AIで作業手順書のたたき台を作るときは、先に作業の範囲と、元になる現場の資料を用意します。AIへ作業名だけを伝えても、自社の設備や判断基準まで分かるわけではありません。この記事では、作業名・目的・対象者・始点と終点・例外と禁止事項・安全と品質の注意点という6点を入口に、原案を作り、人が実作業と照合して直す順番を説明します。
対象は、口頭で教えていた作業や、散らばったメモを手順書にしたい管理者です。文章を書く作業はAIに任せられますが、その文章を作業に使ってよいかは別の判断になります。まず次の表で、自社にどこまで資料があるかを見てください。
| 状況 | 最初の対応 | 原案と照合する内容 |
|---|---|---|
| 作業の流れが決まっている | 承認済みの工程順を資料として渡し、原案化する | 工程、分岐、注意点を元資料と照合する |
| 口頭説明しかない | 作業名、始点、終点、禁止事項を聞き取る | 担当者ごとの差と共通部分を分け、根拠を調べる |
| 新人が読める原案にしたい | 判断する箇所とその条件を明示して出力させる | 用語の説明、写真、図を加える箇所を選ぶ |
| 既存メモが散らばっている | メモを1つに集め、会社が認めた範囲でAIへ渡す | 重複、矛盾、旧版の候補を挙げ、人が採否を決める |
表の違いは、文章の書き方よりも、原案の根拠にできる情報がどこまでそろっているかです。口頭説明しかないなら、先に作業者へ聞く段階が残ります。資料同士が食い違う場合も、AIに片方を選ばせて終えず、どの手順が現行かを責任者が判断できるよう、出典ごとの差を残しましょう。
AIは完成品ではなく、手順書のたたき台を作る相手として使う
AIに任せるのは、渡した材料から見出しを付け、作業順に文章を並べ、読みにくい説明を書き直す作業です。ただし、資料にない工程や数値を補ってもらうと、もっともらしい原案に未承認の内容が混ざります。分からない部分は質問や未確定事項として残すよう、最初に指定してください。
この使い方なら、白紙から文章を組み立てる負担を減らせる可能性があります。一方で、原案の作成が早くても、作業条件や安全上の扱いを人が照合する工程は省けません。文章が完成した時点と、現場で使える版になった時点を分けて管理しましょう。
どの作業から文書にするか迷う場合は、少人数会社で業務手順を標準化する順番と着手基準で対象の選び方を見てください。手順書の範囲が決まってから材料を集めると、別の作業の説明まで混ざることを防げます。
AIに渡す材料を6点から集める
AIへ渡す材料は、作業名、目的、対象者、始点と終点、例外と禁止事項、安全と品質の注意点に分けます。この6点は材料を集める入口であり、これだけで全作業の条件が足りるという意味ではありません。使う道具、記録先、承認済みの基準なども、対象作業に合わせて加えていきます。
作業名と目的で、文書の外れを防ぐ
作業名と目的は、文書が扱う範囲を決めるために書きます。たとえば「出荷作業」だけより、「出荷前に注文数と今回数量を照合する」とした方が、説明する作業を絞れます。切断寸法を測る手順なら、寸法を決める業務まで含めず、どの承認済み資料と測定値を比べるかを明記しましょう。
対象者と使用場面で、難しさを合わせる
次に、誰がどの場面で読むかを伝えます。新人向けなら社内の略語や道具の場所の説明が要る一方、経験者が作業の途中で読むなら、動作と判断箇所を探せる形が向いています。単に「分かりやすく」と頼むより、読む人と使う場面を合わせて指定してください。
始点と終点を決めると、抜け工程が見えやすい
始点と終点には、その手順をどこから始め、何を終えたら次の担当へ渡すかを書きます。作業自体は終わっていても、記録や引き渡しが残る場合があるためです。前後の工程との境目まで示しておくと、原案に受け渡しが抜けていないかを後で比べられます。
例外、禁止事項、安全上の注意は後で足す前提にしない
例外、禁止事項、安全上の注意は、完成した文章へ付け足す飾りではありません。作業を止める条件や相談先が手順の進み方を変えるため、元になる社内手順や設備の資料と一緒に渡します。基準がまだ決まっていない箇所はAIに決めさせず、責任者の判断待ちとして分けてください。
元資料を集めるための入力テンプレート
入力の型を決めると、別の作業でも何を集めればよいかが分かります。ただし、同じ欄を埋めれば内容の正しさまでそろうわけではありません。各欄に何の資料や誰の説明を使ったかも残し、原案を直すときに元の情報へ戻れるようにしましょう。
紙のメモや口頭説明を使う場合は、作業ごとに集め、現行か不明な記述を区別します。複数の場所に散らばっているなら、現場のメモが散らばる原因と1本化のまとめ方の考え方も使えます。また、外部のAIへ渡す資料は会社が認めた範囲に限定し、取引先名や個人情報など、原案作成に関係しない情報を含めないようにしてください。
以下の欄を使い、分かっている内容と未確定の内容を書き分けます。空欄のままではAIが欠けた理由を判断できないため、「資料なし」「責任者へ照会中」など、現時点の状態まで書くと原案のレビューへつなげられます。
- 作業名
- 目的
- 対象者
- 使用場面
- 開始点
- 終了点
- 手順の流れ
- 例外と分岐
- 禁止事項
- 安全・品質上の注意
- 照合結果の記録先
たとえば最終外観検査を題材にした架空例なら、作業名、対象製品、見る人、検査の始点、記録を終える時点から書き始めます。ただし、この5点だけで検査手順を完成させてはいけません。承認済みの判定基準や不適合品の扱いがそろうまでは、その箇所を未確定として残します。
AIに出させる原稿は、1手順1行で読める形にする
出力する原稿は、1手順を1行または1段落に分けます。文章を短くすること自体が目的ではなく、今行う動作と、その後に進める条件を読み分けるためです。条件と動作が離れると誤読につながるため、短く区切っても対応関係は残してください。
見出しには、その工程で行う動作を入れます。「注意」だけでは、どこで立ち止まるかを探せません。作業の優先順位が人で違う場合も、AIに順番を決めさせるのではなく、社内で決めた順番と分岐を渡してから見出しへ反映します。
原案を依頼する際は、次のように書式を指定します。動作、分岐、禁止事項、記録先を読み分けられるようにし、短文化のために安全や品質に関わる条件を省かないことも伝えましょう。
- 1見出しは1工程にする
- 1文には1つの動作だけを書く
- 判断する部分は、照合対象と分岐条件を分けて書く
- 禁止事項は区別して示し、該当する動作と対応させる
- 記録する動作には、記入先も書く
この形にしておくと、レビューで「この動作の前に照合がある」「この条件では次へ進めない」と指摘する位置が分かります。直す際も、段落全体を曖昧に書き換えるより、対象の手順と、その前後のつながりを合わせて修正できます。
原案は、実際の作業順と新人目線の2軸で点検する
原案は、実際の作業順と、新人が読んだときの分かりやすさという2軸で見ます。ただし、未承認の原案をそのまま読みながら設備を動かす検証は避けてください。まず承認済みの手順や設備資料と机上で照合し、その後の現場での試行は責任者が条件を決めて行います。
作業順の照合では、使う道具、動作の前提、社内用語、例外時の扱いをたどります。新人目線では、読む人が対象物や判断先を特定できるかを見ます。注文変更が入る作業なら、どの指示が現行かを判別する手順も含め、通常の流れだけで終えないようにしましょう。
次の順番で、原案と元資料の差、読む人が迷う箇所、記録の受け渡しを点検します。読みやすさだけで合格にせず、元資料と違う内容や根拠のない追加がないかも同時に見てください。
- 原案を読み、承認済みの手順と実作業の順番に照合する
- 新人が初見で迷う箇所に印を付ける
- 例外時の連絡先や止め方を、元資料に基づいて補う
- 現場で使う用語に置き換える
- 記録先と保存先をそろえる
印を付けた箇所は、誰が何を根拠に直したかを残します。文章が滑らかになっただけでは、その手順で安全に作業できる根拠にはならないためです。修正後は前後の工程も読み直し、責任者が使用を認めた版と、検討中の原案を分けて置きましょう。
修正チェックリストで、抜け漏れを最後にもう一度ふるい落とす
原案のレビューが済んだら、工程、危険箇所、用語、図、記録先を最後に通して読みます。途中で一部を書き換えると、前の工程の説明や記録欄との関係がずれることもあります。修正箇所だけでなく、作業の始まりから終わりまでつながるかを点検する段階です。
次の表では、見る人と照合する資料を対応させています。たとえば工程の抜けは見出しを増やすだけでは直せません。元の手順にある工程かをたどり、前後の条件も含めて追加するという使い方をしてください。
| 点検項目 | 見る人 | 照合先 | 直し方の目安 |
|---|---|---|---|
| 工程の抜け | 管理者 | 実作業順と見比べる | 元資料の工程を前後の条件とともに追加する |
| 危険作業の記載 | 現場担当 | 注意事項欄 | 禁止事項を該当する動作と対応させて明記する |
| 用語の一致 | 作業者 | 現場で使う言い方 | 社内用語に置き換える |
| 写真・図で示す箇所 | 管理者と作業者 | 迷いやすい工程 | 判断点や向きが分かる図を追加する |
| 記録先の明示 | 事務担当 | 帳票や保存場所 | どこへ残すかを一文で書く |
写真や図は、対象物の向き、道具の位置、見る箇所が文章だけでは伝わりにくい場面に加えます。ただし、似た形の架空の設備図を、実際の設備の操作図として扱ってはいけません。現物と対応する画像を使い、図の表示と本文の手順が一致しているかを作業者と見比べましょう。
失敗しやすいのは、長さ・言葉・例外の3つ
原案で直すことが多いのは、長さ、言葉、例外の3つです。ただ短くする依頼を繰り返すと、判断条件まで消える場合があります。どこで読みづらくなったかを分け、それぞれに合う修正を頼みましょう。
長すぎる原案は、工程を分けて再依頼する
長い原案は、準備、作業、記録などの工程に分けて書き直してもらいます。ただし、工程間の受け渡しは最後に通して読みます。複雑な依頼を小さな作業へ分ける考え方は、OpenAIのHow do I create a good prompt for an AI model?でも説明されています。
現場用語と違うときは、言い換え表を作る
現場用語と違う場合は、原案の語と社内で使う語を対応させた表を渡します。同じ物を別の名前で書いているのか、実際に別の物を指しているのかで直し方が変わるためです。略語へ置き換えるときも、新人が初めて読む箇所には意味を添えましょう。
例外が抜けるときは、止める条件を先に書く
例外が抜けていたら、作業を止める条件と報告先を元資料から追加します。たとえば数量が合わない場面では、差を書き残すだけで先へ進めず、対象品の扱いを所定の手順に沿って責任者へ引き継ぎます。AIに「適切に対応」とだけ書かせず、誰が判断するかまで示してください。
自社の資料を添えて使うプロンプト例
修正の依頼は、原案を読んで分かった差ごとに行います。「もっと良くして」では、残したい条件まで書き換わることがあるためです。直す段落、根拠となる資料、変えてはいけない数値や条件を指定し、返ってきた版をもう一度照合しましょう。
以下は依頼文の出発点です。作業名や対象者だけを入れ替えて完成扱いにせず、自社で承認された資料と、まだ決まっていない内容を添えて使ってください。
「次の資料を使い、作業手順書のたたき台を作ってください。対象者、作業の始点と終点、禁止事項、安全・品質の条件は資料に従ってください。1手順1行を基本に、動作と分岐の関係が分かるように書いてください。資料にない工程や基準は推測で補わず、未確定事項と質問を分けてください。」と依頼します。
新人向けにする場合は、「社内用語の初出に説明を添える」「道具や帳票を特定できる書き方にする」と追加します。記入例も求められますが、実際の判定値と混ざらないよう、説明用の架空例であることを明示させましょう。安全や品質の基準を例の都合で作らせないことも条件に入れます。
原案を受け取った後は、次の依頼文から、見つかった問題に合うものを使います。複数をまとめて頼む場合も、どの変更を採用したかを人が読み分けられる形にしてください。
- 現場用語に直して書き直してください
- 資料と原案の差を挙げ、資料にない工程は質問として残してください
- 危険箇所の注意を区別し、該当する動作の前提も残してください
- 新人が迷う箇所と、その理由を別に挙げてください
- 記録先を最後に1行で入れてください
担当者によって方法が違う場合は、A案とB案を並べ、共通する動作と異なる条件を抽出してもらいます。ただし、AIが共通部分を選んだだけでは、正しい標準手順にはなりません。責任者が設備、製品、安全、品質の条件と照合して採用する方法を決め、その結果を原案へ戻します。
よくある質問
AIで作った手順書は、どこまで人が点検すべきですか?
人が見る範囲は、文章の誤字だけでなく、作業順、条件、使用物、例外対応、記録先までです。AIは渡した資料の欠落を必ず見抜くわけではありません。承認済みの資料と現場の実態を照合し、作業に使う版を責任者が決めてください。
既存のメモや口頭説明しかない場合、何から渡せばよいですか?
最初は、作業名、対象者、始点、終点、禁止事項の5点から聞き取ると、資料を集める範囲が見えてきます。ただし、それだけで完成させるのではなく、安全・品質の条件や例外時の扱いを追加します。口頭説明同士に差があれば、どちらを採用するか決まるまで差を残しましょう。
写真や図がない状態でもたたき台は作れますか?
文章だけでも原案は作れます。まず動作と判断条件を書き、対象物の位置や向きを言葉だけでは特定しにくい箇所へ印を付けます。その後で現物に合う写真や図を足すと、画像を増やす理由も明確になります。
複数の担当者でやり方が違うとき、AIにはどう書き分けてもらいますか?
共通する動作、条件による分岐、方法が食い違う部分に分けて出力させます。そのうえで、分岐の条件が根拠資料にあるかを責任者が調べます。担当者ごとの違いをすべて削るのでも、そのまま標準にするのでもなく、違いが生じる理由から扱いを決めましょう。
参考にした公式情報
依頼の具体化や出力形式、段階的な修正については、以下の公式情報を参照できます。これらはAIへの依頼方法の案内であり、自社作業の安全性や品質基準を保証する資料ではありません。Prompt engineering best practices for ChatGPT | OpenAI Help Center、How do I create a good prompt for an AI model? | OpenAI Help Center、Best practices for prompt engineering with the OpenAI API | OpenAI Help Center
まとめ
AIで手順書のたたき台を作るなら、まず6点を入口に元資料を集め、未確定の箇所を分けます。次に、1手順1行を基本として原案化し、人が実作業の順番と新人の読み方の両方から直します。最後は元資料との照合と使用する版の承認まで進めましょう。まずは範囲を区切れる作業を選び、どこからどこまでを文章にするかを書き出すところから始めてください。

