実際にかかった時間を残して比べるならストップウォッチ、決めた時間が過ぎたことに気付くためならタイマーを使います。まずは一工程を選び、何を始めた時点から何を終えた時点まで測るかを一文にしましょう。作業、設備待ち、中断を区別すると、単に「遅かった」で終わらず、置き場や手順、担当の割り当てのどこを見直すか考えやすくなります。
| 現場の状況 | 判断 | 最初の対応 | 続けて記録すること |
|---|---|---|---|
| 組立・検査の時間が回ごとに違う | ストップウォッチを使う | 同じ条件で複数回測り、回ごとの時間を記録する | 最長・最短になった回の理由 |
| 加工・冷却などの終了を逃したくない | タイマーを使う | 開始合図、通知後に照合する条件と担当を決める | 対応時刻と遅れた理由 |
| 待っている間に別作業へ移る | 両方を併用する | 実績はストップウォッチ、終了通知はタイマーで扱う | 別作業へ移れる条件、戻る担当と対応漏れ |
| 電話・材料不足・照会への対応で止まる | 中断を別に記録する | 中断開始・再開の時刻と理由を残し、計測方法に応じて作業時間と区別する | 中断の頻度と発生しやすい場所 |
タイマーとストップウォッチは「記録」と「知らせる役割」で分ける
道具を選ぶ前に、測った後に何をしたいかを決めます。ストップウォッチは、開始からの経過時間を読む道具で、組立、検査、段取りの実績や回ごとの差を比べる用途に向きます。ただし、時間だけでは比較条件が分からないので、工程、品物区分、数量、作業方法と一緒に記録しましょう。
タイマーは、設定時間の経過を知らせます。加工状態を見る、乾燥状態を判定する、定時点検へ向かうといった行動のきっかけになりますが、鳴ったことが加工や乾燥の完了を証明するわけではありません。担当者が所定の条件を照合し、対応した時刻と結果を残すところまで決めます。
実績と通知の両方を使う場面もあります。たとえば、設備が動いた実時間を記録しつつ、予定時刻に担当者が戻るための通知を設定する方法です。冒頭の表は、どちらを使うかを目的から選ぶ例になっています。なお、待ち中に別作業へ移れるかは工程の監視・安全条件に従い、タイマーがあるから無人にできるとは考えません。
作業・待ち時間・中断はこの順で分けて判断する
ここからは、測る時間の分け方を決めます。人が作業した時間、設備や材料を待った時間、予定外に中断した時間を混ぜると、長くなった理由が見えにくくなります。下の順で目的と記録先を決めましょう。同じ待ちを待ち欄と中断欄へ記した場合も、理由の記録と時間の計上を区別して、合計へ二度足さないようにします。
- 後で回ごとの実績を比べたい時間なら、ストップウォッチで測り、記録表に残す。
- 所定時間後に状態判定などを行うなら、担当と条件を決めてタイマーで知らせる。
- 実績の把握と予定時刻の通知を両方行うなら、ストップウォッチとタイマーを併用する。
- 途中で止まった場合は、中断開始・再開時刻と理由を別欄へ記し、作業実績と区別して集計する。
開始と終了は、別の人でも見分けられる動作にします。たとえば開始を「部品を手に取った時」、終了を「完成品を所定箱へ置いた時」と決める方法です。設備時間なら「加工開始ボタンを押した時」など、その対象に合う合図を使います。同じ名称の工程でも測る範囲が違えば比べられないため、記録表の上部へ書いておきましょう。
ストップウォッチは一工程を複数回測ってばらつきを残す
最初は一人が担当する組立一回分、検査一個分、段取りの一部分など、困っている範囲から始めると記録しやすくなります。工程全体だけを測ると、探した時間や取り直した時間が埋もれるためです。全体の時間も知りたい場合は、工程全体の経過と、その中の動作の記録を対応させ、同じ時間を重ねて合算しないようにします。
一回ごとに開始・停止する方法なら、各回の値をそのまま書けます。一方、連続する短い動作では、時計を止めずに区切りの時刻を読み、前の値との差を取る方法もあります。日本IE協会の時間研究でも後者の継続法が紹介されています。どちらでも、区切りと記入欄を先に決め、測定のために安全な動作や検査を急がせないようにしましょう。
比べる回は、品物、方法、数量、設備条件をできるだけそろえます。一回の値を標準にせず、複数回の最短、最長、通常時の値を理由と一緒に並べます。手直しや材料不足、照会待ちがあった回も削除せず、発生時刻と内容を添えて区別してください。条件の違う回を分けることと、都合の悪い値を消すことは別です。
観測を始める前には、工程のやりにくさや待ちを探す目的を作業者へ伝えます。速さだけで個人を評価する使い方にすると、測定中だけ無理な動作になるおそれがあるためです。作業手順や品物の条件を変えたら、変更日と内容を追記し、変更前後の記録を分けて比べましょう。
タイマーは鳴った後の判定と記録をセットにする
タイマーでは、開始する合図、鳴った後に対応する人、結果の記録先を一組で決めます。加工開始に合わせて設定したなら、通知後に担当者が完了表示と所定の条件を照合し、安全な停止・取り出し手順へ進む流れです。単に時間が来たから手を入れたり、次工程へ渡したりせず、作業指示と設備の安全手順を優先します。
通知後に見る項目は、工程で定めた外観、温度、完了表示、数量などをもとに決めます。短く書く場合も、品質・安全上の条件を省く理由にはしません。設定時間を変えると加工や乾燥などの条件に関わる場合は、権限者の判断を受けて作業指示へ反映します。鳴った時刻と、条件を満たして次へ進めた時刻も分けて残しましょう。
すぐに対応できなかったら、終了予定時刻、実際の対応時刻、遅れた理由を記します。「別工程の対応中」「通知に気付かなかった」のように事実を残すと、兼務の量と通知の届き方を見直せます。ただし、遅れが品質や安全へ影響する工程は、後で記録すれば済むものではありません。代行や保留を含む対応を、あらかじめ工程責任者と決めます。
騒音のある場所では、音以外の表示や光、振動なども候補にして、実際の作業位置で気付けるかを試します。複数の待ちがある場合は、対象物、開始、終了予定、担当を札や記録表で対応させましょう。通知を止める前にどの対象かを照合し、担当交代時も動作中・対応待ちを引き継ぎます。
10回測定用の時間測定記録表と記入例
時間を改善につなげるには、測定前に条件を書き、測定中に値と出来事を残し、測定後に理由を読む流れを作ります。下の表は、そのために用意する欄の例です。測定担当は回数と中断、工程責任者や改善担当は気付いた点と次の試行を記します。計測器や筆記具も、作業や避難の通り道を塞がない近くの場所へ用意しましょう。
| 記録項目 | 記入例 | 記入ルール |
|---|---|---|
| 日付・工程・品物区分 | ○月○日/組立A/区分1 | 比較する記録では同じ区分を使う |
| 測定担当・作業者区分 | 測定:担当A/作業:区分A | 個人評価ではなく、比べた作業条件が分かるように記す |
| 開始・終了の合図 | 部品を取る→完成品箱へ置く | 測定途中で基準を変えない |
| 待ち時間 | 設備運転:開始○時○分/予定○時○分 | 作業と待ちを分け、全体の経過を集計する際も重複計上しない |
| 中断・異常・気づき | 部品補充待ち/置き場を見直す | 開始・再開時刻と理由を添える |
| 次の試行 | 部品箱の位置変更後に再測定 | 実施担当者と再測定日を残す |
続く表は、組立工程を10回測る際の記入例で、掲載値は実績ではありません。各回の作業時間を記し、手直しや中断があれば理由を添えます。部品補充待ちを待ち時間欄へ記した回は、中断欄には同じ出来事の説明を残し、その待ちを二度加算しません。「なし」と未計測・不明も区別し、欄が空いているだけで待ちがなかったとは判断しないようにします。
| 回数 | 作業時間 | 待ち時間 | 中断・異常・気づき |
|---|---|---|---|
| 1 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 2 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 3 | ○分○秒 | ○分 | 部品補充待ち。開始・再開時刻を記入 |
| 4 | ○分○秒 | なし | 工具を取り直した |
| 5 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 6 | ○分○秒 | なし | 照合をやり直した |
| 7 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 8 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 9 | ○分○秒 | なし | 通常 |
| 10 | ○分○秒 | なし | 通常 |
設備加工の記録例なら、「対象:加工品A」「開始:○時○分」「終了予定:○時○分」「実際の対応:○時○分」「判定材料:完了表示と所定条件」「遅れの理由:別工程対応中」と書けます。この行は組立の行と分け、同時に進んだ時間を経過時間へ二重に足さないようにします。別作業へ移れる工程なら、戻る担当と、予定に対応できなかった場合の扱いも決めておきましょう。
測定値は最初に3つの差を見ると改善テーマを選びやすい
測定後は平均だけで判断せず、最長と最短になった回を比べます。部品を探した、工具を取り直した、照合をやり直したなど、差の理由を記録へ戻って調べましょう。最短値をそのまま目標にすると、偶然条件が良かった回や無理な動作を基準にするおそれがあります。値と出来事を一緒に読むことが、直す場所を選ぶ手掛かりになります。
次に、手を動かせず待った時間と、作業中の探す・取り直す動作を分けます。待ちなら前工程との受け渡しや担当、探す動作なら置き場や表示の見直しが候補です。通知を付けても材料そのものの到着が早まるわけではないため、理由に合う手を選びます。工具探しが目立つ場合は、工具シャドーボードの作り方|戻し忘れを防ぐ定位置管理も参考になります。
変更案を試したら、同じ品物区分、数量、方法、設備条件で再測定します。変えた内容と日付、再測定の回数を残し、時間以外の品質や安全、負担も工程責任者が評価してください。検査を省いたり、無理な姿勢になったりして短くなった値を改善成果とは扱いません。条件をそろえられない場合は、その違いを付けて別に判断しましょう。
測定した時間を見積用の工数へ換算する場合
当メディアの有料商品:町工場の工数・原価見積|Excelテンプレート(3,980円・税込)
測定結果から見積に使う想定工数を自社で決めた後、金額計算へ進むためのExcel表です。段取りと1個あたりの作業工数を分け、数量、時間単価、材料費、外注費、間接費率、目標粗利率から税抜見積額を計算します。測った時間を入れれば標準工数が自動で決まる商品ではありません。ばらつきや作業条件を検討する記録は、本文の表などで先に残しておきます。
入力単位は経過時間ではなく、延べ「人・分」です。たとえば2人が各10分使った段取りなら20人・分になります。無人の設備運転や別の仕事をした時間を、そのまま当該作業の工数へ足さないようにしましょう。一方、監視などで担当者が拘束される待ちは無人運転と分け、どこまで見積へ含めるかを自社の工数・単価の基準で決めます。
入力用と記入例は各100行で、材料費・外注費には1件全体の合計額を入力します。計測器からの自動取込、消費税計算、工程別の費用配賦、会計処理は含みません。同じ費用が時間単価と間接費などへ重複して入らないかも、入力前に自社の基準へ照らしてください。価格と利用条件は2026年10月4日の販売ページを参照しています。
Windows版Excel 16.0では入力・計算・保存後の再読を検証済みです。Mac版Excel、Googleスプレッドシート、実際の現場運用と印刷は未検証です。更新は手作業で、社内の編集担当を1人に決めます。行の追加・削除や同時編集は対象外で、計算欄も保護されていないため上書きせず、説明書と記入例を読んでコピーへ入力してください。
測定した時間を見積へつなげる手順
ここまでの測定記録を加工費へ使う場合は、人の時間と機械の時間、各単価に含む費用を対応させます。機械が動いた時間を人の時間へ一律に加えると、同時に別作業をしていた分まで重複し得るためです。以下の記事を参考に、時間の区分と費用の内訳をそろえてから見積へ移りましょう。
計測器を使い続けるには担当と戻し場所を固定する
記録を継続するには、道具の置場と、使える状態を保つ担当を決めます。計測器、用紙、筆記具の持出先と返却先を示し、改善担当は用紙と見直し日、工程責任者は電池、故障、表示の見やすさを扱う分担もひとつです。別の人でも同じ範囲を測れるよう、開始・終了の合図も用紙と一緒に置きます。
下のチェックリストは、測定開始日と工程変更後の初回測定日に使う例です。記録表の余白や工程の共有先へ実施結果を残し、未決定の条件は担当と対応を決めてから始めます。印を付けること自体ではなく、異なる担当でも同じ条件を再現できるかを見るために使ってください。
- 対象工程、開始・終了の合図、測定回数が記録表に記入されている。
- 計測器の戻し場所、持出担当、電池切れや故障を点検する担当が決まっている。
- タイマーが鳴った後に照合する条件、対応担当、結果の記録先が決まっている。
- 中断後は、対象物と記録、時計の動作中・停止中を照合してから再開する。
- 工程、置き場、担当、計測方法を変更した場合、変更日と内容を記録している。
- 測定終了後に記録表を保管し、次の見直し日と担当者を記入している。
中断後に対象や計測状態を取り違えやすい工程では、作業中断後の再開ミスを防ぐ5点確認手順も組み合わせられます。途中で止めた時計か、動かしたままの時計かを見分け、元の記録へ続けましょう。通知、表示、耐環境性、操作方法は機器ごとに異なるので、購入前に作業場所の条件と説明書を照らします。
よくある質問
ストップウォッチで測った時間は何回分あれば改善の判断に使えますか?
10回は記録表を使い始める区切りの例で、十分な回数を保証しません。同条件で複数回測り、長い回、短い回、中断した回の理由を追えるかを見ます。品物や担当、日による条件差が大きいなら、目的に合わせて対象と回数を追加します。標準工数や目標の決定は、観測値を集める作業と分けて行いましょう。
作業者ごとに時間が違うとき、平均だけを比べてもよいですか?
平均だけでは、作業方法、経験、部品配置、手直しの有無による違いが隠れます。作業者区分は条件を比べるために使い、個人の速さの順位付けにしない運用を共有します。まず測定範囲と品物区分をそろえ、長くなった場面へ戻って原因を探しましょう。条件の違う集団を混ぜた平均で改善の有無を決めないようにします。
タイマーが鳴ってもすぐ対応できない工程は、どう記録しますか?
終了予定と実対応の時刻、遅れた理由を分けて記録します。遅れが繰り返されるなら、兼務の量、代行の担当、通知や対象札の見やすさを見直しましょう。品質条件を外れた可能性がある物は、遅れ時間だけを記して流さず、工程責任者へ渡して扱いを決めます。
スマートフォンの計測機能を使う場合、何を決めるべきですか?
まず現場での端末使用が認められているかを確かめ、通知、充電切れ時の代替、記録の共有先を決めます。作業や運搬中に画面操作を加える使い方は避け、所定の安全な位置で扱いましょう。端末内だけに値を残すなら引継ぎが途切れない方法を用意し、転記する場合は工程名、時間、中断理由を元データへ照らします。
参考にした公式情報
時間研究の考え方と、使用する計測器の操作を調べる入口として、以下の資料を挙げます。観測した時間と標準時間の決定、通知と工程の完了判定は分けて考えてください。測定の範囲や機器の扱いは、自社の作業指示と対象機種の説明書へ合わせます。
まとめ
まずは一工程で、開始と終了の合図を一文にしましょう。回ごとの実績を比べたいならストップウォッチ、予定時刻の対応漏れが悩みならタイマーを選び、両方を使う場合も記録と通知の役割を分けます。測定後は長くなった理由から一つ対策を選び、同じ条件で再び測ります。短くすることだけを目標にせず、品質と安全を保ちながら、待ちや探す動作を減らせるかを見てください。

