不良記録には、最初に不良を認識した「発見工程」と、その不良が生じたと根拠から判断した「発生工程」を別欄で残しましょう。初報で発生工程が分からなければ「調査中」とし、調べる担当、期限、現時点の根拠や不足情報を記します。発見した場所と実際に隔離・停止した場所が違う場合は、それも別に残してください。発見の記録だけで、後工程への流出を止め終えたとは扱わないことが出発点です。
最終検査で見つかったという情報だけでは、加工や組立のどの条件を直すかまでは分かりません。そこで、初報の事実、工程判定の根拠、現物への処置をつなぎ、発生防止と流出防止へ分けて対策を考えます。下の表は、発見直後、原因工程の調査中、判定後で最初の対応を選ぶためのものです。紙の不良票や既存の品質記録を使う場合も、この段階の違いを残しましょう。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 次に調べること |
|---|---|---|---|
| 最終検査で不良を発見した | 発見工程は最終検査で確定 | 所定の識別・保留と報告を行い、現象と発見数量、未調査の範囲を記録する | 前工程までの通過記録と加工・組立条件 |
| どこで発生したか分からない | 発生工程は「調査中」 | 調査担当者と判断期限、次の行動を決める | 現品、ロット、設備、作業、移動の記録 |
| 加工で作り込まれた根拠がそろった | 発生工程を加工で確定 | 確定日、判定者、根拠を追記する | 同じ条件の仕掛品と発生防止策 |
| 同じ不良が後工程まで通過している | 発生防止と流出防止を分ける | 発生工程×発見工程で集計する | 検査時期、検査項目、判定基準 |
発見工程だけで集計すると対策先を誤る理由
発見工程は、調査を始めるきっかけになった場所です。一方、発生工程は、現物と履歴などを調べた後に判定する対象です。たとえば出荷前に見つけても、運搬や保管で状態が変わった可能性があれば、加工だけに原因を絞れません。両者を同じ欄にすると、調査結果で発見場所を上書きしたり、見つけた工程の責任と決め付けたりしやすくなります。
最終検査の寸法不良なら、加工時の状態に加え、その後の変化や測定条件も調べます。発見工程別の集計は、どこで異常を認識したかを見る材料です。そこから、実際にどの範囲を止めたかや見逃した条件をたどります。発生工程別の集計は、根拠が得られた工程の条件、治具、標準作業などを見直す材料になるため、同じ件数でも使い道が異なります。
同じ工程で発生し発見した場合も、両方の欄に記録します。ただし、組立直後に欠品へ気付いたことだけで、発生工程も組立とは決めません。組立で部品を付け忘れた根拠が得られた例なら、発見と発生の両方を「組立」にします。原因がまだ不明なら発生側は調査中です。この分け方により、工程内で気付いた事実と、発生を特定した結果を後から比べられます。
不良記録に入れる項目と工程名をそろえるルール
帳票を作る際は、初報を残す人、調査結果を追記する人、工程を判定する権限者を決めます。発見者がその場で原因まで埋める方式では、推測が確定情報として残るおそれがあるためです。品質担当者は集計時に未確定の状態も読み、未回答の担当と期限を追います。記入を終えるために判断を急がず、現物の保留や報告などの初動を先に行う手順にしてください。
最初に決める基本12項目
次の12項目は、発見と工程判定を結び付ける基本の項目群です。これだけで自社や顧客の全要求を満たすとはせず、既存の必須記録と合わせて使います。不良内容には「寸法」「傷」などの分類と、場所や外れ方が分かる説明を添えましょう。また、数量は今回発見した個数なのか、影響する可能性がある対象数なのかを分け、未調査の範囲を不良確定数へ混ぜません。
- 受付番号
- 発見日時
- 品番・工番
- 不良内容(分類と具体的な現象)
- 不良数量(発見数と影響調査の対象数は別欄)
- 発見工程
- 発見者
- 発生工程の状態(確定・推定・調査中)
- 発生工程
- 判定根拠
- 処置
- 担当者
処置は、予定した内容と実施した内容を分け、識別・隔離、対象範囲の調査、連絡、担当と期限を残します。ロット、設備番号、治具・工具、材料、作業条件、写真・測定値の参照先など、追跡に使う項目も対応させてください。まだ分からない欄は、未判明と調べる担当を明示します。集めにくいという理由で必須記録を外さず、元の記録から参照できる方法を検討しましょう。
工程コードと分類名を固定する
工程名が「組立」「組立一式」「組立1」と分かれると、同じ作業を数えているのか判断しにくくなります。工程一覧にはコード、表示名、対象作業、開始と終了の定義を記し、不良票はそこから選ぶ方式にします。一覧に当てはまらない作業が出た場合は、近い名前へ無理に入れず、未分類と内容を残して品質担当へ渡します。選択式にする目的は、実態と違う選択を強制することではありません。
工程を分ける細かさは、履歴で追える範囲と対策の担当から決めます。不良分類も、寸法、傷、欠品、組付け、異品などを使い、外観と傷のように重なる分類はどちらへ入れるかを決めましょう。名称を変更したら、新旧の対応、変更日、理由を残します。過去の記録を無言で新名称へ書き換えず、集計でまとめる際に適用した対応表が分かる形にします。
発生工程が分からない不良を調査中のまま残す方法
初報で発生工程を特定できないこと自体は、記録の失敗ではありません。むしろ、根拠がないまま工程名を埋めると、誤った対策や工程評価につながります。下の調査中・推定・確定を使い、候補と確定結果を区別しましょう。確定の判定も、何を照合したかだけでなく、その資料がどの状態を示しているかを説明できるようにします。
- 調査中:候補工程を確定せず、現品と関連記録を調べている状態
- 推定:候補工程はあるが、工程を断定する根拠が不足している状態
- 確定:現品、履歴、条件などの根拠を記録して工程を判定した状態
発見者は日時、工程、現象、発見数量、現品の状態を残し、調査担当者がその後の根拠、候補工程、判定日、判定者を追記します。原因を調べた結果で、初報の発見場所や時刻を上書きしないでください。一方、初報自体の誤記が判明した場合は修正を禁止せず、元の値、修正理由、日付、担当を履歴へ残します。発見時の記録と後で分かった情報をたどれることが目的です。
調査中や推定の案件には、担当、判断期限、次に情報を集める日時を付けます。品質担当者は週次集計で滞留や期限超過を見ますが、出荷や安全に影響する案件をその日まで待たせません。保留案件の追跡ルール|回答待ちを放置しない管理表と運用方法も参照し、未回答の事項と次の行動を同じ受付番号へ結び付けましょう。
発生工程の根拠を調べる順序と判断フロー
調査は、発見した工程から実際の通過履歴をたどり、どの時点で状態が変わり得たかを比べます。所定のルートを通ったはずだ、と予定だけで判断しないでください。加工に加え、洗浄、運搬、保管、混在、取り違えも候補に入れます。その工程で不良を起こせる可能性があることと、その対象品に実際に生じた根拠があることを分けて調べます。
- 不良品を隔離し、品番、工番、ロット、数量、発見時点の状態を確保する。
- 発見工程を記録し、直前の検査、作業、保管、移動の履歴を時系列でたどる。
- 各工程の通過記録、現品観察、設備履歴、作業条件、材料・治具の情報を照合する。
- 起こり得る可能性だけで断定せず、対象品に生じた根拠から権限者が発生工程を判定する。
- 根拠が不足するときは調査中または推定とし、次に行う測定、写真、現物保管、観察と担当・期限を決める。
前工程の検査に合格と書かれていても、その不良を検出できる項目・方法だったか、同じ対象やロットの記録かを読みます。さらに、検査後の変形や傷、取り違えも調べてください。根拠が足りなければ推定または調査中を維持し、次の測定、現物保管、観察を担当へ割り当てます。発生工程の判定が済んでも、それだけで保留品の処置や再開許可が済むわけではありません。
不良票の記入例:最終検査で見つけた寸法不良
次の表は、材料受入、加工、洗浄、組立、最終検査と進む工程を想定した架空の記入例です。初報では穴径の上限超過と発見数量を残し、その後の調査で加工に起因すると判定した場合を示しています。実用時は、測定箇所、規格と単位、実測値、使用した測定具、適用図面、根拠資料の参照先を実データへ置き換えてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 受付番号 | 例-001 |
| 発見日時・発見工程 | YYYY年M月D日 14:20/最終検査 |
| 不良内容 | 寸法。図面の測定箇所Aの穴径が規格上限を超過。規格:○○~○○、実測:○○、上限側 |
| 不良数量(発見数と影響調査の対象数は別欄) | 2個 |
| 初報時の発生工程 | 状態:調査中/工程:未確定 |
| 初報時の処置 | 対象2個を識別・隔離。同条件の仕掛品などへの影響を調査。加工条件の記録を担当者へ照会 |
| 確定後の発生工程 | 状態:確定/工程:加工 |
| 判定根拠 | 同一品の加工前後の記録と条件・現品測定から、加工で穴径が上限を超えたと判定した架空例。実際は資料と数値を記す |
| 確定日・判定者 | YYYY年M月D日/品質担当者 |
表の例-001は14:20に2個の不適合を発見した例であり、影響範囲全体が2個だけと確定した記録ではありません。同条件の仕掛品や出荷済み品への影響も所定の手順で調べます。また、「資料を照合した」だけでは工程判定の説明が足りないため、加工後のどの記録が同じ不良を示したかなど、結論とのつながりを書きます。検査記録は写真と文章のどちらで残す?不良を伝える選び方も使い、写真と数値、判定の役割を分けて残しましょう。
発生工程別と発見工程別を分けて集計する表の作り方
週次や月次に集計する前に、何を一件と数えるかを決めます。報告件数、明細件数、不良品の個数は別の単位であり、同じ数字として足しません。受付番号で報告を数える場合も、同じ案件の追記を新たな発生件数へ重ねないようにします。そのうえで、不良数量、手直し工数、廃棄、納期への影響を添え、件数だけでは見えない対策の優先度を比べましょう。
クロス集計は、行に発生工程、列に発見工程を置いて両者の組合せを見る表です。確定した工程の行合計は発生防止を考える材料、列合計は認識した場所を調べる材料になります。調査中と推定は確定工程へ混ぜず、状態を独立して表示します。下の表は状態の読み方を示す模式表で、実際の件数や個数を集計した表ではありません。
| 発生工程\発見工程 | 加工 | 洗浄 | 組立 | 最終検査 | 行合計の使い方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 加工 | 工程内発見 | 通過後に発見 | 通過後に発見 | 加工起因・最終検査で発見 | 加工の発生防止を検討 |
| 洗浄 | 通常は該当しない | 工程内発見 | 通過後に発見 | 洗浄起因・最終検査で発見 | 洗浄の発生防止を検討 |
| 組立 | 通常は該当しない | 通常は該当しない | 工程内発見 | 組立起因・最終検査で発見 | 組立の発生防止を検討 |
| 調査中 | 未確定 | 未確定 | 未確定 | 未確定 | 期限と滞留を追跡 |
上の表で「加工で発生し最終検査で発見」が多ければ、加工条件と、その後に検出できる機会を両方調べます。ただし、最終検査で多く見つけたことだけで、最終検査が発生原因とも、必ず検査能力が高いとも決められません。対象量や検査範囲、未検査や後で分かった不良も踏まえて比較します。「通常は該当しない」の枠も、工程戻りや再加工があれば実際の履歴をたどって扱います。
週次レビューで発生防止と流出防止を別々に決める
週次レビューでは、件数や影響の大きい組合せ、期限を超えた未確定案件を示し、次に調べる対象と変更案を決めます。発生を抑える対策と、発生後に外へ出さない対策には別の目的があるため、どちらの対策かを表へ記しましょう。緊急の保留・連絡・処置は週次を待たず行い、会議は未了の追跡と継続的な見直しに使います。
- 発生防止では、対象工程の作業条件、設備・治具、材料、図面・指示、標準作業、教育の何を調べ、承認後に変えるかを決める。
- 流出防止では、発見工程までの検査項目・時期、見本、測定方法、判定基準、仕掛品への調査範囲を検討し、所定の承認を得る。
- 対策表には、対象工程、対策区分、担当者、期限、変更内容、反映先、評価指標、評価日と実施結果を残す。
次のチェックリストでは、対策の担当と期限だけでなく、何を根拠に効果を見るかを読みます。実施済みと効果ありを同じ欄にしないことが、注意喚起だけで終わらせないためのポイントです。変更案は所定の承認後に適用し、検査数や判定基準を担当者だけで緩めません。対策中も、保留品の処置と流出防止の状態を別に追ってください。
- 発生工程と発見工程が別欄に記録されているか。
- 調査中や推定の案件に担当者、期限、次の調査日があるか。
- 対策が発生防止か流出防止かに分類されているか。
- 変更する作業、帳票、検査基準の反映先と反映予定日が決まっているか。
- 同じ発生工程×発見工程の組合せ、未確定の滞留日数、不良数量を、どの対象・期間・数量で比べるか。
記入に迷った工程名や分類も残し、選択肢を直す担当と適用時点を決めます。現場会議の決定事項を実行へつなげる管理方法のように、決定、反映先、実施、効果の評価をつなぎましょう。対策後の件数を比べる際も、生産・検査した対象量や期間が違うなら、その違いを添えます。不良を見つけなかった期間に対象品を作っていない場合は、再発防止の効果が出たとは言い切れません。
よくある質問
発生工程を特定できない不良は、月次の不良件数に含めますか?
不適合として判定した記録は、発生工程が未確定でも対象期間の集計へ含めます。発生側は調査中または推定と表示し、確定した工程の件数へ仮置きしません。不良の疑いだけで判定前の案件は、その状態を別に残します。また、隔離が未完了だから記録や集計から外すのではなく、未処置として優先して追ってください。受付日、担当、期限と未確定の理由が読める形にします。
同じ不良が複数工程を通過した場合、発見工程はどこにしますか?
最初に不良を認識した工程を記録し、隔離や停止を実施した場所・日時は別に残します。認識後に流れてしまった場合も、その経過を消さず追跡します。前工程で見逃した可能性があるというだけで発見工程を替えません。実際に前から認識していた根拠や記入誤りが判明した場合は、元記録を保ち、理由と変更者を付けて訂正します。
外注先からの受入時に見つけた不良は、どう書き分けますか?
自社で受け入れる際に見つけたなら、発見工程は「外注受入」など工程一覧の名称で記します。外注から届いたという理由だけで発生も外注とはせず、加工、梱包、輸送、自社での扱いを調べます。外注工程と判定する場合は根拠、判定日、判定者を残し、取引先への連絡内容も対応させましょう。詳細を追えない範囲はその限界を記し、推測で細かな工程名を埋めません。
工程名を変更した場合、過去の不良データはどう扱いますか?
工程名を変えたら、過去の原記録を保ち、新旧コードの対応表を用意します。集計時に対応付けるか、変更前後を分けるかを決め、その方法を注記してください。単なる名称変更と、工程の範囲や検査方法を変えた場合では比較条件が異なります。範囲の違う件数をそのまま増減として示さず、対象と集計単位をそろえて読める範囲で比べます。
まとめ
まず、現在の不良票へ発見工程、発生工程の状態、発生工程、判定根拠を分けて設け、工程一覧の名称と対応させます。初報では発見した事実と現物の扱いを残し、発生側が不明なら調査中として担当と期限を付けましょう。調査後の情報は追記し、判定の根拠と初報を同じ受付番号からたどれるようにします。
運用後は発生工程別、発見工程別、両者の組合せを使い、発生防止と流出防止へ対策を分けます。未確定の滞留日数、不良数量、手直し工数も、対象量や期間の違いと合わせて読みましょう。記録を埋めることより、根拠から工程を判定し、対象品の処置と対策の効果まで追えることが目的です。自社の製品や検査基準に沿って、記入ルールを使いながら直していくと良いでしょう。

