人と機械が同時に動く加工では、人の関与時間と機械の運転時間を別々に残して費用を計算します。例えば1人で2台を見る60分を、各機械へ人60分ずつ付ければ、同じ人の時間を二度数えてしまいます。そこで、時間の単位と単価に含む費用を先に決め、人の共通監視時間は根拠を付けて一度だけ配分しましょう。これが、同時作業の見積を読み解く出発点です。
本記事が扱うのは、加工費のうち人と機械に関する部分です。材料・外注・その他の経費・利益まで含めた売価の決定とは分けて考えます。また、以下の時間と金額は説明用の架空例です。標準単価や安全な運転条件を示すものではないため、同時運転や担当範囲は自社で認められた条件を守り、その範囲の時間を計算してください。
同じ10分でも、人・分と機械分は別の量になる
作業者1人が機械1台を10分間担当した場合、時計で測った経過時間は10分です。この間、人が10分関わり、機械も10分運転したなら、人10分と機械10分を別々に残します。同時に使った資源が違うため、それぞれの費用を計算できる一方、経過時間が20分へ増えたわけではありません。下の表では、時間の合計を見る前に、何を数えた量かを比べてください。
| 記録する量 | 10分間の例 | 見積での使い方 |
|---|---|---|
| 経過時間 | 開始から終了まで10分 | 日程や工程の長さを把握する |
| 人の時間 | 2人が各10分なら20人・分 | 人に関する単価と掛け合わせる |
| 機械の時間 | 2台が各10分なら20台・分 | 機械ごとの単価と掛け合わせる |
| 共通の監視時間 | 1人が2台を10分担当 | 人10分を決めた根拠で配分する |
中村悦子氏の「モノづくりと原価 第4回『人時間』と『機械時間』」でも、人と機械の関わり方の違いや、段取りを含めた時間の把握を説明しています。見積で両者を分けるのは、どの資源をどれだけ使う工程なのかを費用へ反映するためです。時間を一つの欄へまとめず、人・機械それぞれの元記録を残しておくと、違いを後から追えます。
計算する前に、時間と単価の中身を合わせる
分で集めた人の費用は「人・分÷60×人の時間単価」、機械の費用は「機械分÷60×機械の時間単価」で計算します。ただし、二つを足す前に単価の内訳を見ます。既存の加工単価に人の費用まで含まれていれば、人件費を別途加えると重なるためです。人だけ・機械だけの費用へ分けるか、込みの単価として使うかを社内で決め、同じ対象分を二度加えないようにしましょう。
機械の記録では、実際に加工していた「実運転時間」と、段取りなども含めてその仕事に使っていた「占有時間」を分けます。そのうえで、費用を計算する時間は単価の定義へ合わせてください。実運転時間を基に作った単価へ、理由なく占有時間を掛けると金額の意味が変わります。どちらの時間を採用し、停止や段取りの費用をどこへ含めたかまで残します。
段取りも、人が動いていた区間と機械が停止していた区間は同じとは限りません。J-Net21の段取り改善の解説では、作業内容と時間を把握し、内段取りと外段取りを分ける進め方を紹介しています。見積用の記録も両区間を分けてください。運転中にできる準備かどうかは設備と作業の条件に従い、費用を小さくするために担当者の判断だけで停止手順を変えないようにします。
架空例:1人で2台を見る60分を配分する
ここからは、社内で認められた運用の下で、機械AとBが同じ60分間、自動運転した例を見ます。対象はこの区間だけで、前後の段取り・材料の着脱・検査は別に記録しました。作業者1人の内訳は、Aだけの運転状況を見たり記録したりする時間が15分、Bだけが15分、両方に共通する監視が30分です。専用の作業と共通の作業を分けてから配分します。
この例では共通監視の負担が同程度だったという条件を置き、30分をAとBへ15分ずつ配分します。Aの人時間は15+15=30分となり、Bも30分です。表の配分後合計60分が、対象区間の作業者1人の時間と一致している点を見てください。機械の時間とは別に、人の配分先を合計すると元の時間へ戻る形にします。
| 項目 | 仕事A | 仕事B | 合計 |
|---|---|---|---|
| 専用の人時間 | 15分 | 15分 | 30分 |
| 共通監視からの配分 | 15分 | 15分 | 30分 |
| 配分後の人時間 | 30分 | 30分 | 60分 |
| 機械の実運転時間 | 60分 | 60分 | 120台・分 |
単価は、人だけの費用を3,000円/時、機械だけの費用をAは1,800円/時、Bは2,400円/時と仮定します。機械単価は実運転時間を基準にしたものです。するとAは30÷60×3,000+60÷60×1,800=3,300円、Bは30÷60×3,000+60÷60×2,400=3,900円で、合計7,200円になります。人は配分後の時間、機械は各台の運転時間を使う点が違います。
これに対して、両方へ人60分を付けると、Aは4,800円、Bは5,400円、合計10,200円です。同じ作業者の60分を二度数えたため、人の費用が3,000円多くなっています。一方、機械は2台がそれぞれ60分動いたので、合計120台・分という記録は成り立ちます。合計時間が違うというだけで誤りとせず、人数・台数と配分元までたどることがポイントです。
共通時間は、均等配分を自動的な正解にしない
上の均等配分は、共通監視の負担が同程度だったという架空例の条件です。片方で頻繁な見回りや記録が発生する場合まで、自動的に半分とは決めません。まず専用に対応した区間を取り分け、残った共通時間について、観察した負担や社内基準を根拠として配分します。採用した理由を残せば、作業条件が変わったときも配分を見直しやすくなります。
また、手を動かしていなくても、その場を離れられない監視なら人の関与はゼロではありません。一方、別の仕事へ移った時間は、移動先の仕事と重複しないように扱います。機械の運転記録だけでは、この違いを読み取れない場合があるためです。作業者の行動記録と時間帯を合わせ、監視の担当を離れてよい条件そのものは作業の規定に従ってください。
根拠が決まらない共通時間は「共通・配分未確定」として残し、誰がどの記録から決めるかを付けます。仮の配分額を見積に使うなら、その条件を社内記録へ明示してください。不明分をゼロにしたり、すべての機械へ全額載せたりすると、元の時間との対応が失われます。配分が決まった際は仮値を使った見積への影響も見直し、旧版と変更理由を残します。
1工程で試すときの記録と照合手順
- 対象の受注・工程・作業者・機械を特定し、観察する開始と終了をそろえる。
- 人の専用作業、共通監視、他の仕事への移動を記録する。同時に、各機械の実運転と停止中の段取りを残す。
- 共通の人時間を一度だけ配分し、作業者ごとの対象区間と配分合計を照合する。
- 単価が人だけ・機械だけの費用か、どの時間を使う定義かを照合して計算する。
- 見積へ戻すときは別区間の段取りや検査なども拾い、今回の60分だけを工程全体の費用と取り違えない。
記録欄の出発点は「受注番号/工程/作業者/機械/開始・終了/人の専用分/共通分/機械実運転分/段取り分/配分根拠」です。機械が複数なら台ごと、人が複数なら担当ごとの時間を残します。計測区間の決め方はタイマーとストップウォッチの使い分け、受注と作業を結ぶ項目は作業日報に残す項目も参考になります。合計だけを入力せず、元の区間へ戻れる形にしましょう。
この配分は加工費を見積もるためのもので、勤怠時間や賃金を決める処理ではありません。設備費・間接費の扱いと運転条件が違えば、同じ時間でも計算結果は変わります。まず同時作業のある1工程で、人の元時間と配分合計、単価の費用範囲と時間基準を照合してください。前後の段取りや検査を含める際にも、既に計上した対象を重ねないことが大切です。
集計した人時間・機械時間を原価比較へ使う
自社商品(有料)|見積・実績原価比較Excelは、配分した時間を見積と実績で比べたい場合の候補です。延べ人分と延べ台分を手入力し、それぞれの時間単価から人件費・機械費を別計算する帳票です。1案件につき見積・実績各8工程までを扱うため、入力前に自社の工程と時間の単位を合わせてください。
同時作業や多台持ちの時間配分を自動で決める機能はありません。この記事のように、配分先と根拠を決めた値を入力します。Windows版Excelでは動作を検査済みですが、Mac版Excel・Googleスプレッドシートは未検証です。また、T09や帳票9点セットに含まれるものではなく、1案件の工程内訳と見積・実績を比べる別商品です。
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