射出成形で材料ロットを切り替えたときの残量記録

切替前、投入材料、切替境界の3欄を矢印で結ぶ図 生産・品質管理

材料ロット切替では、袋の残量と設備内の材料を分ける

新しい材料袋を開けたとき、日報へ「新ロットへ切替、残り5kg」とだけ書いていませんか。後で読む人には、その5kgが袋の残りなのか、設備内の量なのか分かりません。そこで、袋や容器の受払、設備への投入、製品ロットとの対応を分けて記録します。量の置き場所と、どの製品へつながる記録なのかを分けることで、次の担当者も元の出来事へ戻りやすくなります。

新ロットを投入した時刻だけでは、製品側の切替境界まで決まらない場合があります。旭化成も、成形機内部に残る樹脂や材料置換について説明しています。そのため本記事では、根拠のない区間を新ロットだけへ結び付けず、旧・新ロットの関与を調べる記録方法を提案します。洗浄やパージの方法・量は、設備と材料に対応する承認済みの手順に従ってください。旭化成:成形機内部の残留樹脂に関する説明

材料・容器・製品の3つを、投入先の記録で結ぶ

準備するのは、材料そのもの、入っている袋・容器、投入先と製品を結ぶ情報です。下の表のように、銘柄やメーカーのロットだけでなく、容器番号、設備番号、作業番号も残します。同じロットの袋が複数あっても、袋番号が分かれば移動を追えます。ただし、社内の袋番号でメーカーのロットを置き換えず、両方を結び付けてください。

対象記録する情報架空例
材料メーカー・銘柄・色・ロット樹脂R-A/ロットR101
袋・容器容器番号・量・単位・保管場所袋B-01/25kg/材料棚A
投入先設備番号・供給系統・投入記録成形機M-03/投入票I-01
製品製品ロット・作業番号・区間製品F-21/作業W-09
切替の判定既定手順の記録番号・判定者切替記録C-09/責任者

残量には、測った日時と方法、単位、容器の重さを含むかも添えます。推定値を使った場合は「推定」とし、実測値と混ぜません。一方、通常の安全な作業で把握できない設備内の量を、台帳を埋めるために取り出すことは避けてください。「未把握」と対象箇所を残し、所定の担当が設備・材料の手順に沿って扱います。分からない量をゼロへ変えるより、未把握の範囲を引き継ぐことが先です。

架空例:袋の受払が合っても、製品使用量とは分ける

下の表は、2つの袋の受入量と、各袋から設備へ投入した量、袋に残る量を比べた架空例です。投入先からの戻し、廃棄、こぼれはないと仮定しています。実際にそうした動きがあれば、移動先・理由・数量を別の明細へ残し、袋の増減に含めて照合してください。表の数字へ無理に合わせる運用にはしません。

材料ロット・袋受入量この袋からの投入量袋に残った量数量照合
R101/B-0125kg20kg5kg25=20+5
R102/B-0225kg10kg15kg25=10+15
合計50kg30kg20kg50=30+20

上の例では、受入50kgに対して投入30kg、袋の残り20kgとなり、袋の範囲では数量が合っています。ただし、この30kgをそのまま良品の使用量にはできません。投入した材料が製品、ランナー、廃棄物、設備内の残りへどう分かれたかは、別の記録だからです。工程全体の収支まで追う場合は、集計する範囲と時点、各量の測り方を先に決めます。

製品との対応は、判定根拠のある境界で残す

例えば、R101を使っていた設備へ14:10にR102を投入したとします。その時刻は投入の記録ですが、14:10以降の全製品がR102だけに対応するという根拠にはなりません。成形担当は、現場の切替手順と実績に基づき、どの製品区間まで対応が判明し、どこから調査中なのかを分けます。下の表では、その境界を確定できない区間も消さずに残しています。

製品側の区間対応を残す材料記録の状態
F-21・切替前の対応判明区間R101元の作業記録を参照
F-22・切替境界を調査中の区間R101、R102の関与を調査中投入時刻だけでは確定しない
F-23・切替判定後の区間判定記録で特定したロット切替記録C-09と判定者を参照

上の表の「切替判定後」は、記事の時刻や投入量を基準に付ける状態ではありません。製品区間の切り方と判定方法は、顧客要求と社内基準に従い、責任者が根拠を記録します。境界が不明な製品は所定の保留として区別し、解除や出荷の判断へ結びましょう。候補の旧・新ロットを併記することは、混合の許可でも、不良の断定でもありません。

材料担当と成形担当で進める5つの記録手順

  1. 材料担当が元の表示から照合する。銘柄、色、ロット、袋番号を読み合わせます。読めない表示は推測で補わず、所在と照会先を残します。
  2. 投入担当が実際の移動を残す。どの袋から、いつ、どの設備・供給系統へ何kgを移したか記します。予定と実績、測定時点を分けてください。
  3. 材料担当が残量と保管状態を記す。袋の残量、単位、測定日時と方法、保管場所を残します。開封後の保管・再使用は、材料仕様と社内手順に従います。
  4. 成形担当が投入記録と製品区間を結ぶ。作業番号、製品ロット、切替の判定記録へ戻れる形にします。未判明の区間には旧・新ロットの候補を残し、所定の保留として区別します。
  5. 管理担当が未解決事項と次の対応を渡す。残った袋、設備内の未把握事項、判定待ちの製品範囲、回答者と期限を伝えます。回答後は日時と根拠を追記し、以前の記録も残します。

混ざった材料や差のある残量は、ゼロで埋めない

25kgの袋から20kgを投入した記録があるのに、残りが4.5kgだったら、差は0.5kgです。この差を製品の使用量へ足して帳尻を合わせると、元の食い違いが見えなくなります。測定条件、転記、別の移動などを調べ、差の量と調査担当、回答期限を残してください。訂正する際も、最初の値と訂正理由を追える形にします。

複数ロットを同じ容器へ移した場合は、新しい容器番号から元の各ロットへ戻れるようにします。新番号を付けるだけでは、材料の出所を引き継いだことにはならないためです。また、再生材・粉砕材の配合や物性、使用可否は、この台帳の数量だけでは決められません。識別できない材料は「不明」として所在を区別し、使用を保留して所定の判断担当へ回します。

まとめと参照した一次資料

まずは袋の受払を残し、その明細を設備への投入記録、製品区間の記録へ順につなぎましょう。袋に残る量と設備内の量を分け、境界の不明な製品は根拠がそろうまで保留として追います。担当が変わる際には、未判明の範囲と回答者、次の対応も渡してください。本記事の表と記録手順は編集部の提案であり、現場で適用する切替・判定手順に合わせて使うものです。

記録の全体像は材料ロットを追跡する方法で、材料から作業・製品へたどる項目を見られます。また、切替情報を次の工程へ渡す際は製造現場の変更点管理も参考にしてください。材料の移動を残す担当と、製品側の適用を決める担当を結ぶと、境界の回答待ちを追いやすくなります。

タイトルとURLをコピーしました