小ロットの段取り費を単価へ反映する方法|数量別の見積例

生産・品質管理

小ロットの見積では、数量に比例する費用と、製作の準備にかかる段取り費を分けます。同じ段取り1回で作れる範囲なら、「数量比例費の単価+段取り費÷数量」で1個あたりの原価を考えられます。ただし、数量を変えた結果、段取り回数や材料の購入条件まで変わる場合は別です。単価だけを下げたり上げたりせず、変わる条件を拾って計算し直しましょう。

この記事では、数量別見積の社内計算から、取引先へ適用条件を伝えるところまでを扱います。金額・時間・率はすべて税抜の架空例で、値引き幅や段取り料金の相場ではありません。計算式に当てはめる前に、自社ではどの作業が一度で済み、どの作業を繰り返すのかを見ておくことが出発点です。

数量が少ないと、段取り費を分け持つ個数も少なくなる

例えば準備に6,000円かかる仕事なら、10個で分けると1個あたり600円、100個で分けると60円です。1個を加工する内容が同じでも、段取り費を負担する個数が変わるため、原価も変わります。中小機構のJ-Net21でも、小ロット化による段取り時間の比重と、実際の作業内容・時間を把握する進め方を説明しています。J-Net21の段取り改善の解説

まず、受注全体で1回だけ行う準備と、生産を分けるたびに繰り返す準備を分けます。プログラム作成や治具の準備、取り付け、条件出し、初品の検査などは、同じ段取りという名前でも発生する条件が違うためです。下の表を手がかりに、自社で含める範囲を決めてください。既存の加工単価へ含めた作業を、別の段取り費として再び足さないことも大切です。

数量別見積の前に分けておく費用
費用の性質費用に含める作業・条件数量変更時の扱い
受注全体で一度初回のプログラム作成、専用準備など次回も発生するか、改訂時だけ発生するかを調べる
生産する回ごと取り付け、条件出し、初品の検査など生産ロットを分ける回数で変わる
個数に応じる材料、繰り返し作業など数量に比例する範囲と単価が変わる境目を調べる
段階的に変わる材料の最低購入量、外注の最低料金など境目を越えたところで再計算

架空例:10個・30個・100個の原価と提示額

次の表では、同じ仕様を一度に製作し、段取り1回で完了する条件を置きます。段取り費は6,000円、材料や繰り返し作業などの数量比例費は1個400円です。この例で扱う原価は2つの費用にすべて含み、別の追加費用はないものとしました。なお、受注ごとに発生する段取り費を、期間全体の「固定費」と同じ意味では使いません。

受注の見積原価は「6,000+400×数量」で求めます。さらに、売価に対してこの原価との差を20%確保する条件なら、提示額は「見積原価÷0.80」です。表では割り切れる数量を使いました。原価の合計を数量で割った値と、利益を含む提示単価を分けて読み、どの数字を取引先へ示すかを取り違えないようにしましょう。

同じ段取り1回で作る場合の比較(架空例・税抜)
項目10個30個100個
段取り費6,000円6,000円6,000円
数量比例費の合計4,000円12,000円40,000円
見積原価の合計10,000円18,000円46,000円
1個あたり原価1,000円600円460円
受注全体の提示額12,500円22,500円57,500円
提示単価1,250円750円575円

表では100個の提示単価が575円ですが、これをそのまま10個へ使うと提示額は5,750円になります。一方、10個分の原価は10,000円なので、4,250円足りません。同じ部品でも、少量になるほど段取り費を分け持つ負担が増えるためです。したがって、前回単価を使う前に、前回の数量と生産回数、今回も同じ準備で済むかを比べます。

段取り費を別に示す場合も、合計は同じ前提で計算する

取引先への表示には、段取り込みの製品単価と、段取り・準備費を別項目にする方法があります。いずれも取引条件に合わせますが、表示を分けたことで計算の前提まで変わらないようにしましょう。例えば社内原価6,000円を、そのまま別建ての販売額にすると、目標の率を満たさない場合があります。原価を記す欄と、提示する金額の欄を分けて計算します。

上の30個の例を同じ20%の条件で別建てにすると、段取りの提示額は6,000÷0.80=7,500円、製品部分の提示単価は400÷0.80=500円です。すると7,500+500×30=22,500円となり、段取り込みの750円×30個と合計は一致します。つまり、表示方法が違っても対象の費用は同じです。750円×30個へさらに7,500円を加えると、段取り費を二度計上することになります。

見積書には「同一図面・同一条件で30個を1回生産する場合」「仕様変更や生産の分割は再見積」など、単価が成立する条件を添えます。条件が書かれていないと、数量だけを変えて使える価格と受け取られるおそれがあるためです。また、円未満が出る場合は単価と総額のどちらで丸めるかを決め、表示単価×数量と請求対象の合計がどう対応するかまで合わせておきます。

100個を小分けに作る場合は段取り回数を見る

数量だけでなく、生産する回数でも結果は変わります。100個を一度に作る場合に対し、10個ずつ10回作り、毎回6,000円の段取りがかかるなら、原価は6,000×10+400×100=100,000円、提示額は125,000円です。一度に100個を作る提示額57,500円とは前提が違います。同じ合計数量だからと、段取り回数を省いて比べないようにしましょう。

ただし、分納が10回でも生産は一度で済む場合があります。この場合に段取りを10回として計上するのは適切ではなく、追加の保管・梱包・運送などを別に見積もります。一括生産は、保管や品質、仕様変更への対応を含めて可能かを判断してください。1個あたりが安くなるという理由だけで、注文を超える数量の製作へ進める話でもありません。

数量を変える前に、生産と調達の条件を調べる

  1. 取引先と注文数量・納入日程・図面の版を合わせる。
  2. 実際の生産回数を決め、各回で行う段取りを数える。
  3. 材料の最低購入量と、外注先の数量別回答を取り寄せる。
  4. 数量ごとの原価と提示額を計算し、込み・別建てで同じ費用を重ねていないか照合する。
  5. 前提条件と見積の版を保存してから回答する。

次の注文がリピートでも、初回と同じ準備になるとは限りません。プログラムを再利用できる一方、取り付けや初品の検査は毎回行うことがあります。そのため、元記録から再利用する準備・繰り返す準備・変更された準備を分けて拾います。「前にも作ったから段取りゼロ」とせず、今回行う作業を見積へ戻しましょう。

段取り費が大きい場合は、料金だけを変える前に時間の内訳と発生回数を見ます。段取り替え時間を記録して改善する実務手順では、その元記録の取り方を説明しています。短縮案ができた場合も、決められた検査や安全の手順を省いて時間を作るのではなく、採用した作業条件と根拠を見積へ反映します。

数量別の見積を残すときは、前の条件を消さない

10個・30個・100個の回答を比較できるよう、数量ごとに別行または別版を残します。追加注文が来たときは、前の生産へまとめられるか、再段取りになるかを調べてから見積もりましょう。採用された数量と日程は注文変更時の確認と伝達の記録へつなぎます。旧回答を消さず、相手と合意した条件を現場へ渡すことで、見積と生産の食い違いを追いやすくなります。

この商品には機械費の独立入力、上の金額表の取り込み、数量別料金表の自動作成はありません。Windows版Excelでは計算・保存・再読の検査を済ませていますが、Mac版Excel・Googleスプレッドシート・現場運用・実印刷は未検証です。表の例と商品の計算範囲を区別し、まず自社の条件を記入例と照合してから使い始めましょう。

タイトルとURLをコピーしました