届いた数量と、製造へ払い出せる数量を分ける
材料が届いて棚に置かれていても、検査や所定の書類照合が終わっていなければ、製造へ払い出せるとは限りません。届いた数をすべて使えるものとして補充を判断すると、作業直前になって不足が分かることがあります。そこで、倉庫にある総数と、使用可・検査待ち・処置待ちの数量を分けて持つところから始めましょう。この記事では、入荷後の状態を、補充の検討に使う数量へつなぐ記録方法を説明します。
ここで扱うのは検査基準や合否の決め方ではなく、所定の判定・承認が済んだ範囲と数量を受け渡す運用例です。受入検査記録表の項目と記入例を参考に元記録を残し、その根拠から「今日、対象の作業へいくつ渡せるか」を拾います。判定記録と数量の表を結び付けておけば、数だけを見て使用の可否まで決めてしまうのを防げます。
1品番の中をロットと状態で分ける
最初は、品番・規格・ロット・置き場を合わせて行を分けます。ロットは入荷や製造のまとまりで、ロット番号はそのまとまりを識別するための番号です。たとえば同じ品番でも、先週の合格分と今日届いた検査待ちを同じ行へ足すと、どちらを使ってよいか分からなくなります。下の表に沿って状態と根拠を残し、空欄や不明な状態を使用可として扱わないようにしてください。
| 状態 | 数量の扱い | 根拠として残す記録 |
|---|---|---|
| 所定の判定・承認で使用可 | 対象の作業へ使える条件・数量を照らす | 判定番号、対象ロット・数量、判定・承認者 |
| 検査待ち・書類照合待ち | 現時点の使用可数量へ加えない | 待っている項目、回答する担当、回答見込み |
| 不適合の処置待ち | 通常の使用可数量と分ける | 隔離先、処置の担当、再判定の要否 |
| 条件付きで使用可 | 使える案件・期限・数量を個別照合する | 承認された条件と適用範囲 |
使用可の範囲が決まったら、次は別案件への引当を照らします。引当とは、注文や作業のために数量を確保しておくことです。使用できる材料でも、すでに別工程へ30個を確保していれば、新たに割り当てられる数は30個少なくなります。ただし、検査待ちを外す計算と引当を引く計算は目的が違います。使用可の数量から、そこに含まれる引当分を引く形にし、同じ数量を同じ理由で二重に減らさないようにしましょう。
架空例:棚には180個あるが、新たに使えるのは70個
品番M-08について、9月22日9時を基準日時とした架空例を見てみましょう。単位はすべて個で、現物180個の内訳は使用可100個、検査待ち60個、不適合の処置待ち20個です。また、使用可100個のうち30個は他の作業へ引当済みで、未入荷の確定予定はないものとします。下の表では、現物の数を残しながら、現時点で使用可へ含める数を別欄へ拾います。
| ロット/置き場 | 現物数量 | 状態 | 使用可数量 | 数量の根拠 |
|---|---|---|---|---|
| L01/材料棚A | 100個 | 使用可 | 100個 | 受入記録R-01 |
| L02/検査待ち区画 | 60個 | 検査待ち | 0個 | 受入記録R-02、判定待ち |
| L03/保留区画 | 20個 | 処置待ち | 0個 | 処置記録Q-03 |
| 合計 | 180個 | 混在させない | 100個 | 引当は下で別に照合 |
表の使用可数量は100個なので、新たに割り当てられる数量は100−30=70個です。現物総数を使って180−30=150個とすると、使用可になっていない80個まで含めてしまいます。また、表の0個は、そのロットから現時点の使用可数量へ算入する数がないという意味です。現物数量が不明なものを0個と書くことや、検査待ちの現物を台帳から消すこととは違います。
翌日、検査待ち60個のうち30個だけが正式に使用可となり、残り30個は待ちのままだったら、状態の内訳を移します。現物総数は180個のまま、使用可は130個です。引当が30個で変わらなければ、新たに割り当てられる数量は100個になります。このとき、状態が変わった30個を新しい入荷として足さないようにしてください。入荷の記録はそのまま残し、対象数量の状態と判定の根拠を更新することで二重計上を避けられます。
荷受け・判定・補充判断の受け渡しを決める
- 荷受けを記録する。納品書と現品で品番・ロット・数量を照合し、入荷した事実と日時を残します。
- 待ちの状態を識別する。現品と置き場へ管理番号・状態・数量を表示し、通常の材料と取り違えないようにします。
- 使用可の根拠をたどる。所定の担当者が判定・承認記録と対象数量を照らします。検査で見た個数と、使用可の対象になる数量は同じとは限らないため、基準書に沿って対象の範囲を特定します。
- 数量を更新する。判定・承認された数量について、元の待ち数量を減らして使用可へ移します。状態別の合計と現物総数も照合します。
- 補充の要否を検討する。使用可数量とその内数の引当、使用予定日までの未入荷確定分を区別し、重複を外して既存の発注点と比較します。
上の手順で、荷受け担当、判定・承認を担う品質担当、補充を検討する購買担当へ情報を渡します。表には更新した担当と時刻も残し、購買担当がどの時点の数量を使っているか分かるようにします。一人が兼務する場合も、荷受けの記録と使用可の判定・承認は別の段階です。入荷欄を付けたことだけで、使用可へ進めてはいけません。
数量が足りないときは、待ちの解消と追加発注を分ける
| 状況 | 先にたどる記録と条件 | 避ける扱い |
|---|---|---|
| 使用予定日が近いが検査待ち | 判定見込み、検査順の変更可否、工程への影響 | 未判定品を使用可として計算する |
| 保留の一部だけ解除 | 解除の対象ロット・数量と残りの識別 | 元ロット全量を解除する |
| 現品の数と表が合わない | 移動・小分け・払出し・記録時点 | 補充量だけ調整して差異を隠す |
| 入荷済みなのに予定にも残る | 元の発注明細と入荷数量 | 現在庫と未入荷予定の両方へ加える |
上の表のように、数量が足りない理由によって、先に相談する内容は変わります。検査待ちなら判定の見込みと検査順を、現品との差なら移動・小分け・払出しの記録をたどります。追加発注をすれば解決するとは限らないため、既発注分の数量や到着予定も購買担当と照らしたほうが良いでしょう。なお、使用可になる予定は実績ではありません。予定欄へ残し、所定の判定・承認が済むまで現在の使用可数量へ移さないでください。
状態別の数量をそろえた後の補充計算を助けるExcel
状態別の数量をそろえた後の計算には、有料Excel「発注点・補充判断」を使う方法があります。価格は2,980円(税込、2026年10月4日参照)。現在庫・引当数・現在庫へ未計上で使用予定日までに入荷する確定分から有効在庫を計算し、担当者が設定した発注点と目標在庫を使います。ただし、検査待ちや不適合品を状態別に判定・除外する機能はありません。このため、この記事の記録をもとに、計算へ入れる数量の範囲と根拠を先に決めます。入荷予定があることだけを理由に、その材料を使用可と判定するものでもありません。
使用可能な数量だけで補充を考える運用なら、商品へ入れる計算用の数と、元の台帳の現物総数を区別してください。計算に合わせて在庫台帳を小さい数へ書き換えると、検査待ちや保留中の現物を追えなくなります。商品の数量単位は整数の個、入力用・記入例は各100行で、発注送信・入荷消込は手作業です。Windows版Excelで検証済みですが、Mac版ExcelとGoogleスプレッドシートは未検証です。詳しい機能範囲は、次の販売ページで読めます。発注点・補充判断の内容と利用条件
数量の範囲がそろったら、材料発注点の決め方へ進めます。まず1品番で、現物総数と状態別数量の合計が一致するかを照らし、使用可とした範囲の根拠まで戻ってみましょう。合わない箇所があれば、その理由を担当者へたどってから補充の検討へ渡します。棚にある数、使える数、すでに確保した数を分けて伝えることが、最初の一手です。

