注文変更の追加費用を再見積する手順|提示額と合意内容の記録方法

再見積の提示額と合意内容の記録方法を示す記事タイトルと編集部名の表紙 生産・品質管理

追加費用は、変更の差分と合意した範囲を結んで残す

注文変更で追加費用が見込まれるときは、元見積から何が増減したのかを示し、提示額と相手が了承した額を分けて残しましょう。変更の連絡を受けた段階では、追加料金まで決まっているとは限りません。元見積の前提、追加・取りやめる作業、相手の返答、合意の対象を順にたどれる記録にします。費用や納期が決まる前に着手する場合も、進めてよい範囲を先に決めておきます。

本記事では、変更を受け付けた後の再見積を、説明用の運用例で見ていきます。電話の聞き取りや旧指示の扱い、社内への連絡順は、急な注文変更を受けたときの手順を参照してください。追加費用を誰が負担するかは、元の契約や変更内容によって異なります。ここでは、協議の根拠と、決まった内容を業務へ渡す記録を作ります。

元見積の前提に戻り、変わった作業を拾う

元見積と変更内容を比べる項目
変更の例費用が変わる要因元見積に戻って見る点
数量100個から小口の分納へ段取り・梱包・配送の回数元は何回で納める前提だったか
図面A版からB版へ追加加工・材料・検査・外注既に済んだ作業と今後取りやめる作業
納期の前倒し外注や運送の変更、工程の組替え標準納期と含まれていた費用
注文の一部取消手配済み材料・仕掛品・取消可能な外注戻せるもの、再利用できるもの、取消条件

「仕様変更一式」と金額をまとめる前に、購買には材料・外注の手配状況、製造には加工済み数量と残工程、出荷には梱包・配送の変更を出してもらいます。同じ変更でも、未発注なのか、手配済みなのか、作業済みなのかで費用の扱いが変わるためです。上の表を使い、既にかかった費用と、今後発生しなくなる費用を元見積に戻って拾いましょう。

このように増減を拾った後も、社内の原価試算と取引先への提示価格は別欄にします。試算の合計は協議の材料であり、そのまま契約金額として確定するものではないからです。準備する資料に迷う場合は、中小企業庁の価格交渉・転嫁の支援ツールも参考になります。価格を見直す理由と、その根拠を説明できるようにしてから協議へ進めます。

架空例:追加と削除を分けて差額を出す

計算の流れを、すべて税抜の架空例で見てみましょう。注文R-210は100個、元見積Q-210-01は単価500円で総額50,000円です。今回は図面の変更によって段取り・材料・外注が増える一方、一部の未着手工程は行わなくなるとします。元見積に含まれる通常の加工・段取りは、そのまま残る前提です。

再見積Q-210-02の差額試算例
差分項目算出根拠差額
追加の段取り2時間×社内試算単価4,000円+8,000円
追加材料変更分だけの材料見積+6,000円
追加外注変更分だけの外注見積+4,000円
取りやめる未着手工程元見積に含んだ該当工程分-3,000円
差額合計8,000+6,000+4,000-3,000+15,000円

上の表では、増える費用だけでなく、取りやめる工程の費用も引いています。この例に限り、試算した差額をそのまま提示し、利益・管理費は別に加えません。提示総額は50,000+15,000=65,000円となります。通常の段取りは元見積に含まれているため、ここで足すのは変更によって増える2時間だけです。なお、4,000円は説明用の社内試算単価であり、従業員の賃金や業界共通の単価ではありません。

差額だけを残すと、後から「どの材料の見積だったか」を調べ直すことになります。各行には、作業記録や材料・外注見積の番号も添えてください。また、廃棄予定の材料でも、再利用できるかまだ分からなければ、全額を損失として確定しません。判断待ちと明示し、転用や取消しで費用が変わったら、根拠と提示額を見直した経緯を残します。

提示から合意までの状態を分けて進める

  1. 変更番号を付ける。注文番号・元見積番号・新旧の図面版を対応させ、受け付けた日時と担当者を残す。
  2. 費用と納期の差分を集める。増える作業と取りやめる作業を拾い、外注費などがまだ決まらない箇所も示す。
  3. 再見積を提示する。差額・変更後総額・対象数量・図面版・納期を同じ版で示す。含まない作業と返答希望日も添える。
  4. 返答を区分する。合意・一部合意・条件付き・返答待ちを分け、社内の費用承認とは別に相手の回答を残す。
  5. 確定内容を伝える。合意した見積版と対象を製造・購買・出荷・請求へ渡す。担当者の受領と、指示への反映も追う。

取引先から「進めてください」と返事が届いても、図面変更への返事なのか、追加費用まで含む返事なのかが曖昧なことがあります。その場合は、対象数量・金額・納期を示して、了承された範囲を相手と読み合わせます。返答がない案件も、現場担当者の判断だけで承認済みにせず、元の取り決めを扱う社内担当者へ戻してください。

合意記録には金額だけでなく対象を残す

再見積に対する返答を残す項目
項目架空の記入例
変更・見積の対応変更C-07/注文R-210/Q-210-01→Q-210-02
適用範囲100個全数、図面B版、追加加工を含む
提示額・合意額をそれぞれ残すこの例は提示どおりに合意。追加15,000円、変更後総額65,000円、いずれも税抜
納期・返答9月22日へ変更。9月16日に取引先担当が同内容を了承
証拠と社内判断返信メールの保存先、社内判断者、判断日時
請求への渡し方変更後総額へ差替え。旧総額と追加額の重複請求をしない

合意後は、その金額を請求へどう渡すかも決めます。変更後総額へ差し替える方法で65,000円を載せ、さらに追加15,000円を足すと80,000円になり、同じ費用を二重に請求してしまいます。一方、追加分を別明細にするなら、元の50,000円と追加15,000円を分け、合計が65,000円になるようにします。上の記入例は提示どおりに合意した場合ですが、提示額と合意額の欄は分けて持ち、値引きなどがあれば両方を残しましょう。

協議の記録は、次の担当者が合意の経緯をたどるためにも役立ちます。公正取引委員会の労務費転嫁に関する指針にも、協議内容を双方で照合して保管する考え方が示されています。本記事ではこれを記録方法の参考とし、変更差額の根拠と相手の返答を結び付けています。個別の追加費用を請求できるかを、この記録だけで決めるものではありません。出典:公正取引委員会「発注者・受注者の双方が採るべき行動」。

費用が決まらないまま急ぐ場合の扱い

外注先の回答がまだなら、金額欄を0円として確定せず、見積待ちと分かるようにします。納期の都合で一部を先に進めたい場合は、着手範囲、金額の上限を設けるか、未確定費用をどう扱うか、いつまでに判断するかを、権限のある社内担当者と取引先で協議してください。決まった内容と許可された範囲を残してから着手し、担当者のメモだけで追加作業を広げないようにします。

一部だけ了承された場合は、合意済みの作業と保留中の作業を分けて伝えます。さらに変更が来たら、次の変更番号と見積版を作り、最初の提示額は履歴として残してください。値引きや今回は請求しない判断も、理由・判断者・今回限りかを記録します。今回の対応が、次回も同じ価格で受ける約束として扱われないようにするためです。

変更の伝達を帳票で追いたい場合

金額の協議と並行して、社内への伝達漏れも追いたい場合には、当メディアの自社商品「注文変更受付・伝達」Excelテンプレート(1,980円・税込)を補助帳票として使えます。変更前後・理由・受付の内容と、受領・生産部署・出荷部署の照合先や日時を1行に残し、部署の記録が欠ける案件を追う商品です。1行1変更、100行までで、入力・更新は手作業です。

ただし、この商品が再見積書を作成したり、追加費用を自動計算したりするわけではありません。取引先との金額合意や自動通知も行わないため、再見積書と返答は別に保存し、注文番号・変更内容で結び付けます。Windows版Excel 16.0では入力・計算・保存・再読込を検証済みですが、Mac版・Googleスプレッドシートは未検証です。すでに自社の台帳を使っているなら、「提示」「返答」「適用範囲」の足りない欄を補う方法もあります。既存の注文変更手順へつなぎ、決まった版と対象を現場・請求の担当者へ渡せる状態にしましょう。

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