長く使われていない在庫は、動いた日、今後の使用・出荷予定、品質や仕様の判定という3点から候補を拾います。まず台帳と現品を照らし、対象ごとに判断者、実行担当、判断期限を記しましょう。材料、仕掛品、製品が離れた場所にある場合も、品番だけでなくロットや対象範囲をそろえると、どの在庫をどう扱うかを表計算とラベルで追いやすくなります。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 次に照らす記録と条件 |
|---|---|---|---|
| 台帳にはあるが、動いた日が不明 | 滞留候補として扱う | 現品・ロット・ラベルを照らし、日付不明を記す | 受入記録、工程記録、出荷記録、使用予定 |
| 使う可能性はあるが時期が未定 | 継続保管を仮決定しない | 使用先・時期を尋ねる担当と回答期限を置く | 仕様、品質、保管状態、次回判定日 |
| 仕様変更や品質懸念がある | 現場だけで転用・出庫しない | 対象品を識別して通常在庫と区分する | 品質・設計・営業と所有者条件などの権限者による判断 |
| 処置が決まっているのに残っている | 未処置案件として優先する | 未実施の処置と担当、完了見込みを照らす | 台帳反映、現品表示、完了日の3点 |
長期滞留在庫は「動きがない在庫」と「処置を決める在庫」を分けて管理する
動きがない期間は、在庫を見直す入口です。それだけで廃棄を決めるものではありません。長い周期で受注する補用品、調達に時間がかかる材料、再開予定の仕掛品などは、保管を続ける理由がある場合もあります。そのため、候補を抽出する段階と処置を認める段階を分け、使用見込みと品質・取引条件を照らしてから結論を出します。
判定日数は品目区分、受注周期、調達期間、保管条件に合わせて決めます。材料の最終払出、仕掛品の最後の工程進行、製品の最終出荷や製造完了などが起算の候補です。ただし、一部を使っただけで残りの古い在庫まで新しくなった扱いにはしません。ロットや入庫単位の古さ、使用期限も併せて見て、棚移動や台帳の修正で滞留日数をリセットしないようにします。
- 過剰在庫:使用見込みはあるが、使う量を超えて保有している在庫
- 滞留在庫:動きがなく、使用・出荷見込みと処置を調べる対象の在庫
- 通常使用を保留する在庫:品質・仕様・破損などの判定を待つ対象。経営上の不良在庫という呼び方とは分ける
継続保管を選ぶ場合は、使う予定とその根拠、保管責任者、次回判定日を残します。「いつか使う」だけなら、使用先や時期を尋ねる担当と期限を置きましょう。保管を続ける判断は、品質上の使用期限や取引先の条件を延ばす許可ではありません。保管中に状態が変わったときの連絡先も決め、次回判定日まで放置しない運用にします。
最終移動日と現物を照合して長期滞留候補を抽出する
候補を台帳だけで選ぶと、移動の未記録や所在違いを見落とすことがあります。在庫管理担当が一覧を作り、保管担当と品番、ロット、数量と単位、現品の状態を照らします。差異があれば、調査前に帳簿数量を現品へ合わせず、差異と調査担当を残してください。原因と承認を記録してから訂正することで、誤出庫や二重計上の経緯をたどれます。
- 台帳から品番・ロット・品目区分・数量単位・場所・受入日・移動日・製造完了日を根拠付きで出す
- 区分ごとに起算の定義を決め、棚移動と実際の使用・出荷を分ける
- 基準日以前の対象と日付不明分を候補にし、保管場所で照合する
- 現物数量と単位、荷姿の状態、識別、混載・混入を安全に調べる
- 台帳差異があれば発見日、差異、調査担当を記し、根拠と承認を得て訂正する
最終移動日という欄には、何の動きを記録するかを先に決めます。払い出し、工程進行、出荷を区別し、単なる棚替えの日と混ぜません。また、品番全体の最終日だけでなく、残っている対象ロットの履歴も見ます。生産進捗管理は表計算かシステムか|案件数で迷わない選び方も参考に、日付の根拠となる作業記録と、それを更新する担当を結び付けてください。
材料・仕掛品・製品ごとに照合する項目を変える
下の表は、品目ごとに誰へ何を尋ねるかを決めるためのものです。材料なら使用計画と仕様、仕掛品なら停止した工程、製品なら受注や補用品の見込みから調べます。製造担当の使いたいという意向だけでは可否が決まらないため、品質、設計、営業などの権限者も案件に応じて加えます。品質や取引条件が未判定なら、通常在庫へ戻さず使用を保留します。
| 区分 | 主な起算日 | 照合する内容 | 主な照合担当 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 対象ロットの最終払出日と受入履歴 | 今後の使用予定、共通材・代替材への転用、ロット・仕様、保管状態 | 生産管理、購買、品質 |
| 仕掛品 | 対象の工程が最後に進んだ日 | 停止工程、適用図面・工程・仕様、再開条件、所定の検査 | 製造、生産管理、品質、設計担当 |
| 製品 | 対象ロットの出荷履歴と製造完了日 | 受注・補用品の見込み、適用仕様、再出荷前の判定項目 | 営業、生産管理、品質 |
仕掛品は、数量に加えて、どの工程まで済み、なぜ止まったかを特定します。途中の状態が分からなければ、再開位置や再検査の範囲を決められないためです。口頭変更が関わるなら、口頭の変更依頼をその場で記録し反映まで追う方法も使い、依頼、合意、承認、指示へ反映した内容を分けて読みます。変更日が新しいというだけで現行仕様と決めないようにしましょう。
長期滞留在庫の処置を6つの選択肢から期限付きで決める
処置は廃棄か保管かの二択にせず、以下の6つから検討します。判断前に所有者や支給品・預かり品の条件も調べ、自社だけで処分できる対象かを明らかにします。処置を検討する人、最終判断者、実行担当は別欄にすると、どこで止まっているかを追えます。会議で決まらなければ、追加調査の担当と回答期限を置き、未判定のまま実行へ渡さないようにします。
- 継続保管:使用の根拠、保管条件、責任者、次回判定日を残す。使用期限を延ばす扱いにしない
- 転用:転用先、品質・仕様・所有者条件、承認者と在庫振替の記録を決める
- 手直し・再加工:所定の承認を受けた作業内容、検査、判定者、期限を決める
- 返却相談:相手先、条件、照会担当、回答期限を記す。承諾前に返送しない
- 売却相談:所有権、対象範囲、品質・取引条件、判断者と回答期限を明示する
- 廃棄:対象と所有者、所定の手続き、社内承認、数量・金額、実施結果と台帳反映を追う
返却可否や転用先を尋ねた後も、回答待ちを追う担当を決めます。期限が近づいたら連絡し、過ぎた場合は判断者へ上げて次の対応を決めましょう。次回会議は未了分をまとめて見る場で、そこまで追跡を待つものではありません。保留案件の見直しルール|回答待ちを放置しない管理表と運用方法を使う場合も、対象在庫の識別と使用保留を維持します。
長期滞留在庫 判定・処置管理表の記入例
管理表は、候補、判断、承認、実行、完了の根拠を追える構成にします。単価が分からなければ未判明と記し、数量、所在、滞留の根拠から調査を始める方法もあります。ただし、承認や会計処理で求められる金額情報を省く意味ではありません。処置完了日は実施と照合を終えた日を記す欄なので、予定日は別欄に置き、未完了のうちに日付を埋めないでください。
| 項目 | 材料の記入例 | 仕掛品の記入例 | 製品の記入例 |
|---|---|---|---|
| 品目・保管場所・数量 | 共通材料A/材料棚/数量を記入 | 案件Bの仕掛品/工程間置場/数量を記入 | 製品C/製品倉庫/数量を記入 |
| 滞留根拠 | 最終払出日:年月日 | 最終工程移動日:年月日 | 最終出荷日:年月日 |
| 使用見込み・照合結果 | 次回使用予定、ロット、保管状態 | 停止工程、図面変更、再開時の検査 | 引合い、適用仕様、再出荷前の判定 |
| 処置・担当・期限 | 購買が転用条件を照会し、品質等の権限者が判定/期限:年月日 | 製造・品質が手直し可否と再検査を判定/期限:年月日 | 営業が需要を調べ、所定の権限者が保管・売却可否を判断/期限:年月日 |
| 完了・原因 | 処置完了日/最小発注量など | 処置完了日/工程停止など | 処置完了日/受注変更など |
上の架空例を使うときは、品目区分、品番・品名、ロット、所有者、場所、数量と単位を追加して対象を特定します。金額、受入日、移動の根拠、判定日、使用見込み、品質・仕様、処置案、判断者、実行担当、期限、実施結果、発生理由を結び付けます。会議ごとに別の表へ写すより、同じ案件番号から更新履歴を追うほうが未処置分を引き継ぎやすくなります。
隔離表示と保管場所の区分で誤使用を防ぐ
候補品は、判断が終わるまで通常の使用対象と見分けられるようにします。安全な場所へ移せるなら区分棚を設け、移せない場合は場所と表示で区別します。ラベルには判定日、品番・ロット、数量、状態、担当と一覧の参照先を記します。品質未判定なら使用保留と明記してください。色だけに頼らず文字でも示し、移動の際も元の識別や保管条件を失わないようにします。
現場の表示には、その場で使用可否を判断する情報を置き、詳しい経緯は管理表へ結び付けます。ただし、法定表示や顧客・品質管理で定められた表示を減らすわけではありません。品番、ロット、保留理由、担当などの役割が重複する掲示から見直しましょう。工場の掲示物を増やしすぎない運用ルールも参考に、どの表示を読めば対象の状態が分かるかを決めます。
処置を決めた日は承認日として残し、実際に移動や廃棄を終えた日と分けます。決定だけで在庫を減らさず、実行時に現品、表示、台帳を対応させて更新します。同日に照合する運用を目安にしても、処理が続いている分は実行中と表示し、未反映の担当と期限を置いてください。棚から出たことだけで、返却先の受領や廃棄処理まで完了したとは扱いません。
月次または四半期の見直しで未処置の担当と期限を決める
月次や四半期の見直しは、在庫額を読み上げるだけでなく、未判明事項と次の担当を決める場にします。材料なら購買、仕掛品なら製造と品質、製品なら営業など、判断に関わる人を案件ごとに加えます。使用期限や品質上の懸念がある品目は、定例会議を待たずに対応します。金額の承認権限と品質の使用許可も分け、それぞれの根拠を一覧へ残しましょう。
- 会議前:新規候補、未処置、処置完了、在庫差異の4区分を更新する
- 会議中:処置、判断者、実行担当、期限の4項目を決め、未判明なら調査先も置く
- 実行後:実施結果に応じて表示・現品・台帳を照合し、根拠をそろえて完了日を記す
- 次回:実行中・未処置の案件を見直す。期限が来たものは会議を待たず個別に追う
案件が多い場合は、金額や数量だけで順位を決めません。保管スペース、品質上の懸念、使用期限、受注見込み、判断の遅れから、先に扱う対象を選びます。安全や誤使用のおそれがあれば、金額が小さくても処置を急ぎます。現場会議の決定事項を実行へつなげる管理方法も参考に、会議の結論を担当、期限、終わり方へ落とし込んでください。
発生原因を受注・設計変更・発注・工程停止に分けて再発を防ぐ
処置後は、在庫が残った経緯を元の受注、発注、工程の記録から振り返ります。「管理不足」とだけ書いても対策が決まらないため、先行手配、数量変更、最小発注量、工程停止などに分けます。ただし、早く分類するために原因を一つへ決めつけません。主な要因を根拠付きで選び、複数の要因や未判明の部分は補足して残します。
- 受注失注・数量変更:見込み段階の先行手配と確定受注を区別する
- 仕様変更:変更内容、対象在庫、発効日を記録し、関係部門へ連絡する
- 最小発注量・余剰生産:発注前に使う量、残量、次の用途を判断する
- 不良・工程停止:停止時に仕掛品の所在、工程、再開条件を引き継ぐ
- 所在不明:保管場所の登録と移動記録の方法を見直す
対策は、分かった原因と次に変える管理点を対応させます。口頭変更が関わったなら、受付の記録だけでなく、対象在庫へ変更を伝えたか、発注の取消しが反映されたかまで見ます。運用後は新しい滞留候補と、期限を過ぎても未処置の案件を追いましょう。判定日数を変えた場合は旧基準との違いも記し、件数が減っただけで発生が抑えられたと判断しないようにします。
よくある質問
長期滞留と判定する日数は、全品目で同じにすべきですか?
品目ごとに違う基準でも構いません。受注周期や調達期間、何の日を起算にするかが異なるためです。ただし担当者の感覚だけで選ばず、区分ごとの日数、起算の定義、例外理由、判断者を記します。基準を変えたら日付と理由を残し、変更前後の件数をそのまま比較しないようにします。品質の使用期限は、滞留を抽出する日数とは別に守ります。
最終移動日が記録されていない在庫は、どう見直しますか?
まず移動日不明と記し、受入記録、製造記録、棚卸し、ラベルなどの根拠を並べます。最も新しい日を勝手に最終移動日へ置き換えず、何の事実を示す日付かを残してください。暫定的に候補へ入れたうえで、担当が現品の状態と使用見込みを調べます。今回の処置と、今後の履歴の残し方を別に進めれば、分からない日付を作らずに調査を続けられます。
品質や仕様の判定を待つ材料・製品は、誰が使用可否を決めますか?
社内の権限に従い、品質や仕様を判定する担当者が可否を決めます。製造や営業の使用希望だけではなく、ロット、仕様、保管状態、検査結果、顧客の条件を照らします。未判明の条件があれば使用保留を維持し、通常在庫へ戻す許可と保管を続ける判断を分けてください。検査方法や基準もその品目に適用するものを使い、外観だけで使用可としないようにします。
廃棄を決めた在庫は、現品と台帳へどう反映しますか?
社内承認、対象数量、実際の引渡しや処理、台帳反映、その根拠を案件ごとに照らします。元の在庫履歴を削除せず、処置後の残数と記録を追える形にしてください。産業廃棄物の処理を委託しても排出事業者の責任は残るため、引渡しだけで完了とせず、環境省の案内(https://www.env.go.jp/recycle/waste/haisyutsu.html)と対象の手続きを担当者が調べます。会計処理は経理担当へつなぎます。
処置会議で決まらない案件は、どのように期限管理しますか?
保留には、未判明の条件、相手先、照会担当、回答期限を添えます。返却相談なら、相手が受け入れる条件と返答予定を記し、返却を依頼した事実と承諾を分けます。回答が来ない場合に判断を引き上げる相手も決めておきましょう。次回会議で一覧を見直す間も、期限が来た案件を個別に追い、ラベルの保留表示を外さないようにします。
まとめ
最初は、台帳の履歴と現品を照らし、ロットや所在を特定した候補一覧を作りましょう。次に、使用見込みと品質・仕様、所有者や取引条件から処置を検討し、判断者、実行担当、期限を決めます。実行後は現品と台帳を照合して根拠を残し、継続保管は次回判定へつなげます。滞留日数だけで処分を決めず、なぜ残ったかを元の受注や発注へ戻って見直すことが、次の発生を減らす一手になります。

