全数検査と抜取検査の記録をまとめる前に|分母と集計範囲のそろえ方

生産・品質管理

ロットの数量と、実際に検査した数量を分けて残す

全数検査で1,000個、抜取検査で50個を調べた場合、不良個数だけを並べても品質の違いは判断できません。というのも、調べた範囲が異なるからです。この2つの記録を集計する前に、実際に検査した品物の数と、その中で不良と判定した個数を対にして残しましょう。ロットは、まとめて管理する製品のひとまとまりです。ロット1,000個から50個を調べた場合、記録上の検査数は50個であり、未検査の950個まで検査済みにすることはできません。

この記事では、検査後の記録をどの範囲で集計するかを説明します。何個を抜き取るか、何個の不良までロットを受け入れるかを決めるものではありません。検査計画・合否基準には顧客との取決めや社内の承認済み基準を使い、見直しを検討するときは抜取数を決める前にそろえる条件からたどってください。集計の都合で検査方法や基準を変えないことが前提です。

架空例1:抜き取った50個中1個を、1,000個で割らない

まず、品番・検査項目・判定基準が同じ2ロットを比べた架空例を見てみましょう。下の表では、ロット数量と検査数を別欄にしています。数値は割り算の説明用であり、この抜取数や不良個数なら合格としてよいという例ではありません。

ロット数量と検査数の違い(架空例)
記録ロット数量検査方法・検査数検査で判明した不良個数検査した範囲の不良割合
A1,000個全数・1,000個10個10÷1,000=1%
B1,000個抜取・50個1個1÷50=2%

表のBでは、1個をロット全体の1,000個で割ると0.1%になりますが、それは「検査した中の不良割合」とは違います。実際に調べた範囲は標本50個なので、記録には「抜取50個中1個」と残します。また、標本内の割合が2%だからといって、ロット全体に不良が20個あると確定することもできません。率を報告するときは、どの品物を調べて得た数字かまで伝えたほうが良いでしょう。

米国国立標準技術研究所(NIST)の受入抜取検査の解説でも、主な目的はロットの受入れ可否を判断することであり、品質水準を推定することとは区別されています。したがって、記録から割合を計算できても、その値だけで受入れや出荷を決めるわけではありません。ロットの処置は承認済みの検査計画に沿って判断します。

全数と抜取を足した割合には、集計範囲を明記する

では、AとBを合わせて報告する場合はどうでしょうか。不良数11個を検査数1,050個で割ると約1.05%となり、1%と2%を単純に平均した1.5%とは一致しません。検査数に差があるためです。ただし、約1.05%も全数と抜取が混在した検査記録上の割合であって、2ロット合計2,000個すべてを調べた不良率ではありません。合計を載せる場合にも、この範囲を見出しや注記へ残します。

月ごとの数字を比べる際は、さらに検査方法の内訳をそろえます。全数と抜取の比率が変われば、まとめた割合が動いても、品質が変わったためか検査の構成が変わったためか分けにくくなるからです。下の表に沿って、同じ品番・工程・検査項目・基準の版・全数または抜取・初回または再検査に分け、各区分の不良数合計÷検査数合計を出しましょう。区分の違う合計は補足として表示し、そのまま月次の改善・悪化の根拠にしないほうが良いでしょう。

集計前にそろえる記録欄
記録欄照合する範囲
品番・ロット番号どのひとまとまりを調べたか
検査方法・検査回全数/抜取、初回/再検査を混ぜていないか
検査項目・基準の版外観、寸法など同じ対象を同じ基準で判定したか
ロット数量・実検査数分母が実際に調べた品物の数になっているか
不良個数・判定結果不良箇所の延べ件数と、品物の個数を区別したか
元記録・照合担当どの記録を含め、誰が対象範囲を照合したか

架空例2:抜取後に全数を再検査したら、同じ品物を区別する

検査回を分ける理由は、再検査の例で分かります。ある300個のロットで最初の抜取30個中2個が不良となり、所定の判断を経て300個全部を改めて検査したとします。後続の全数検査で見つかった不良3個には、最初と同じ2個を含むものとします。下の表では、それぞれの記録を残したうえで、合計が何を数えているかを区別しています。

初回と後続の検査を別に記録する
記録検査数不良数見方
初回抜取30個2個最初の検査結果を残す
後続の全数検査300個3個先に見つかった同じ2個を含む
延べの検査記録330個分5個分の検出品物300個・不良品3個とは別の量

表の330個分は、実際に調べた延べ回数としては使えます。しかし「製造した330個のうち5個が不良」とすると、同じ品物と不良を重ねて数えてしまいます。これを避けるために、後続の検査記録には元の検査番号を付け、対象の品物をたどれるようにします。初回結果を後の数字で上書きしなければ、最初に何が見つかり、どんな処置へ進んだかも残せます。

なお、この例は、抜取で不良が出たら必ず全数検査へ移るというルールではありません。ロット保留、選別、再検査などの処置は、対象製品の基準と責任者の判断に従います。集計担当は処置の結論を作るのではなく、承認された検査の結果を混同せず報告する役割と考えてください。

架空例3:外観100個と寸法20個は、検査項目も違う

次は、検査項目が違う場合です。同じ100個のロットを外観で全数検査して不良2個、その中から選んだ20個を寸法検査して不良1個だったとします。結果は外観2%、寸法の標本内5%と、項目ごとに残します。同じ品物に両方の不良があるか分からなければ、足し合わせて不良品が3個と決めることはできません。

たとえば「2+1」を「100+20」で割れば2.5%ですが、これはロット全体の総合的な不良率にはなりません。項目ごとに検査した範囲も、同じ品物の重なり方も違うからです。総合判定へ使う際は、どの品物をどの項目で調べたかを識別し、所定の基準に従って判定します。検査記録表へ残す項目を参考に、集計値から元の品物と検査へ戻れるようにしておきましょう。

月次集計では、元記録と範囲を担当者ごとに照合する

  1. 品質担当:集計したい目的を決め、品番・方法・項目・初回/再検査の区分を固定する。
  2. 検査担当:ロット数量と実検査数を別欄へ記入し、不良個数と検査結果を元記録へ残す。
  3. 集計担当:同じ区分を抽出し、転記の重複を除き、再検査を分けてから分子・分母を集計する。
  4. 照合担当:分母がゼロや未入力の区分は率を計算できない状態として示し、ゼロ%と区別する。月ごとの条件差も注記する。

担当者が上の順番で元記録と照らしたら、表のタイトルにも「9月・品番A・外観・初回全数検査」と範囲を付けます。数字だけを切り出しても、何を集計した結果かが伝わるためです。条件がそろわない記録は別々に並べるところから始め、同じ条件がそろった区分だけで比較したほうが良いでしょう。率を作ることより、分子と分母の元へ戻れることを先にそろえます。

自社の有料商品:検査数と不良数を記録する

S01「検査と手直し記録帳」/4,980円(税込)は、パソコンのブラウザーで検査数・不良数・手直し工数を残したい場合の選択肢です。指定期間の不良数合計÷検査数合計を表示し、CSVへ出力できます。ただし、表示される割合は入力した記録を集計したものなので、以下の区分の扱いも読んでから使ってください。価格・仕様の参照日は2026年10月4日です。

全数・抜取、初回・再検査、異なる検査項目を自動で同じ条件へそろえる機能はありません。そのため、区分と対象は元記録で管理し、分けた割合が欲しい場合は出力したCSVと元記録を照らして別集計します。この記事で示した区分別の集計表が、そのまま商品に付いているわけではありません。入力前に、同じ期間へ何を含めるかを決めておくと、表示された合計の意味を説明できます。

運用は単独端末・1タブを前提とし、記録はそのブラウザー内に保存されます。共有同期や自動バックアップはないので、JSONを手動保存し、別の保存先にも備えてください。CSVは集計用に取り出す形式で、復元用のバックアップにはなりません。WindowsのChromium系ブラウザーではローカルHTTP表示で記録・集計・保存・貼り付け復元を検証済みですが、直接起動の全機能、ファイル選択での復元、Mac、スマートフォンは未検証です。販売ページの検証範囲を読んだうえで、手元の記録から入力と書き出しを試すと良いでしょう。

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