事務と現場の数字が合わないときは、まず何の数量を、いつの時点で比べているかを合わせましょう。受注数、在庫数、出荷数はそれぞれ意味が違うため、同じ数字に直すことが目的ではありません。対象と基準時点をそろえたうえで、受注→入庫→出庫→在庫→出荷の記録をたどり、入力漏れや二重計上、置き場の違い、未処理伝票、現物移動、出荷済み未反映のどこに差があるかを調べます。
この記事は、受注残の計算や在庫台帳と実在庫、出荷伝票と実績が合わず、どこから調べればよいか迷う担当者向けです。次の表で差が出ている記録を選び、元資料と担当者をたどってみてください。後半では、調べた事実を残す欄と、修正後に経緯を追える形まで説明します。
| 状況 | 最初に見るもの | 続けて照合すること | 記録先 |
|---|---|---|---|
| 受注数だけ合わない | 受注書、注文メール、FAX原票 | 取消・修正履歴、受注残、出荷予定 | 受注台帳の差異欄 |
| 在庫数だけ合わない | 在庫台帳、棚卸表、保管場所 | 入庫漏れ、出庫漏れ、保留品、不良品 | 在庫照合表 |
| 出荷数だけ合わない | 出荷伝票、送り状、出荷記録 | 未反映、分納、先行出荷、誤出荷 | 出荷照合表 |
数字が合わないときは、基準時点をそろえてから順に切り分ける
同じ日付の表でも、事務が午前に締め、現場が午後に更新していれば、間に動いた数量は片方にしか載っていない場合があります。そのため、差が見つかったら先に締め時刻と対象範囲を決めます。どこまでの入出庫や出荷を含む数字かを合わせてから、記録と現物の違いを調べてください。
調べる順番は、受注、入庫、出庫、在庫、出荷の記録をつなぐ形を基本にできます。先に伝票と台帳の対応を見ておくと、どの品物の現物を数え、どの移動を調べるかを絞りやすいためです。ただし、この順にすべてを同じ数量へ合わせるのではなく、各記録がどの動きを表すかを見比べます。
数字が合わないときの全体フロー
全体は「基準をそろえる」「帳票を突き合わせる」「現物を調べる」「原因を記録する」の4段階で進めます。各段階の担当を決めておくと、まだ見ていない資料と、すでに照合した資料を引き継げます。最初から原因を決めず、記録で分かったことと現物で確かめることを分けましょう。
まずは次の3点から、どの記録の間に食い違いがあるかを見ます。受注残と出荷実績については、数字が同じかではなく、実績を反映した残数になっているかを調べてください。
- 実際の出荷を反映した受注残になっているかを見る
- 在庫台帳と実在庫を同じ範囲で比べる
- 未処理伝票が残っていないかを調べる
これらを比べると、記録の漏れを調べるのか、現物の所在を調べるのか、反映時点を合わせ直すのかを選びやすくなります。まだ分からない点は推測で埋めず、次に見る資料や聞く相手を残して進めましょう。
最初に見るべき3つの差異パターン
差異の入り口は、入力や転記のミス、処理の遅れ、現物の置き場所の違いという3つから考えられます。それぞれ調べる資料や担当が違うためです。どれかと決め付けるための分類ではなく、次にどこへ戻るかを選ぶ観点として使ってください。
- 入力ミス・転記ミス
- 処理タイミングのずれ
- 現物移動やロケーション違い
たとえば原票と画面の数量が違えば入力の経緯を、現場で出荷したのに台帳に載っていなければ反映時点を見ます。台帳どおりの棚に品物がない場合は、移動先の記録もたどります。同じ「数字が違う」という相談でも、起きている場面に合わせて調べ方を分けましょう。
入力ミス・転記ミス
受注数量の入力違い、品番の取り違え、出荷数の転記漏れを調べる際は、原票、入力画面、修正履歴を並べます。表の見た目や合計だけでは、どの数字が変わったかを追えないためです。対象の品番や明細を合わせ、元の値がどの欄へ入力されたかをたどってください。
処理タイミングのずれ
現場で出荷が済んでいても、事務の台帳にはまだ反映されていない場合があります。入庫後の更新が翌日になる場合も、入った現物と台帳の数量はその間ずれて見えます。こうした場合は数量を合わせるために修正せず、対象の伝票がいつ反映されるかを調べ、同じ締め時点で比べ直しましょう。
現物移動やロケーション違い
数量だけでなく、ロケーションと呼ぶ保管場所の記録も照合します。別の棚への移動、作業途中の品物である仕掛品の仮置き、保留品の混在などがあると、台帳に書かれた場所を探しても見つからないことがあるためです。品物がないと判断する前に、場所名と移動の記録を現場担当者とたどってください。
この3点のうち、どこまで調べたかを差異の記録へ戻します。入力の問題と決められなかった場合も、現物の移動や反映時点を次に調べると分かれば、担当者が替わっても同じ資料から調べ直すことを減らせるでしょう。
受注数が合わないときの照合手順
受注数に差がある場合は、注文メール、FAX、注文書などの原票と受注台帳を照合します。まず、どの連絡で受注し、その後の取消や修正をどこに残したかをそろえましょう。古い注文書と変更後の台帳を比べている場合もあるため、数量を直す前に、適用する最新の内容を特定します。
次の順で、元の注文から変更履歴、現在の残数と予定へつなげます。途中で対応する記録が見つからない場合は、その箇所を入力担当や受注担当へ聞いてください。
- 注文の原票と受注台帳を照合する
- 受注取消、数量変更、納期変更の履歴をたどる
- 受注残に対して今回の出荷予定がどう決まったかを見る
架空の記入例なら、「注文書10個、受注台帳8個、修正履歴なし、差異2個、問い合わせ先は入力担当」と残せます。この段階で分かるのは原票と台帳の差であり、台帳の誤りと確定したわけではありません。入力担当に変更の根拠を聞き、修正するときは受注台帳の差異欄と修正理由欄へ、その結果を残しましょう。
在庫数が合わないときの照合手順
在庫数の差を調べる際は、対象品目と保管場所を決めて数え直し、その範囲に関係する入庫・出庫の伝票へ戻ります。現物を数えただけでは、記録の更新漏れなのか、別の場所へ移ったのかまでは分からないためです。数える範囲を合わせたうえで、台帳に反映された動きと比べてください。
特に、次の3点を先に決めてから比べます。保留品や仕掛品を含む範囲が台帳と実数で違うと、数え直しても同じ条件の比較にはなりません。
- 棚卸差異が出た品目と保管場所を特定する
- 入庫漏れ、出庫漏れがないかを伝票で追う
- 仕掛品、保留品、不良品を在庫に含めるかを統一する
架空の記入例は、「品名A、保管場所B、台帳12個と実在庫9個はともに保留品を除く、差異-3個、保留品1個を別管理、出庫伝票未反映の疑い」です。実際にこの形で残す場合は、保留品を台帳と実数のどちらに含めたかも書き、同じ範囲を比べているかを先にそろえます。また、未反映はまだ疑いなので、伝票をたどった結果と分けて残してください。差だけを理由に台帳を書き換えないようにします。
出荷数が合わないときの照合手順
出荷数の差は、出荷伝票、送り状、実際の出荷記録を対応させて調べます。ただし、送り状に品番や製品数量が載っているとは限らないため、宛先や荷物の対応を送り状で、製品の内訳を出荷伝票と実績でたどります。出荷済み未反映や分納の有無を調べたうえで、誤出荷か記録の漏れかを分けてください。
次の順に対象の記録をそろえます。出荷した日付と台帳へ反映した日付が違う場合も、実際に出した記録を基準に、どの出荷がまだ反映されていないかを追います。
- 出荷伝票で品番・数量・日付を、送り状で宛先と荷物の対応を照合する
- 出荷済みなのに事務へ未反映の記録がないかを見る
- 分納、先行出荷、誤出荷の有無を現場の記録から調べる
出荷件数が多い場合は、対象と時点を合わせた合計から差の範囲を捉え、個々の伝票へ進むと調べやすくなります。ただし、合計が合っていても、対象の違う伝票や重複がないことまで分かるわけではありません。気になる出荷は受注明細と実績までたどり、合計と個票の両方で根拠を残しましょう。
照合に使う帳票と担当者を決める
資料をそろえる担当は、事務が台帳、現場が現物、出荷担当が出荷伝票や送り状というように分けられます。次の表では、それぞれが何を調べ、どこへ結果を残すかを示しています。同じ締め時点を共有したうえで持ち寄ると、部署ごとに別の範囲を調べることを避けやすくなります。
| 帳票・記録 | 照合する担当 | 見るポイント | 差異があったときの記録先 |
|---|---|---|---|
| 受注台帳 | 事務担当 | 受注日、数量、修正履歴 | 受注差異メモ |
| 在庫台帳 | 事務担当と現場担当 | 保管場所、入出庫日時、保留品 | 在庫照合表 |
| 出荷伝票 | 出荷担当 | 品番、数量、送り先、出荷時刻 | 出荷差異票 |
| 現場保管表 | 現場担当 | 仮置き、仕掛品、不良品の区分 | 現物を調べた結果の欄 |
この表を使うときは、各担当に「いつ、どこで、何を動かしたか」を先に聞きます。理由を推測する前に、伝票や移動の事実がそろえば、どの記録を直すかを判断しやすくなるためです。調べても分からないことは未確定のまま残し、分かった事実と混ぜないでください。
差異と修正の根拠を追える記録の残し方
差異が見つかったら、発生日、差異数量、原因の仮説、修正内容、再発防止策を1枚にまとめて残します。数字だけを合わせて終えると、後から同じ差が出たときに、前回の処理とどう関係するかを追えません。原因の仮説と、資料や現物から分かった結果も区別して書きましょう。
記録する項目は次の5つが基本です。すべての原因がその場で分からなくても、未確定の箇所と次に調べることを残しておけば、担当者が替わっても続きを追えます。
- 差異が出た日付と締め時刻
- 差異数量と対象品目
- 原因の仮説と、資料・現物を調べた結果
- 修正した台帳や伝票
- 再発防止として変える運用
修正する際は、前の数字と後の数字を両方残します。上書きした結果だけでは、何を根拠に変えたかが見えなくなるためです。修正理由も添え、次に同じ差異が起きたときに、今回の処理と比べられる形にしておきましょう。
再発を防ぐための運用ルール
差異の記録が残るようになったら、日次で照合する項目と、週次で傾向を見る項目を分けます。毎回すべてを最初から調べるのではなく、締め時点で未反映の記録を拾い、繰り返す差があればその工程の運用へ戻るためです。見る頻度と担当を合わせて決めましょう。
次の3点から、自社で曖昧になっている部分を選びます。締め時刻だけを決めても、入力する人や未処理の伝票を拾う人が決まっていなければ、同じ差が残るためです。
- 入力締め時刻を事務と現場でそろえる
- 入力担当と現場担当の役割を分ける
- 日次は件数、週次は差異の傾向を見る
Excelを使う場合も、更新日時、更新者、修正理由を残す列を用意すると、どの時点の数字かをたどれます。共有ファイルへ入力しただけで正しい数字になるわけではないため、元の伝票と結び付けて運用してください。修正の前後を残す考え方は紙と同じです。
担当者へ渡す照合フロー表
ここまでの流れを現場へ渡す際は、次の表で担当と次の判断をそろえておくと使いやすくなります。印刷して机に置く場合も、左から読むだけで対象と担当を追えるかを試してみてください。表を埋めることより、根拠となる資料へ戻れることを基準にします。
| 順番 | 照合する内容 | 照合する担当 | 次の判断 |
|---|---|---|---|
| 1 | 締め時刻と対象範囲をそろえる | 事務 | 同じ時点を示す記録をそろえる |
| 2 | 原票と台帳を照合する | 事務 | 入力漏れか修正履歴を見る |
| 3 | 現物を数え、保管場所を照合する | 現場 | ロケーション違いを見分ける |
| 4 | 未処理伝票を洗い出す | 事務・現場 | 未反映の有無を確定する |
| 5 | 差異票へ残す | 責任者 | 修正と再発防止を決める |
表の最後に差異票を残すのは、数字を修正した理由まで次の担当者へ渡すためです。途中で根拠が分からなければ、無理に一致させて先へ進めず、未確定の範囲と調べる相手を残します。担当が替わったときも、どこから続きを調べるかが分かる形にしましょう。
よくある疑問
受注数と在庫数が合わないときは、どちらを正にしますか?
受注数と在庫数は意味が違うため、どちらかへ同じ数字になるよう合わせるものではありません。まず、何の数量を、どの対象・単位・時点で比べているかをそろえます。そのうえで原票、台帳、現物を照合し、差が生じた記録と修正の根拠をたどって判断してください。
棚卸をしなくても差異の原因は特定できますか?
伝票から入力漏れや未反映の候補を絞ることはできます。ただし、現物が別の場所へ移ったのか、どの区分に含まれるのかは、記録だけでは分からない場合があります。その場合は対象と範囲を決めて現物を数え、保管場所も調べたうえで、台帳との対応を確かめましょう。
Excel管理でも照合手順は作れますか?
Excelでも作れます。更新日時、更新者、差異理由、修正前後の数字を列にし、同じ締め時刻の資料と突き合わせる形から始めるとよいでしょう。ただし、列があるだけでは照合は終わりません。どの資料を誰が読むかを決め、未確定の内容を残せるようにしておきます。
分納や先行出荷があるときはどう照合しますか?
分納や先行出荷では、合計だけでなく、出した回数と日付を出荷伝票ごとに並べます。どの出荷が受注残へ反映されているかをたどると、先に出した分をまだ引いていない場合や、同じ実績を重ねた場合を調べられます。予定の数量と実際に出した数量も分けて照合してください。
受注残と今回出す数の違いで迷う場合は、受注残と今回出荷数を混同しない管理方法を、置き場や表示の運用を見直す場合は、5Sが続かない現場で見直したい運用ルールを参考にしてください。今回見つかった差の理由に合わせ、直す対象を選びましょう。
まとめ
事務と現場の数字が合わないときは、数量の意味、締め時刻、対象範囲をそろえることから始めます。その後に受注、入庫、出庫、在庫、出荷の記録をたどり、原票・台帳・現物のどこに差があるかを調べましょう。入力漏れ、二重計上、保管場所の違い、未処理伝票は調べる候補とし、根拠が出る前に原因と決めないようにします。
次に決めるのは、担当分担と日次・週次の照合時点、差異票に残す内容です。修正前の数字と修正理由まで残せば、次に似た差が出たときも、以前の処理からたどれます。まずは現在合わない記録を選び、別の担当者が同じ資料を使って経緯を追えるかを試してみてください。

