キャビティ別の不良は、検査した個数とセットで残す
射出成形で「不良4個」と残しても、どの位置で作られた品か、何個を調べた結果かが分からなければ、次に調べる対象を絞れません。キャビティは、金型の中で製品の形を作る空間です。複数個を同時に成形する金型では、各キャビティを番号で区別し、検査した現物へ結び付けて記録しましょう。合計だけで残したときに見えない違いを、位置別に追うためです。
記録の基本は、金型番号、製品ロット、キャビティ番号、対象の時間やショット範囲、実際の検査個数、不良品数を対応させることです。ショットは成形サイクルを数える単位なので、製品の個数と同じ欄へ混ぜません。この記事では、手書きや表計算で残す項目と読み方を扱います。成形条件の変更や原因診断、検査方法と合否基準は、所定の担当者が定めたものを使ってください。
事前に、番号の見方と検査の範囲を合わせる
製品に番号が付いていても、どの金型のどの位置に対応するかを、承認済みの図や管理資料と照合します。見る向きによって右上と左下が入れ替わるため、位置の呼び方だけに頼らないことが大切です。下の表のように金型と対応図の版を結び、担当者が替わっても同じ位置を指せるようにしましょう。現物から番号が分からない場合は、決められた識別方法をたどり、推測で欄を埋めないでください。
| 準備項目 | 架空例 | 使う目的 |
|---|---|---|
| 製品・図面版 | P-10/図面03版 | 同じ評価対象かを照合 |
| 金型・キャビティ対応 | M-08/C1~C4の対応図 | 金型をまたいだ番号混同を防ぐ |
| 製品ロットと対象範囲 | L-0922/ショット101~200 | 集計した範囲を特定 |
| 検査基準・検査方法 | 外観基準K-03の2版/既定の抜取検査 | 違う検査結果を分ける |
| 稼働したキャビティ | この区間はC1~C4 | 使っていない位置を区別 |
KistlerのAkvisIO IME取扱説明書には、サイクルごと、個々のキャビティごとに品質評価を示す機能が説明されています。位置と区間を分けて見る考え方の参考になりますが、これは同社製品の計測・評価機能です。本記事の手入力表へ転記すればセンサー計測や自動判定ができる、という意味ではありません。対応する機能は、次の取扱説明書で参照できます。Kistler:AkvisIO IME取扱説明書(7.5.5)
架空例:100ショットと検査80個を混ぜない
以下は、1ショットで各キャビティから1個ずつ取れる4個取り金型の架空例です。ショット101~200は100ショットなので、4位置がすべて稼働した前提では、計算上400個となります。ただし、サイクルから計算した数だけでは、実際に取り出した数量や良品数までは決まりません。生産の計算値と、現物を検査した数を分けて、下の表を読んでください。
この区間から、既定の検査方法で各キャビティ20個ずつを実際に調べたとします。20個という値は推奨する抜取数ではなく、分母を説明するための仮定です。表のC3は不良品3個のうち、区分Aの品が2個、区分Bの別の品が1個という例です。同じ品に複数の現象がある場合は、不良品数と現象件数を別に数えます。まずは、表の検査個数が実際に調べた現物と一致するかを見ましょう。
| キャビティ | 検査個数 | 不良品数 | 検査した品の不良割合 | 検査結果のメモ |
|---|---|---|---|---|
| C1 | 20個 | 0個 | 0% | 今回の検査範囲では該当なし |
| C2 | 20個 | 1個 | 5% | 外観区分Aが1個 |
| C3 | 20個 | 3個 | 15% | 外観区分Aが2個、Bが1個 |
| C4 | 20個 | 0個 | 0% | 今回の検査範囲では該当なし |
| 合計 | 80個 | 4個 | 5% | 4÷80×100 |
表全体では、4個を検査80個で割った5%が、今回調べた品の不良割合です。4個を100ショットで割った4%や、計算上の400個で割った1%は、この検査結果の割合ではありません。また、80個の5%を、そのまま未検査品を含むロット全体の確定値にはしません。C3を優先して調べる材料にはなりますが、C3のどの条件が原因かは、別の記録と調査を合わせて判断します。
誰が何を書くかを5段階に分ける
- 管理者が対象区間を決める。生産ロット、使用金型、図面版、検査基準版を照合します。キャビティの使用状態や検査基準が変わった区間は、同じ行へ混ぜません。
- 検査担当が現物と識別番号を照合する。キャビティ番号と、採取・検査した時点を残します。記録した時刻と製造した時刻が違う場合は、欄を分けます。
- 検査担当が分母を先に記録する。実際に検査した個数を入れます。検査していない位置は「未検査」とし、不良0個だけを入力しません。
- 不良品数と不良内容を分ける。1個に2種類の不良がある場合、不良品数は1個、現象の延べ件数は2件です。両方を扱うなら列名を明示します。
- 判定担当が根拠を添えて相談する。基準との照合結果、現物や写真の管理番号、対象ロットの範囲を渡します。成形条件の調整や処置は、担当者が承認された手順で判断します。
途中で条件が変わった記録は、別の区間にする
下の表では、非稼働、検査数の違い、位置不明、再検査を分けています。次の区間でC4を使っていないなら、不良割合を0%とせず非稼働と残します。0%では、検査した結果に不良がなかったように読めるためです。また、検査個数が違う区間をまとめるときは、割合を単純平均せず、不良品数と実検査数の対応から集計します。位置不明の現物を推測で配分したり、再検査を初回の分母へ足したりしないようにしましょう。
| 状況 | 記録例 | 保留すること |
|---|---|---|
| C4が対象区間で非稼働 | C4:非稼働、検査個数なし | 0%として良否比較しない |
| C2の検査は10個だけ | C2:検査10個、不良1個、割合10% | 他位置の20個と同じ検査量と見なさない |
| 不良品の位置番号が不明 | キャビティ不明1個/現物ID F-09 | 推測した位置へ配賦しない |
| 同じ品を再検査した | 初回検査IDを参照する再検査行 | 初回の検査個数へ二重加算しない |
交代時には、前の集計区間、未検査の範囲、判断待ちの現物と置き場を渡します。「合計4個だった」だけでは、次の担当者がどの記録や現物から続けるか分かりません。金型や稼働位置、図面版、検査基準が変わった場合は、その時点から別の区間にします。旧区間を消さず、変更の根拠と適用時点を残せば、結果が違う理由を調べる際にも前提をたどれます。
まとめと参照した一次資料
キャビティ別の記録は、どの位置かに加え、どの区間の何個を調べたかがそろって初めて比較できます。ショット数、検査個数、不良品数、現象件数を別にし、不明や未検査を0で埋めないようにしましょう。まずは対象の区間と番号の対応を合わせ、現物と記録をたどってみてください。本記事の表と手順は編集部の提案であり、検査数や合否、対象ロットの処置を新たに決める基準ではありません。
位置別の結果から工程へ戻る際は、不良を工程別に残す記録、材料との対応をたどる際は、材料ロットを追跡する方法も参考になります。記録同士を番号で結び、分かった事実と原因の候補を分けて相談すると、次に調べる範囲を具体化しやすくなります。
- Kistler「AkvisIO IME Type 2878A」取扱説明書、7.5.5 Good / Bad(冊子42~43ページ):キャビティとサイクル別の評価機能を参照。2026年10月4日閲覧。

