プラスチックや金属への印刷が剥がれたときは、材料の表面、使ったインキ、乾燥・硬化の実績、試験した条件を順に照合しましょう。同じ品番でも表面の処理や材料のロットが違う場合があり、手で触って乾いたように感じても、性能を評価できる状態とは限りません。前回と今回を比べるには、まず何が同じで何が違うかを、現物と記録からたどることが出発点です。
対象は、硬い成形品や金属部品へシルクスクリーン印刷・パッド印刷を行う現場です。この記事では、品質担当やインキメーカーへ相談するために残す情報を説明します。試験方法と合否基準、洗浄剤、機械の調整値は、対象品の承認仕様とメーカー資料に従ってください。この記事の表だけで原因や再印刷の条件を決めるものではありません。
進める順番は、①対象品を分ける → ②実際の材料・表面をたどる → ③印刷から検査までの記録をつなぐ → ④条件をそろえて担当者が判定する、です。原因を推測して条件を変える前に、今回の現象を後から見返せる形で残します。
剥がれた位置と見えた状態を残し、対象品を分ける
剥がれを見つけた品は通常品へ戻さず、職場の保留手順に従って識別します。製品番号、ロット、発見日時、発見工程、現物の保管先を記入し、すでに次工程へ渡したものがあれば、行き先と数量も担当者へ伝えましょう。発見した品の置き場だけでなく、同じ作業のどこまでが進んでいるかを知らせると、担当者が処置の範囲を判断する材料になります。
現象は「密着不良」の一言で済ませず、「文字の端が欠けた」「テープへ印刷色が移った」「印刷と下地の塗装が一緒に取れた」など、見えた状態を残します。というのも、同じ剥がれでも、どの層で起きたかによって調べる対象が変わるためです。層の境界が分からなければ未判定とし、削ったり拭いたりする前の現物を保存してください。
写真は、製品全体、位置が分かる写真、近接写真を結び、表裏や上下の向きを添えます。光沢や反射で見え方が変わる場合は、撮影条件も記録しましょう。ただし、写真が鮮明でも接着の強さまで判定できるわけではありません。現物番号と写真を対応させ、外観の記録と所定の試験結果を別に残します。
素材名に加え、インキが接する表面までたどる
十条ケミカルは、印刷する材質と表面状態を調べ、接着性などを評価する際には、インキに指定された乾燥・硬化条件を守るよう案内しています。下の表は、この考え方をもとに、現場で照合する資料と迷いやすい点をまとめた編集部の記録例です。素材の呼び名だけでなく、インキが実際に接する面までたどる際に使ってください。参照資料:十条ケミカル「印刷に際して(注意事項)」
| 照合するもの | 記録する内容 | 迷いやすい点 |
|---|---|---|
| 印刷する製品 | 品番、材質・グレード、材料や成形のロット | 「樹脂」「鉄」だけで済ませない |
| 印刷する表面 | 素材のまま/塗装/めっき/表面処理、前処理記録 | 金属部品でも、インキが接するのは塗装面の場合がある |
| インキ一式 | 製品名、色、ロット、硬化剤・希釈剤、混合記録 | 同じ色名でもシリーズや添加剤が違うことがある |
| 乾燥・硬化 | 適用した作業票の版、設備、実施時刻、仕様で定めた実績値 | 設定値と実測した値を分ける |
| 試験 | 方法・条件、実施時刻、試験数、結果、判定者 | 試験までの経過時間が違う結果を混ぜない |
前回の良品と、材料・作業・試験の条件を照合する
- 材料の表示と伝票を照合します。同じ製品番号でも、材料グレード、支給元、表面処理や塗装のロットを前回と比べます。不明な材質は外観から推定せず、支給元・成形担当へ照会します。
- 印刷直前の状態をたどります。前処理の実施記録、保管・運搬の方法、手袋や治具など接触した物をたどります。汚れが見えないことを、定められた前処理が済んだ証拠にはしません。
- 使用材料と作業条件を照合します。インキ・添加剤の実物ラベル、混合記録、版や設備の識別番号を前回記録と並べます。記録がない欄は「同じ」と補わず、不明な点として残します。
- 試験の前提をそろえます。所定の乾燥・硬化工程の実績、試験方法、評価時期を品質担当が照合します。条件が違う試験結果は別欄に残します。
ここでいう硬化は、インキが所定の性能を得るために反応などが進むことです。上の表では、設備の設定値と実際の実績値、印刷した時刻と試験した時刻を分けて読んでください。見た目や手触りだけで、指定の工程が終わったとは判断できません。メーカーのパッド印刷資料でも、接着性不良の候補としてインキの選定、乾燥・硬化、表面状態などが挙げられています。参照資料:十条ケミカル「パッド印刷のトラブルと対策」
架空例:120個を保留しても、全数の不良確定とはしない
ここまでの情報を、架空の記録例へ当てはめます。印刷した120個のうち、規定の方法で調べた10個中2個に剥がれが見つかった場面です。10個は記入方法を示すための仮定であり、検査数や合否基準の推奨ではありません。下の表では、調べた範囲と、処置が決まるまで識別しておく範囲を分けて読んでください。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 対象 | ケースP-41、成形ロットM-23、印刷作業PR-08 |
| 検査した範囲 | 検査10個/剥がれが見つかったもの2個 |
| 保留範囲 | 同じ作業の120個を識別保留。全120個の不良確定ではない |
| 前回との相違 | 成形ロットが変更。前処理記録の参照先は未特定 |
| 次の行動 | 品質担当が前処理記録と試験条件を照合。現物F-01・F-02を保管 |
表の120個は識別して保留する範囲であり、120個すべての不良が確定したという意味ではありません。また、材料ロットが変わった事実は調査の手掛かりですが、それだけで原因とは決まりません。分かった事実、原因の候補、これから照合する資料を別に残しましょう。前処理記録と試験条件を担当者がたどり、対象品の扱いを決めたら、その根拠を元の記録へ結びます。
調整・再印刷は、対象品の条件と承認をそろえて進める
洗浄や表面処理、乾燥条件、インキ・添加剤を変える場合は、対象材料と設備に適合する承認手順に従います。別製品で使えた溶剤でも、今回の樹脂や表面仕上げへ同じように使えるとは限りません。材質が不明なら先に支給元へ照会し、使用薬剤のSDS(安全データシート)と設備の取扱説明書も照合してください。記録が不足したまま試し塗りや拭取りへ進まないようにします。
相談する際は、現物番号、写真、材料とインキの識別情報、作業・試験条件、前回との違いを一組で渡します。そのうえで、インキの適合と硬化条件はインキメーカー、材料・表面処理は支給元や処理担当へ問い合せると、回答に使う資料が明確になります。合否と保留解除は社内の品質責任者が扱い、メーカーからの助言を受け取っただけで出荷可能へ変えないようにしましょう。
承認された変更を試す場合は、変更前後の品を識別し、適用した条件と試験結果を残します。再試験で良い結果が出ても、すでに印刷した保留品の扱いは別に判断します。まずは今回の現物と記録を一組にし、何を変え、どの範囲へ適用するかを担当者と決めましょう。既存のロット・検査・写真記録を番号で結べば、同じ情報を別の帳票へ何度も書かずに追いやすくなります。
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