集の範囲を試します。
| フォルダ | 置くもの | 編集・移動する担当 | 現場閲覧者の権限 |
|---|---|---|---|
| 00_受付 | 変更依頼、参考資料 | 設計担当・管理者 | 原則不可 |
| 10_作業中 | 編集中のCAD、審査用PDF | 設計担当 | 不可 |
| 20_審査待ち | 公開判断を待つ図面 | 設計担当・審査担当 | 不可 |
| 30_現行図 | 使用を認めたPDF、用途を定めた閲覧用データ | 公開担当・管理者 | 閲覧のみ |
| 90_旧版 | 過去の公開図、比較用のPDF | 管理者 | 原則不可または閲覧のみ |
設計担当は10_作業中を編集し、現場閲覧者は30_現行図を参照する、という役割を基本にします。20_審査待ちから30_現行図や90_旧版へ切り替える操作は、権限を付けた公開担当が行います。少人数で兼務する場合も、作成、内容審査、承認、公開の記録は分けましょう。別人による審査や承認が求められる業務を、公開者名と日時を残すだけで代替しません。
ファイル名は図番・Rev・公開日を同じ順番で入れる
ファイル名は図面を探すための手掛かりであり、使用許可そのものではありません。下の例のように図番、名称、Rev、公開日、種別の順をそろえ、図面枠と台帳にも同じRevを記します。日付や名前が合っていても、中身が別版なら使えません。作業者は指定された案件の適用版を入口から開き、版と対象を照合できるようにします。
- 基本形:図番_図面名称_Rev_公開日_ファイル種別.拡張子
- PDFの記入例:AB-123_ブラケット_Rev03_20260904_PDF.pdf
- CAD編集データの記入例:AB-123_ブラケット_Rev03_20260904_CAD.使用中の拡張子
- 使わない語:最新版、修正版、最終、final、new
公開日は年月日の8桁にすると並べ替えや照合に使いやすくなります。一方、日付の新しさだけで適用版は決まりません。同じ図面の改訂はRevで追い、識別する品物や用途が変わる場合は新しい図番を付けるかを所定の基準で判断します。取引先指定の採番や改訂規則も優先してください。番号体系の考え方は、品番マスターのコード体系を決める方法も参考になります。
改訂は作成・審査・承認を経て公開する
現場が使う図面を直接上書きすると、編集途中の内容まで作業に使われるおそれがあります。改訂は10_作業中で行い、20_審査待ちで内容と影響を調べ、使用を認めてから公開します。クラウドの履歴は変更前を調べる補助ですが、履歴が残ることと使用の承認は別です。変更依頼、審査結果、承認した人と日時、適用開始を台帳へ対応させましょう。
- 作成:設計担当が10_作業中でCADとPDFを更新し、変更理由、変更箇所、作成日を台帳の下書きへ記録する。
- 審査:担当者が20_審査待ちで内容・工程への影響・関連図面・版を照合し、所定の承認を得る。
- 公開:担当者が切替対象の旧版を90_旧版へ保存し、承認済みPDFを30_現行図へ登録して台帳と適用先を照合する。
切替時は、先に新しい図面と台帳を公開できる状態まで用意し、対象の参照や作業を止める時間を関係者へ知らせます。そのうえで、切替対象の旧版を保存先へ移し、新版を登録して入口から開き直します。移動と登録は同時に完了するとは限らないため、途中の空白や旧リンクを現場判断で補わせません。別案件に旧Revがまだ適用されるなら、その対応を保ち、切替対象だけを移します。
複数人が別々に編集したコピーは、片方の変更を失う原因になります。00_受付の依頼記録へ編集担当、開始日、対象ファイルを記し、同時作業の範囲を決めましょう。引き継ぎは10_作業中の正本と変更記録を基に行います。競合コピーを見つけたら更新日時だけで捨てず、差分と依頼元を照合し、採用した変更と採用しなかった変更の理由を残します。
Revを上げるか、現場へ再周知するかの判断フロー
改訂の影響は、寸法や材質だけでなく、加工方法、検査、治具、組立、手配済み材料や仕掛品まで調べます。下の順番を入口に、適用を始める案件・ロット・時点と、旧条件の品物をどう扱うかを決めましょう。判断できない部分があれば、使用を認めた版へ移さず審査待ちにします。変更依頼を受けたことだけで、現場の条件を切り替えないようにします。
- 図面内容の変更を調べ、社内と取引先の規則に従ってRevや図番を判断する。
- 加工、材料、検査、治具、組立への影響を調べ、旧Rev、新Rev、適用対象と開始時点を知らせる。
- 関連図面と作業指示書への影響を調べ、承認された適用関係に合わせて参照Revを更新する。
- 審査担当が不在の緊急変更は、代行者と所定の暫定使用承認へ回す。承認が得られなければ対象作業を保留する。
暫定図を使う場合も、暫定使用を承認できる人と手続が前提です。不在だから承認を省略するのではなく、定めた代行者へ回し、判断を得られなければ対象作業を保留します。認めた場合は、暫定の識別、対象工程・案件・数量や期間、根拠、発行者、承認者、正式審査の予定を記します。正式版へ切り替えたら30_現行図の適用情報を更新し、暫定図を90_旧版へ保存して、配布先の切替まで追います。
旧版は削除せず現行図から隔離する
旧版は、過去に製作した品物や不具合の調査へ戻る根拠になります。そのため、削除せず90_旧版などの保存先へ分けることを基本にします。ただし、ある案件では使用が終わっていても、別案件で承認された適用版として使う場合があります。保存用と作業用の位置付けを台帳で区別し、参照権限も分けましょう。古いRevという理由だけで、現に適用されている図面を一律に外しません。
保存用の図面には「旧版・作業使用不可」と分かる表示を添える方法があります。元の図面へ直接書き込む前に保存要件を調べ、原本を保ったうえで閲覧用コピーや画面の表示へ付けます。図番やRevを書き換えて現行らしく見せることはしません。削除や保管期間は、契約と社内の保存規則に従って別に判断し、台帳から保存先へ戻れる状態を維持します。
現場周知は変更の影響に応じて記録を残す
図面を公開しただけでは、現場の紙や端末、外注先の控えまで変わりません。図番、旧Revと新Rev、対象案件・ロット、適用開始、変更箇所、対象工程、旧版の扱いを台帳と連絡へ記しましょう。チャットやメールの送信は通知の記録です。受け手が内容を読んだか、作業場所の図面を切り替えたかは別に受領と対応を記録します。
表記だけの修正でも、加工や検査へ影響がないかを権限のある担当が判断します。次回作業時に切り替えてよいとした場合は、その条件と期限を残しましょう。寸法、材質、加工、検査へ影響する変更は、新条件で作業を始める前に適用先の切替を終えます。紙図面は回収担当と配布場所を割り当て、持ち出し分や複製も含めて差し替えを追います。
版管理台帳と公開チェックリストを1枚で運用する
台帳には、ファイルの場所だけでは分からない変更理由、審査と承認、公開、受領と切替を残します。共有の表に置く場合も、誰がどの欄を更新できるかを決めます。審査担当は審査を終えた時点、承認者は判断時点、公開担当は公開時点で記入しましょう。先に完了印を付けず、未了の作業と担当、期限が読める形にします。
下の表はAB-123のRev03を公開した架空の例です。実際の製作記録ではありません。図面枠、ファイル名、30_現行図で開く内容、台帳のRevを照合し、案件やロットの適用欄も添えます。公開日時が記入されていても、対象工程の切替まで済んだとは限らないため、公開状態と現場の対応を分けて読みます。
| 台帳項目 | 記入例 |
|---|---|
| 図番・図面名 | AB-123/ブラケット |
| 現行Rev・公開状態 | Rev03/公開済み |
| 変更理由・変更箇所 | 変更依頼に基づく更新/取付穴の寸法欄 |
| 作成者・審査担当・承認者 | 設計担当者名/審査担当者名/承認者名 |
| 公開日時・旧版保管先 | 2026-09-04 10:00/90_旧版/AB-123 |
| 周知先・受領と切替の記録 | 加工工程、検査工程/連絡・受領・切替の日時と担当 |
公開前は承認と適用対象、公開後は実際に開く版と配布先の切替を点検します。台帳の右側などに、各作業の実施日時と担当、根拠の記録先を残しましょう。スプレッドシートの変更履歴を追跡する運用も参考になりますが、表を更新した履歴だけで承認や紙回収の実施を証明したつもりにならないようにします。
- 図面枠、ファイル名、台帳のRevが一致している。
- 現場参照用PDFと元データ、関連図面を照合し、使用承認を得た。
- 切替対象の旧版を90_旧版へ保存し、30_現行図の案件別適用と入口を照合した。
- 対象工程へ変更内容を知らせ、受領と紙図面の回収・差し替えを記録した。
- 作業指示書や工程票の参照Revを、承認された案件別の適用へ合わせた。
チェック欄には「済」だけでなく、実施日時、担当、残った対象を記します。紙の回収が未了なら公開と切替の状態を分け、旧紙を使うおそれがある作業を続けてよいか、判断者へ戻します。回収の期限を書くだけで新条件の作業を始めません。記入が重い場合は、必須の審査や記録を削る前に、重複入力や証拠へのリンクの持たせ方を見直しましょう。
混在した共有フォルダからは使用頻度の高い図番から移す
既存フォルダを移すときは、直近の受注や製作に使う図番から始める方法があります。ただし、既に旧版使用のおそれが見つかったものは、頻度が低くても放置しません。図面枠、変更依頼、承認、案件の適用条件を照合し、認めた版を30_現行図からたどれるようにします。移行中は新旧の入口を同時に使わせず、対象と切替日時を知らせます。
適用版を判定できない図面は、30_現行図へ入れず調査用の場所へ分けます。図番、判断者、期限、保留理由と影響する作業を台帳へ残しましょう。最初の1か月程度は改訂ごとに、検索の迷い、旧版参照、紙の差し替え漏れ、競合コピーを振り返ります。使われない欄もすぐ削らず、保存・承認要件を満たすかを責任者が判断してから変更します。
よくある質問
紙、CAD、緊急変更、外部共有では、通常の切替だけでは処理できないことがあります。例外の判断先と記録方法を決めておくと、担当が不在でも未承認のまま進むことを防ぎやすくなります。以下では、保管、使用許可、配布先の対応をそれぞれ分けて考えます。
現場に配った紙図面は、改訂のたびに必ず回収しなければいけませんか?
旧紙で作業するおそれがあれば、対象の回収、差し替え、または使用を防ぐ処置を行います。ただし、別案件でその版を使う承認が残る場合は、適用対象を分けて管理します。保存用まで一律に捨てず、作業場所、持ち出し分、保管用を区別しましょう。台帳には対象場所、担当、実施日、未回収分とその間の作業可否を残します。
同じ図番でPDFとCADデータの更新日が違うとき、どちらを正と判断しますか?
更新日時だけでは決めません。図面枠、承認記録、台帳、対象案件の適用版を照合します。現場の基準をPDFと決めていても、内容に不一致の疑いがあれば、30_現行図にあるという理由で作業を進めないでください。対象の使用を保留して設計・審査担当へ回し、PDFへの変換漏れか、別の変更が入ったのかを調べ、採用する版を決め直します。
急ぎの変更で審査担当が不在の場合、暫定図はどう扱いますか?
不在時の代行者と暫定使用の承認手続に従います。承認が得られなければ、暫定と書いただけの図面で対象作業を進めません。認めた際は、対象工程・案件・数量や期間、発行者と承認者、根拠、正式審査の期限を記します。正式版を公開した後も、暫定図の回収や隔離、各工程の切替を追い、期限が来ただけで正式版へ移った扱いにはしません。
取引先や協力会社には現行図だけを共有できますか?
共有先へ渡してよい図番と適用版だけを別フォルダへ置く方法があります。親フォルダから継承した権限や既存の直接共有も含め、相手のアカウントで見える範囲を試しましょう。社内の作業中、審査待ち、旧版へはアクセスを与えません。改訂時には適用開始を知らせ、相手の受領と控えの切替も記録します。共有を止めても、既に相手が保存したコピーまで消せるとは考えないでください。
まとめ
まず、入口を1か所の30_現行図とし、保存用の90_旧版を分け、案件ごとに使う版を台帳からたどれるようにしましょう。次に、図番・Rev・公開日の命名と、作成・審査・承認・公開・切替の役割を決めます。運用後は紙の差し替え漏れや競合コピーを追い、月ごとの振り返りで入力方法を直します。最新版を置くことだけで終えず、使う場所で正しい適用版へ切り替わったところまで記録してください。

