数量が違う案件は、総額と1個原価を並べて見る
見積は100個、実績は80個。この案件で原価総額が下がっていても、作業が効率よく進んだとは限りません。まずは見積数量・実績数量・それぞれの原価総額を並べ、総額差と1個あたりの原価を分けて見ましょう。数量が減れば材料費が減る場合がある一方、1回行う段取りの費用はそのまま残る場合もあります。その違いを分けると、次に調べる費用が見えてきます。
この記事は、案件が終わった後に社内で差の理由を振り返るための比較方法です。数値はすべて架空で、金額は税抜とします。会計上の原価評価や税務処理を決める表ではありません。比較する範囲をそろえる基本は、見積と実績の工数・費用を比較する方法で扱っています。ここでは、そのうえで数量が違う場合に、どこまで換算できるかを見ていきましょう。
架空例1:総額は1万円減っても、1個原価は上がる
正式な注文変更で100個から80個へ減り、その80個を完成させて案件が終わった例を考えます。残る20個の仕掛品はなく、費用資料もそろっている前提です。原価総額は見積100,000円に対して実績90,000円でした。下の表のように数量、総額、1個原価を別々に並べると、総額が下がったことと、単位あたりの負担が変わったことを同時に読めます。
| 項目 | 見積 | 実績 | 実績−見積 |
|---|---|---|---|
| 比較する数量 | 100個 | 80個 | −20個 |
| 原価総額 | 100,000円 | 90,000円 | −10,000円 |
| 1個原価 | 1,000円 | 1,125円 | +125円 |
1個原価は、原価総額を比較対象の数量で割った値です。この例の実績は90,000÷80=1,125円となり、見積より12.5%高くなります。一方、総額は10%下がっています。数字が矛盾しているのではなく、総額と1個原価が別の問いに答えているためです。どちらか片方を採用して改善と決める前に、数量が変わった影響を分けましょう。
総額では、その案件にいくら使ったかを見ます。1個原価では、設定した数量へ費用を割り当てた結果を見ます。たとえば段取り費が変わらないまま数量が減れば、1個に割り当てる段取り費は増えます。そのため、1個原価の上昇だけで作業者の能率低下と判断しないことが大切です。作業時間が増えたかどうかは、数量と費用の内訳を対応させてから調べてください。
架空例2:80個に換算するときも、段取り費まで8割にしない
次に、見積100,000円の内訳を、1回分の段取り20,000円と、1個あたり800円の材料・加工費に分けます。80個でも段取りの内容と回数は変わらず、材料・加工費だけが数量に比例するという架空の条件です。この条件を残してから下の表で換算します。すべての現場で材料や加工費が数量比例になる、と決めるものではありません。
| 費用 | 100個の元見積 | 80個の比較用計算 |
|---|---|---|
| 数量によらず1回行う段取り | 20,000円 | 20,000円 |
| 数量に比例する材料・加工費 | 800円×100個=80,000円 | 800円×80個=64,000円 |
| 合計 | 100,000円 | 84,000円 |
| 1個原価 | 1,000円 | 1,050円 |
単純に100,000円×80%とすれば80,000円になりますが、これでは段取り費まで4,000円減らしています。上の表では段取り20,000円を残し、比例する費用だけを計算するため、80個の比較用原価は84,000円です。実績90,000円との差は+6,000円となります。元の見積からいくら変わったかに加え、この条件に換算した後でも差が残るかを見るわけです。
元見積に対する総額差−10,000円は、数量変更による−16,000円と、換算条件との差+6,000円に分けられます。ただし、この6,000円がそのまま作業の無駄を示すわけではありません。時間の増加、単価の変更、材料の余り、追加検査など、複数の要因が候補になります。該当する費用明細と実績記録へ戻り、分かった理由と、まだ調べている理由を分けて残しましょう。
換算は比較用の仮計算であり、提出済みの見積を上書きする処理ではありません。また、材料が購入ロット単位なら、80個の製造でも100個分を購入する場合があります。外注の最低料金なども、単純な数量比例にはできません。小ロットの段取り費を単価へ反映する方法も参照し、数量に合わせて動く費用と、今回そのまま残る費用を、見積条件や発注記録から分けてください。
架空例3:「実績80個」が何の80個かを確かめる
ここまでの例は、数量変更後の80個で案件が終わった前提でした。ただし、「実績80個」という同じ欄名でも、現在の出荷数、良品数、変更後の完成数では意味が違います。下の表のようにケースを分け、比較表の先頭へ数量の定義と未完了品の有無を書きましょう。数字を割る前に、分母へ使う数量がどの状態を表すかをそろえます。
| 状況 | 比較前に調べること |
|---|---|
| 注文が80個へ変更され、全数完了 | 変更記録と費用範囲を照合し、80個の案件として比較する |
| 100個の注文のうち80個だけ出荷済み | 残り20個の作業・費用が続くなら、案件完了と扱わない |
| 100個を加工し、良品80個・廃棄20個 | 100個分の投入費用の範囲を調べ、良品1個原価と廃棄数量を併記する |
表の最後のケースを20個の注文減と扱うと、廃棄した材料や加工時間を見落とします。一方、残り20個がまだ未完成で、その費用も総額に混ざっているなら、80個で割っても完成分だけの比較にはなりません。どこへ配分するか決まっていない費用は、配分の判断待ちとして理由と担当を残します。差を小さくするためにゼロや全額を置かず、定めた基準で費用範囲を決めてください。
担当者が照合する順番と、残す記録
- 営業・事務担当:提出した見積の版、元数量、変更後数量、顧客との変更記録を保存する。
- 現場・品質担当:完成数、良品数、廃棄数、仕掛品を実績記録と照合し、比較に使う数量の意味を記す。
- 集計担当:材料・外注・人・機械などの範囲をそろえる。請求未着は、根拠のある暫定額と回答期限を残す。
- 見積担当:元見積を保持し、数量比例にできる根拠がある費用を比較用に換算して条件を添える。
- 管理者:総額差、1個原価差、換算後の差を見比べ、次回見積へ反映する条件と改善課題を分ける。
上の役割分担では、数量を確定する担当と費用を集める担当の記録をつなぎます。未完了品や資料不足がある間は「集計中」と明記しましょう。売上数量や販売条件も変わった場合は、原価差だけを利益の増減へ読み替えません。元見積、実績、比較用の換算、集計した日と条件を残しておけば、後から費用が届いたときも、どの数字をなぜ更新したかを説明できます。
自社の有料商品:1案件の比較をExcelに残す
T10「見積・実績原価比較Excel」/5,980円(税込)は、1ファイル1案件で、見積・実績それぞれ最大8工程を比較する商品です。費用、延べ人分、延べ台分を手入力し、原価総額と1個原価などを表示します。各数量で計算した結果を並べて振り返りたい場合の候補になります。価格の参照日は2026年10月4日です。
ただし、数量差を同じ条件へ自動換算する機能はありません。本例の84,000円のような比較用計算は、根拠と一緒に別の表やメモへ残します。また、「集計完了」は利用者が選ぶ状態で、費用漏れの自動検出ではありません。元資料と範囲を照合してから状態を切り替え、入力できたことと、資料がそろったことを分けて扱ってください。
Windows版Excelでの動作検証が行われています。金額は税抜円、数量は整数の個を扱い、Mac版ExcelとGoogleスプレッドシートは未検証です。T09や帳票9点セットとは別の商品で、その収録物には含まれません。ほかの商品を先に購入しなくても利用できますが、自社の費用範囲や配分方法は利用者が決めて入力する設計です。
入力情報と結果の見方は、見積・実績原価比較Excelの図解付き商品案内でも紹介しています。まずは元見積と実績をそれぞれの数量で残し、数量比例にできる費用の根拠を探してみましょう。商品が表示する1個原価と、別に行う数量差の換算を分ければ、総額が減った理由と、次回見積へ反映する条件を考えやすくなります。

