不良品の隔離ルールは、『発見したらすぐ分ける』『良品と物理的に離す』『誰が見ても分かる表示を付ける』の3点から考えます。というのも、発見した人が不良だと分かっていても、次に扱う人へその状態が伝わるとは限らないためです。置き場に加え、移す担当と処置を判断する担当まで決めておきましょう。
下の表は、発見時と、その後の処置を分けて読むためのものです。まず良品として使われない状態にし、品名や数量とともに判断待ちの理由を残します。ただし、重量物や危険を伴う品を無理に運ぶという意味ではありません。所定の安全手順に従い、その場での区画や表示も含めて混入を防いでください。
| 状況 | まず行うこと | 続けて行うこと |
|---|---|---|
| 不良品を見つけた直後 | 所定の手順で良品と分け、使用や払い出しを止める | 品名・数量・発見日を記録する |
| 判定がまだ終わっていない | 保留品として別区分に置く | 判定者と期限を表示する |
| 再加工の指示が出た | 再加工品として管理する | 再判定と解除の条件・担当を決める |
| 廃棄待ちになった | 他の品と混ざらない場所へ移す | 廃棄承認と数量を照合する |
不良品の隔離ルールで最初に決める5項目
隔離ルールを作る際は、現場で実際に品物が動く順に決めると、抜けている役割を見つけやすくなります。『不良品を別にする』だけでは、どこへ置き、誰へ連絡し、何を待つのかが決まりません。担当者が替わっても続きから扱えるよう、現物と記録の両方に行き先を作ります。
最初に決めるのは、置き場所、区分、表示、移動責任、誤混入時の対応の5つです。次の項目を自社の棚や帳票と対応させ、担当名や場所まで書いてみてください。誤って戻したときの連絡先も、発生後に探すのではなく、この段階で決めておきます。
- 不良品を置く場所を1か所以上決める
- 不良品、保留品、再加工品を分ける
- 表示の書式を統一する
- 誰が移し、誰が処置と解除を判断するか決める
- 誤って良品側へ戻したときの手順を決める
この5点が決まったら、実際の品物を想定して、発見から保管先までたどってみましょう。たとえば担当が不在なら、誰へ引き継ぐのか、判断が付くまでどこで待つのかも分かる形にします。長い説明を掲示するだけでなく、棚札と隔離票に同じ区分が書かれているところまで合わせてください。
小規模工場で混入が起きる典型パターン
混入のきっかけは、隔離場所がない場合だけではありません。専用棚があっても、そこへ移す前の仮置きや、処置後に戻す場面で状態が伝わらなければ、通常品と一緒に扱われるおそれがあります。自社の動線を調べる際は、この途中の受け渡しにも目を向けます。
次の例では、発見者の意図と、後から来た人の受け取り方が食い違っています。『あとで見るつもりだった』という説明は、その場にいなかった人には届きません。そのため、仮置きにも区分と担当を表示し、口頭の依頼は対象品を追える記録へつなげます。
- 一時置き場に置いたまま、別担当が良品と判断して動かしてしまう
- 表示がないため、後工程で通常品と同じ扱いになる
- 「あとで見る」という口頭指示だけで記録が残らない
- 保留品と不良品が同じ棚にあり、判断済みか未判断か分からない
- 人手不足の時間帯だけ、隔離時の表示や連絡が省略される
こうした場面があったら、個人への注意だけで終わらせず、どの受け渡しで状態が見えなくなったかをたどります。表示が隠れたのか、箱を共用したのか、戻す指示が残っていなかったのかで、直す場所は変わります。実際に迷った箇所をもとに、次の置き場と表示を決めていきましょう。
不良品の置き場所はどう決めるか
隔離場所は、良品の流れから分かれていて、誤って持ち出しにくい位置を選びます。単に遠ざけるだけでは、移動の途中で仮置きが増えたり、表示が見えなくなったりすることがあるためです。空いている場所から選ぶ前に、保管量、通路、搬送方法を現場で照らし合わせてください。
棚、箱、パレット、台車は、品物の大きさと移動頻度に合わせて使い分けます。下の表は選び方の例です。どれを使っても、良品用と兼用せず、容器が移った後にも隔離中だと分かる表示を付けることは共通します。
| 置き方 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 棚 | 品番ごとに分けたいとき | 上下段ごとの区分と対象を表示する |
| 箱 | 小物や少量の不良品 | 箱の見た目だけで判断しない |
| パレット | 数量が多い、重い品 | 床置きと区別できる場所にする |
| 台車 | 短時間の移動が多い | 長時間の仮置きにしない |
表のパレットは、品物を通路や作業場の空きへ直接置くこととは区別してください。床面を使う場合も、指定区画と表示を設け、荷崩れや通行の妨げにならない置き方を決めます。棚へ載せれば解決するとも限らないため、重量や寸法に合う保管方法を所定の担当者と選びます。
説明用の記入例なら、『不良品置き場は仕上げ工程の外側、良品ラック背面の指定区画、黄色ライン内』と場所を示せます。ただし、背面で表示が見えないなら、その位置は見直します。色や方角だけで場所を伝えず、棚番号や見取り図も使い、初めて扱う人が到達できるかを試してください。
ラベル・表示で必ず入れる情報
表示には、その品が何で、今どの状態にあり、次に誰が扱うかを載せます。赤い札が付いているだけでは、不良確定なのか、判定を待っているのかが分からないからです。色は補助として使い、区分と処置の状態を文字でも読み分けられるようにします。
品名・品番・数量、発見日、担当者に加え、不良品、保留品、再加工品の区別と、処置を待つ理由を書きます。数量がまだ分からないなら、推測値を確定値のように書かず、調査中の範囲と数える担当を残してください。表示を埋めることより、現時点で言えることを伝えるのが先です。
次はラベルの項目例です。次の対応欄には、予定している処置と承認済みの指示を区別して書きます。再加工や廃棄という言葉があるだけで、そのまま作業を始められる表示にしないようにしてください。
- 区分:不良品/保留品/再加工品
- 品名・品番:記入
- 数量:記入
- 発見日:記入
- 担当者:記入
- 処置理由:キズ、寸法外れ、判定待ちなど
- 次の対応:隔離、再検査、再加工、廃棄の予定・承認状態
項目の並びを固定すると、受け手は品番、数量、状態を同じ順で読めます。さらに隔離票の番号やロットを付けておけば、詳しい不具合内容を別の帳票へ残す場合も結び付けられます。ラベルだけへ長文を詰め込むより、現物から処置記録へたどれる形にすると扱いやすいでしょう。
発見から隔離までの運用フロー
置き場所と表示が決まったら、発見から移動までの担当をつなぎます。発見者が責任者を探している間に品物が通常工程へ進むようでは、隔離場所があっても機能しません。最初に使用や払い出しを止める対象と、連絡後の引き渡し先を決めておきます。
発見者は所定の停止・報告を行い、対象品が良品と混ざらない状態にします。その後、責任者が区分と処置を判断し、指定した担当が安全に移して所在を記録します。危険時の停止や退避は返答や記入を待たず、移動が難しい場合は現位置での区画と表示を含め、所定の手順に従ってください。
| 段階 | 担当 | やること | 記録先 |
|---|---|---|---|
| 発見 | 発見者 | 良品から分ける | 不良票または日報 |
| 区分の判断 | 責任者 | 区分を決める | 隔離票 |
| 移動 | 担当者 | 隔離区画へ移す | 置き場台帳 |
| 解除の判断 | 責任者 | 処置結果と解除条件から、再投入の可否を決める | 処置記録 |
表は役割を分けて示していますが、記録は移動後にまとめて思い出すものではありません。発見時の状態と数量を残し、移動したときに行き先を更新します。また、暫定保管する箱や置き台を良品と共用せず、短時間でも区分と担当の表示を付けてください。
判定前の品は通常工程へ戻さず、処置の結果と戻す条件がそろうまで保留します。責任者の口頭の返事だけで動かすのではなく、対象と数量、判断内容、判断者が記録で対応している状態にしてください。表示の付け替えと記録の更新を終えてから、所定の行き先へ渡します。
判定待ち品・再加工品・廃棄品を混ぜないルール
判定待ち、再加工待ち、廃棄待ちは、次に行う作業が違います。見た目が同じでも、同じ扱いにはできません。そのため、状態ごとに置き場と表示を分け、どの指示が出るまで動かせない品なのかを読み取れるようにします。
判定待ち品には判断者と期限を付けます。ただし、期限は放置を防ぐためのもので、過ぎたら良品へ戻せるという意味ではありません。再加工品は指示に沿って作業した後も再判定と解除の手順を経て扱いを変えます。廃棄待ちは承認と対象数量を照合し、通常工程へ戻さない区分で管理してください。
- 判定待ち品は、判断者と期限を明示する
- 再加工品は、再作業の指示書と一緒に管理する
- 廃棄品は、良品や保留品と同じ棚に置かない
- 戻し条件は、誰が見ても同じ意味になる表現にする
置き場が狭くても、空いた棚へその都度移すと、記録した所在と現物が離れてしまいます。棚番号と区分を決め、移動時には所在も更新するほうが追いやすいでしょう。色分けを使う場合も文字を併記し、ラベルが隠れる積み方になっていないかを見てください。
少人数でも記録と判断の役割を分ける方法
少人数でも、記録する役割と処置を判断する役割は読み分けられるようにします。単に担当人数を減らすと、自分の処置を自分だけで完了とする流れになるおそれがあるからです。兼務する場合も社内の承認規定を守り、不在時の代行者を決めておきます。
発見者は一次記録を残し、権限のある責任者が区分と次の処置を決めます。引き継ぐときは未処置品の数量、所在、期限を現物と照合してください。前の担当が持つ口頭情報を待たずに続きへ進めるよう、隔離票と日報などの記録を対応させます。
下の担当分担は、役割を決めるための記入例です。肩書きだけで割り当てず、実際に移動できる人、処置を承認できる人を自社の規定で指定してください。引き継ぎ先にも、判断を待つ品の扱いを伝えます。
- 発見者:品名、数量、発見時刻を記録する
- 班長または責任者:区分と次の対応を決める
- 保管担当:隔離区画へ移し、置き場所を記録する
- 引継ぎ担当:未処置品の数量・所在・期限を現物と照合する
記録の入口を1か所にすると、未処置品を探しやすくなります。ただし、紙の不良票や日報をすべて同じ帳票へ写すという意味ではありません。どれを正式な処置記録とするかを決め、票番号やロットで他の記録を結び、転記する場合は数量と状態の食い違いを調べます。
隔離ルールを現場で点検するチェックリスト
ルールを決めた後は、棚や表示がその内容どおりに使われているかを点検します。文書に担当名があっても、実際の勤務時間にその人が不在なら、判断待ちの品は止まったままです。実際の作業場で、発見から処置の記録までたどれるかを見てください。
次の一覧は、その点検で見る項目です。月1回は頻度の例であり、工程変更や置き場変更があれば、使い始める前にも見直します。項目へ印を付けるだけでなく、使う棚札や帳票を横に置き、どの記載で運用しているかを示せる形にしましょう。
- 不良品の置き場所が1か所以上、具体的に決まっている
- 保留品、再加工品、廃棄品の区分が分かれている
- ラベルの記入項目が固定されている
- 発見者、処置の判断者、保管担当の役割が分かる
- 判定前の再投入禁止が明文化されている
- 置き場台帳または不良票の記録先が決まっている
- 変更時の周知方法が決まっている
- 見直し頻度が決まっている
抜けが見つかったら、ルール文だけでなく棚札、ラベル、帳票の3点を合わせて直します。たとえば区分名を変えたのに箱の札が旧名のままなら、受け手が迷う状態は残ります。適用する時点と周知先を決め、現場で新しい表示が使われるところまで進めてください。
ルールを定着させる見直しポイント
運用後の見直しでは、決めた手順が守られなかった理由も調べます。棚が遠い、容器が足りない、担当不在時の連絡先がないなど、文書だけでは分からなかった支障が見つかることがあります。置き場や人員配置が変わった際も、以前のルールをそのまま当てはめないようにします。
混入の有無に加え、仮置きした場面、読めなかった表示、判断が遅れた品を記録して比べます。事故や不具合がなかった日でも、運用がうまく回っていたとは限らないためです。変更するときは口頭連絡で終えず、適用前に棚札と帳票を合わせ、新人や応援者にも伝えてください。
- 混入や戻し忘れが起きた箇所を記録する
- ラベルの記入漏れが多い項目を見直す
- 隔離区画までの動線と途中の仮置きを調べる
- 新人や応援者向けの説明を再実施する
- ルール変更時は、現場掲示と帳票を同時に更新する
繰り返し迷う箇所は、文章を足すだけで解決できるかを考えてみましょう。たとえばラベルが荷物の裏に隠れるなら、説明文より貼る位置を直すほうが課題に合います。誰がどこで迷ったかという記録から、置き方、表示、引き継ぎのどれを変えるか選んでください。
隔離票を後から追えるようにするには、品質記録の保管場所と命名ルールの決め方も参考になります。また、隔離した材料を使える在庫へ含めない扱いを決めたうえで、補充の判断には欠品を防ぐ材料発注点の決め方と運用手順を使ってください。
よくある質問
不良品と保留品は同じ場所に置いてもよいですか
保留品は良否を判断する前、不良品は基準から外れると判定した後という違いがあるため、混ざらない区画と表示で分けます。場所の制約で近くに置く場合も、棚や容器を共用して区分が分からなくならないようにしてください。どちらも、置き場へ入れたことだけで処置や出荷が認められるものではありません。
専用の不良品置き場がない場合はどう決めればよいですか
良品の流れと交差しない場所を1か所決め、指定した区画や容器を専用扱いにします。通路や共用の作業台を空いているからと使わず、品物の大きさと搬送の安全も踏まえて選びます。仮置きの期限と担当を表示し、期限までに処置が決まらないときの連絡先も決めてください。
ラベルにどの項目を入れればよいですか
区分、品名・品番、数量、発見日、担当者、次の対応の6点を基本に、処置待ち理由と記録の参照先を付けます。書けない欄がある場合は空欄を推測で埋めず、調査中だと示して担当へ引き継ぎます。同じ並びの書式にすれば、次の担当も探す項目をそろえやすくなります。
不良品を一時的に作業台へ置くのは許されますか
時間が短いことだけでは、混入しないとはいえません。暫定保管を認めるなら、所定の手順で指定した区画や専用容器を使い、良品と共用せず、状態と担当を表示します。区別できる場所がない場合は通常品の流れへ置かず、責任者へ保管方法の判断を求めてください。
再加工品は不良品と分けるべきですか
再加工の指示が出た品は、判定待ちや廃棄待ちと区別します。というのも、再加工品には実施する作業と、その後に受ける判定があるためです。作業が終わっただけで良品へ戻さず、所定の検査と解除の判断を記録してから、表示と行き先を変えてください。
まとめ
まず、保留品、再加工品、廃棄品の現在の置き方を見て、次の担当が状態を読み分けられるかをたどってみてください。区分が決まっても、仮置きや引き継ぎの途中で表示がなくなるなら、そこから直します。置き場所と移動する担当、処置を決める担当を対応させることが出発点です。
次に、棚や容器の表示、ラベルの書式、正式記録の入口をそろえます。記録の1本化は、現物の番号から処置内容へたどれる形を目指してください。運用後は混入の有無だけでなく、仮置きや判断待ちが長引いた場面も読み返し、置き方や連絡先を見直します。
場所を確保できる現場は専用区画から、狭い現場は状態ごとに分けた容器と表示から検討するとよいでしょう。いずれの場合も、期限や再加工の終了だけで良品へ戻さないことは共通します。解除条件を満たした記録と権限者の判断を、現物の表示へ反映してから次へ渡してください。

