外注加工依頼書には、対象品と数量、今回適用する図面、加工範囲、支給品、品質条件、納期、連絡先を結び付けて残します。たとえば図面を送っても、どの工程まで依頼するかが分からなければ、相手は着手を判断できません。この記事では、A4・1枚を入口に使える様式と記入例を示します。ただし、枚数を守るために条件を省かず、詳細は番号を付けた添付資料へつないでください。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 続けて調べること |
|---|---|---|---|
| 図面がある | 図面だけで判断させない | 図面番号、改訂番号、ファイル名を依頼書へ記入する | 加工範囲、外観、優先条件が図面で足りるか |
| 支給材・部品がある | 引渡数と返却対象を固定する | 品名、数量、識別表示、引渡方法を記入する | 不良品、端材、残材、治具の返却要否 |
| 納期を急ぐ | 希望日と確定日を混同しない | 希望納期と回答期限を分けて書く | 分納可否、納入先、遅延見込み時の連絡先 |
| 途中変更があり得る | 電話だけで完結させない | 承認者と変更記録の場所を決める | 変更番号、変更日、旧版資料の扱い |
外注加工依頼書は「迷ったときの判断」を書く書類です
依頼書で伝えたいのは、作業内容に加え、迷ったときにどこで保留し、誰へ相談するかです。「図面どおり」だけでは、支給材の状態や、依頼に含めるバリ取りの範囲までは伝わらない場合があります。冒頭の表から不足する条件を探し、相手の推測で作業が進まないよう、着手前に決める事項を分けましょう。
依頼書、図面、仕様書、メールは同じ依頼番号で対応させます。ファイル名やメール件名にも番号を入れると、質問や回答を元の依頼へ戻しやすくなります。ただし、図面の正式な識別番号まで任意に変更するものではありません。送る資料の番号と版を添付一覧に残し、後の変更記録も同じ依頼へ結び付けます。
この記事の様式は、技術情報と納入、連絡をそろえるための例です。単価や支払条件などを別書類で扱う場合は、その合意した書類とも依頼番号で対応させてください。この加工用の例を埋めるだけで、契約や発注の記載要件まで満たしたとは扱いません。
毎回入れる基本項目と図面だけでは不足する加工条件
まず、どの依頼でも相手が判断に使う情報を固定欄へ置きます。作成者が入力し、製造や品質などの担当が自分の範囲を照合してから、所定の承認を受ける流れにしましょう。下の項目は、その担当と元資料を決めるための入口です。未確定の欄は単に埋めず、誰が回答するかを残します。
- 依頼情報:依頼番号、発行日、依頼元、作成者、連絡先
- 対象品:品名、品番、数量、単位、追跡に使うロットまたは識別番号
- 参照資料:図面番号、改訂番号、仕様書番号、添付ファイル名
- 加工範囲:依頼工程、加工開始時と完了時の状態、対象箇所
- 加工条件:材質、寸法、加工前の状態、優先して守る条件
- 品質・検査:検査対象と基準、提出資料、異常時に保留する条件
- 納入条件:希望納期、確定納期、納入場所、荷姿、現品票の要否
- 連絡・変更:質問先、回答期限、変更承認者、変更記録の場所
数量は「10」だけでなく、「10個」「2枚」のように単位まで示します。分納する場合は総数と各回の数量・日付を分け、どこまで合意済みかも記してください。数量や加工範囲が未確定なら「回答待ち」と担当・期限を残し、その状態で着手してよい範囲を別に決めます。未確定と書いたこと自体は加工の許可になりません。
加工箇所は位置と完了状態をセットで示します
「穴あけ・タップ加工」と書く場合も、対象穴、下穴や仕上げ、バリ取りの範囲を指定します。たとえば「図面注記①〜③が対象」と対応させ、その箇所のねじ仕様や寸法、公差、検査方法へつなぎます。「指定ねじを通せる」だけでは合否条件を表し切れないため、それだけを完成状態の基準にしないでください。写真や見本も資料番号と適用範囲を残します。
守る条件と、代替を判断する担当を決めます
外観面、穴位置、ねじなど、特に注意してもらう箇所は具体的に示します。ただし、優先と書いた箇所以外の公差や要求を満たさなくてよいという意味にはしません。図面と依頼書が食い違う場合や、条件を同時に満たせない場合は、相手の判断でどちらかを選ばせず、着手や加工を保留して照会する扱いを決めておきましょう。
材料の代替、方法の変更、工程の省略は、認める範囲と承認の担当を先に決めます。顧客への照会が伴う場合もあるため、社内の担当者が返答したことだけで変更が成立するとは限りません。合意した変更内容と適用する数量・ロットを記録し、相手がその指示を受け取ってから着手できる流れへつなぎます。
支給材と返却品は数量の流れで管理します
支給材、部品、治具、見本は、引渡しから返却まで同じ依頼番号で追います。「支給あり」だけでは、依頼数量と渡した数量の差が予備なのか別案件分なのかを判別できないためです。渡す物ごとの数量、識別、状態と、完成品、不良品、残材、返却品の対応を残し、差があれば用途を調べます。
- 引渡時:品名・品番、数量・単位、識別表示、引渡日、引渡方法を依頼書または支給品管理表へ記録する
- 加工着手前:数量不足、傷、変形、図面との不一致があれば、外注先が誰へ連絡するかを示す
- 納入時:完成品数、不良品、端材・残材、治具・見本の返却要否を納品書と依頼書で照合する
依頼書を受け取ったという返答と、支給品の実数・状態を受け渡した記録は分けます。メールや受領欄を使う場合も、相手が何を受け取ったと答えたかが分かる内容にしてください。支給がない場合は、外注先手配などの合意した分担を残します。「なし」と書く前に、材料を誰が手配するかまで決めましょう。
品質と検査は対象・基準・方法・異常時対応に分けます
「良品で納入」「傷に注意」だけでは、外注先と受入側が同じ基準で判定できません。適用する図面や検査基準へ戻り、寸法、外観、機能、数量について、どの範囲を誰が検査し、何を記録するかを決めます。提出資料の有無はその取決めに従い、資料を求めないことと検査を省くことを混同しないようにします。
記載する際は、対象箇所に加え、適用する基準書や見本の番号・版、方法と判定基準を対応させます。「深い傷」のように読む人で変わる言葉だけでは足りません。成績書、測定データ、材料資料、工程写真などを求める場合は、対象ロット、記載する内容、提出方法と時点を指定し、納入品へ対応させられる形にします。
規格外、材料の不一致、対象箇所の不明などが起きたときは、所定の停止・保留と連絡の手順へ進めます。記録を完成させるために初動を待たせないでください。手直しを認める範囲と承認者を決め、承認前の追加加工を防ぎます。回答は依頼番号で残し、手直し後の検査や保留解除も、別の判断として記録します。
納期と変更連絡を同じ依頼番号で残します
希望納期は依頼元の要望、確定納期は双方で合意した日付として分けます。その際は出荷日か到着日かも合わせ、回答を求める期限を残してください。納入場所、受け取れる時間帯、分納、荷姿、依頼番号やロットの表示まで指定すると、加工が終わった後の受け渡しも同じ依頼で追えます。
変更の連絡を受けたら、依頼された案と合意済みの条件を分け、進行中の加工へ影響があれば速やかに所定の保留・連絡を行います。当日中という記録の目安を、対応を待つ理由にしません。適用する品物、変更前後、承認者、版、相手の受領を残し、旧版は作業用から外して履歴へ保存します。注文変更の照合手順と手戻り防止の実務も参考に、変更を受けた先まで追いましょう。
加工品を受け入れたら、次工程へ依頼番号、ロット、受入検査や保留の状態、資料の参照先を渡します。物が届いたことだけで次工程や出荷へ進めるとは扱いません。出荷指示を書面化する進め方と最小項目の決め方を参考に、今回の出荷対象と許可された数量まで対応させてください。
自社の条件へ合わせる外注加工依頼書の基本テンプレート
下の表は、既存帳票へ項目を移すための基本例です。番号、品名、数量は架空であり、実際の発注や検査の条件ではありません。たとえば依頼10個に対して支給12個と書く場合、差の2個が予備なのかを明記し、勝手に消費や廃棄できる扱いにしないでください。自社の条件と添付資料へ置き換えて試します。
| 項目 | 記入内容 | 記入例 | 空欄にしてはいけない場面 |
|---|---|---|---|
| 依頼情報 | 依頼番号、発行日、作成者、連絡先 | OS-例-001/発行日:20XX年X月X日/担当:製造担当 | すべての依頼 |
| 対象品 | 品名、品番、数量、単位 | ブラケット部品/品番:BR-例-01/10個 | すべての依頼 |
| 添付資料 | 図面番号、改訂番号、ファイル名 | 図面:BR-例-01、改訂B/添付:BR-例-01_revB.pdf | 図面・仕様書を使う依頼 |
| 加工内容 | 工程、対象箇所、加工後の状態 | 図面注記①〜③の穴あけ・タップ加工。適用図面のねじ仕様、公差、バリ取り範囲と検査条件に従う | すべての依頼 |
| 支給品 | 品名、数量、識別、引渡日、返却要否 | 支給材:BR-例-素材、12個、現品票貼付。不良品・残材は返却 | 支給材・治具・見本がある依頼 |
| 品質・検査 | 適用条件、検査資料、異常時対応 | 穴位置と外観は指定基準・見本へ照合。不明点は着手前に連絡。その他の要求も省略しない | すべての依頼で適用条件と検査の分担を判定 |
| 納入 | 希望・確定納期、場所、表示、分納可否 | 希望:20XX年X月X日/確定は回答後記入/納品書へ依頼番号を記載 | すべての依頼 |
| 変更・連絡 | 質問先、回答期限、承認者、変更記録 | 質問先:製造担当/回答期限:着手前/承認者:生産責任者 | すべての依頼 |
条件別の追記欄はこの順で判断します
上の表の各欄は、空欄を埋めることより、該当しないのか、未決なのかを区別して使います。支給がない場合の「外注先手配」は合意した担当を示す記載です。まだ決まっていないものまで「なし」にせず、回答待ちの担当・期限・着手制限を残して、下の順番で不足を探しましょう。
- 図面・仕様書がある場合:対象へ適用する番号と版、添付ファイルを記す。ない場合:寸法、公差、材質、加工箇所、完成状態を別の合意資料で具体化する
- 支給材・支給品がある場合:引渡数量、識別、受領方法、返却対象を追記する。ない場合:材料を誰が手配するかを記入する
- 検査資料を提出する場合:検査対象、方法、提出物、時点を記す。提出しない場合も:適用基準と外注・受入の検査範囲を決める
- 納期や仕様を変更する場合:変更前後、承認、適用範囲と版、相手の受領と現場反映を残す。変更がない場合も:今後の依頼を誰が受け、どう合意するかを決める
依頼番号、対象、数量、適用資料、加工範囲、納期、連絡先は、相手が同じ依頼を判断する手掛かりです。支給品や提出資料の詳細は該当しない場合に省けても、該当の有無を検討した結果は残します。特に資料提出なしと検査なしを分け、適用する品質条件が抜けないようにしてください。
発行前12項目チェックリストで抜けを止めます
発行前には、作成者以外の所定の担当が内容と添付資料を照合し、審査した日付と担当を残します。次の12項目は点検の例であり、印を付ければ条件が確定するものではありません。回答待ちの項目を送る場合も、相談用なのか、どの範囲まで着手できる依頼なのかを相手と共有します。
- 依頼番号、発行日、作成者、連絡先を記入した
- 品番、品名、数量、単位に矛盾がない
- 対象品へ適用する図面・仕様書を添付し、版を記入した
- 作業へ適用する版と、履歴として保存する旧版を区別した
- 加工工程と対象箇所を指定した
- 加工後にどの状態まで仕上げるかを記入した
- 寸法、外観、バリ、傷などの適用条件を示した
- 支給品の数量、識別、引渡方法、返却対象を照合した
- 検査資料の提出有無と、検査自体の範囲を区別した
- 希望納期、確定納期の状況、納入先を記入した
- 納期遅延や仕様不明時の連絡先と回答期限を決めた
- 変更を承認する人と、変更記録を残す場所を決めた
未確定の欄には、回答を得る人と予定日を残します。後で条件が決まったら、同じ依頼番号で確定内容を発行し、相手が受領した資料と作業中の対象へ反映したことを追ってください。自社の控えだけへ追記しても、相手が旧条件で加工する状態は変わりません。
テンプレートを定着させるための3つの運用ルール
運用を始めるときは、依頼を追う番号、変更を受ける担当、不足を次の様式へ反映する方法の3点を決めます。少人数でも、技術や品質、契約上の判断を担当外の人が代わりに承認する運用にはしません。下のルールを、実際の責任者と不在時の代行へ対応させましょう。
- 依頼番号の付け方を決め、依頼書、図面ファイル名、メール件名、納品書照合に同じ番号を使う
- 口頭変更を受けたら影響する作業へ速やかに伝え、合意内容・適用範囲・承認・受領を記録する
- 加工漏れや不適合が起きたら、記録と実際の受け渡しを調べ、判明した原因に応じ様式や手順を直す
見直しでは、起きた出来事と、そのとき渡した資料や指示を比べます。版の不明や返却品の指定漏れなら様式へ反映できますが、すべてを欄不足が原因と決めないでください。同じ不良が繰り返される原因の調べ方と再発防止の進め方も使い、伝達、受領、加工、受入のどこで食い違ったかを調べます。様式を直したら、更新日と適用開始の依頼を残します。
よくある質問
図面の内容は、外注加工依頼書にもすべて書き写しますか?
図面の全内容を重複して書くより、番号と適用版を示し、今回の加工範囲や支給品などを補う方法があります。ただし、図面と依頼書の指示が矛盾するまま「こちらを優先」とだけ書いて進めないでください。判断する担当が適用条件を決め、双方が同じ資料で作業できる状態にしてから発行します。
外注先から「判断できない」と連絡が来たとき、どの項目を見直せばよいですか?
まず、品物の識別、適用版、加工箇所、仕上げの条件を相手と照らします。次に、支給品の状態、品質基準、変更や手直しを承認する担当をたどりましょう。分からない部分は推測で回答せず、担当へ照会します。回答した内容は依頼番号を付けて記録し、受け取った相手と自社の関係者へ同じ内容を渡します。
加工途中で寸法や数量が変わった場合、電話連絡だけで変更してもよいですか?
緊急に電話で伝える場合も、まず旧条件のまま進む作業への影響を伝え、所定の保留を依頼します。その後、変更前後、対象ロットや数量、適用時点、承認者、資料の版を記録してください。相手の受領と現場への反映を追い、未回答・未承認のまま新条件の加工へ進ませないようにします。
少量の単発依頼でも、支給材や検査の欄は毎回作るべきですか?
少量でも支給の有無や品質条件は省略せず、今回の依頼へ適用する内容を選べる欄にします。該当なし、提出なし、回答待ちは区別してください。検査資料を提出しない取決めでも、検査そのものを省いてよい意味にはならないため、外注側と受入側で担当する検査の範囲は別に残します。
まとめ
まず、対象と数量、適用資料、加工範囲、納期を同じ依頼番号で結びましょう。次に、支給品、品質、変更の扱いを決め、相手が迷ったときの保留と連絡先を残します。使い始めた後は、版の違い、数量の差、回答待ちがどこで起きたかを記録からたどり、様式と受け渡し手順を直してください。書類を送ったところで終えず、相手が同じ条件で作業できるところまでつなげることが狙いです。

