袋から部品を取り分ける途中で声をかけられ、どこまで数えたか分からなくなることはありませんか。計数トレーは、置いた状態から数量を追えるようにする道具です。作業指示の数量を先に読み、1トレーの定数、数え順、端数の扱いを決めましょう。この記事では、仕切りトレーや平トレーを使い、未計数から受渡しまでの状態を分ける方法を説明します。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 次に照合すること |
|---|---|---|---|
| 同じ数量を繰り返し取り分ける | 満トレーの定数を固定する | 区画数・列数から1トレーの定数を決める | 指示数量を満トレー数と端数に分ける |
| 指示数量や端数が毎回変わる | 列単位で数え、端数を別トレーにする | 1列の入数を決めて始点を表示する | 端数トレーに実数量を書いた札を付ける |
| 途中品と完了品が混ざる | 状態別の置き場と表示を先に決める | 作業台を4領域に区切る | 中断時の表示と完了品の移し先を決める |
| 部品が重なる・転がる・絡まる | 重ならず個体を識別できる配置を試す | 実物を試し置きして見分けられる量にする | 配置を変えても識別できなければ別の方式を検討する |
作業指示の数量と1トレーの定数を先に決める
トレーを選ぶ前に、今回そろえる数量と単位、部品の形、作業の頻度を照合します。そのうえで、正しく並べて満たしたトレー1枚を何個として扱うかを決めます。この固定数量が定数です。梱包1袋分や組立1台分に合わせる方法もありますが、袋や台の数と部品の個数を混ぜず、受取側も同じ単位で読める表示にしてください。
たとえば、5列×10区画へ1区画1個ずつ置く架空の例なら、1トレーの定数は50個です。ただし、区画が埋まっていても、重なりや異品があれば50個の対象品がそろったとはいえません。実物で形状、重なり、転がり、傷付きの影響を試してから定数を決めます。指示数量が変わる場合も、満トレーの定数は固定し、端数を別に数えると受渡しの基準を保ちやすくなります。
小物部品に合う計数方法を3つから選ぶ
数え方は、個々の部品と未完了の位置を見分けられるかで選びます。小さい物なら仕切りがよい、と大きさだけで決めるのではなく、重なるか、動くか、途中で手が触れるかも見てください。下の3方式は候補であり、どれでも同じ精度を得られるわけではありません。実際の対象と受渡しまでの動きで、数を追える方式を試します。
- 1区画1個方式:部品を1個ずつ置き、対象品が重ならず各区画へ入っているかを見る。空き区画だけで完了を決めない。
- 1列単位方式:1列を10個などの定数として埋め、列が終わってから次の列へ進む。端数が多い品番にも使いやすい。
- 平トレー整列方式:仕切りがない平トレーに、縦横の列を決めて並べる。トレーを動かしても列が崩れない部品に限って使う。
ワッシャーのように重なる物や、転がる・絡まる物では、1区画に複数個を入れた外観だけで数えません。1区画1個を識別できない場合は、列の入数を減らす、間隔やトレー形状を変えるなどの方法を試します。それでも個体を見分けられなければ、その方式を採用しない判断も伴います。開始前には清掃状態、残留部品、品番・ロット表示も照合し、傷や汚れを持ち込まない条件を守ります。
未計数・計数中・完了品を混ぜない作業台の置き方
数え方が合っていても、数えた物を未計数へ戻すと状態が分からなくなります。そこで、供給元から計数中、計数済みの置き場へ進む流れを決めます。左から右は配置例なので、作業台の条件に合わせつつ、逆流や交差を避けてください。作業台を4領域に分ける場合も、端数と異常保留は別の容器・表示で区分し、同じ部品として合算しないようにします。
- 供給元:未計数の部品、作業指示、対象品番を置く場所
- 計数中:いま埋めているトレーだけを置く場所
- 計数済み:満トレーと数量札を置く場所。作業全体の数量照合と所定の検査後、端数と合わせて受け渡す。
- 端数など:端数は数量札付きの専用容器へ置く。異品の疑いや数え直し対象は、端数とも別の容器・表示で保留する。
空、途中、計数済みのトレーには、それぞれの状態と対象品番・ロットを表示します。類似品は同時に開ける供給元を1品番に絞り、同じ品番でもロットを混ぜない方法を決めましょう。中断時は「途中」「計数済み数」「再開時照合」を残し、数が不明なら推測して記入しません。再開する人は品番、始点、表示の3点に加え、実物と配置が記録に合うかも見ます。
始点と数え順を固定して1トレーずつ埋める手順
始点と進む方向を決めると、途中状態からどこを数えたかを読み取りやすくなります。たとえば左上から右へ、上段から下段へ進むなら、矢印をトレーや標準票へ付けます。ただし、順序の表示だけで実数量を保証できるわけではありません。区画や列が崩れた場合の数え直しも手順に含め、別の人が推測で続きへ進まないようにします。
- 作業指示の品番・ロットと数量・単位を読み、供給元の表示と照合する。
- 空トレーの残留や汚れを点検し、計数中の位置で始点と数え順を照合する。
- 供給元から部品を取り、決めた区画または列へ順番に置く。
- 1列単位方式では、現在の列を埋め終えてから次の列へ移る。
- 対象品が定数まで正しく入ったことを照合し、計数済み札を付けて所定位置へ移す。
- 指示数量に端数があるときは、専用トレーで計数し、実数量の札を付ける。
部品をまとめて投げ入れる方法では、重なりや区画外への移動を見落としやすくなります。定めた入数を実物と照らした区画・列だけを計数済みとして進めてください。数を見失ったトレーは他と分け、数量が不明な範囲を始点から数え直します。一方、落下や異品の疑いは再計数だけで解除せず、対象を保留し、品質や識別の所定判断を受けます。
満トレーと端数を、実物と式で照合して受け渡す
個々のトレーが計数済みになっても、作業指示全体の数量がそろったとは限りません。受渡し前に「満トレー数×1トレーの定数+端数=指示数量」を標準票へ記します。計数者と受取側は、実物の入数、満トレーの枚数、端数の札と実数を照合してください。式の答えが合うだけで完了にせず、対象品番・ロットと所定の検査も満たしてから渡します。
端数トレーの札には、品番・ロット、実数量と単位、計数日、担当、行先を記します。梱包ならどの袋詰め分か、組立なら1台分や1ロット分かも対応させましょう。紙だけを先に渡すと別件と混ざるため、現場のクリップボード・伝票ホルダー選び|帳票を混ぜずに運ぶも参考に、物と数量札の関係を保って運ぶ方法を決めます。
受取側は、照合後に所定の袋や容器へ移し替え、残留部品やこぼれがないかを見てから空トレーを戻します。受領しただけで、移し替え先まで数量が一致したとは扱いません。過不足があれば、対象の作業分を他と分け、供給元・計数中・端数との対応を調べます。その場の足し引きで数字だけを合わせず、数え直した理由と結果、処置を記録してください。
計数トレー標準票の記入例と、導入時に試す項目
標準票は、定数、数え順、受渡し先を1枚へまとめる方法です。開始前は作業指示の対象と数量、完了時は実際の満トレー数と端数を記入します。同じ品番でも、作業ごとの番号や日時を付けて以前の記録と区別しましょう。数量や定数を変えるときは所定の判断を経て適用版を差し替え、変更日と担当、旧記録を残します。
| 標準票の記入欄 | 開始前または完了時に記入する内容 |
|---|---|
| 品番・品名/指示数量 | 作業指示と照合した対象部品と今回そろえる総数 |
| 1トレーの定数 | 満トレー1枚として扱う数量 |
| 区画数/1区画の入数 | 記入例:5列×10区画/1区画1個 |
| 満トレー数/端数 | 完了時に計算式と照合する数 |
| 始点・数え順 | 記入例:左上から右へ、上段から下段へ |
| 完了品の移し先 | 梱包待ち、組立ラインなどの置き場名 |
| 計数者/照合者 | 計数した担当者と受取時に照合する担当者 |
| 異品混入時の処置 | 影響範囲を保留し、供給元と計数中を分ける。識別・品質の所定判断と再計数の結果を残す。 |
表へ書く架空の記入例1では、指示数量250個、5列×10区画、1区画1個とします。1トレー50個なので、満トレー5枚と端数0個で250個です。記入例2の230個なら、定数50個の満トレー4枚で200個、端数30個を加えて230個になります。端数札には「30個」と書き、実物と照合したうえで満トレーと対応させます。定数は実際の部品とトレーに合う値へ置き換えてください。
試し始める範囲は、代表的な1品番、1作業台、1つの受渡し先に絞る方法があります。作業後、下の項目について計数者と受取担当が同じ記録へ残しましょう。数え直しがあっても注意不足と決めつけず、区画、表示、置き場、中断のどこで対象や数を見失ったかを調べます。試行中も所定の検査・再計数は維持してください。
- 部品が区画または列で重ならず、1個・1列を判断できたか
- 始点と数え順で迷った箇所はなかったか
- 端数トレーが完了品や未計数品に混ざらなかったか
- 満トレーを移す途中で、数量札または品番札が外れなかったか
- 受取側が実物と札、満トレー数・定数・端数を指示数量へ照合できたか
振り返りには、発生日時、品番、迷った位置や表示、その後の処置を記します。改善する内容と担当・期限を決め、変えた後に同じ品番と条件で再び試すと比較できます。ただし、混在や品質上の異常への初動を、作業終了後の振り返りまで待たせてはいけません。処置を先に行い、標準票や置き場へ反映する変更は所定の承認を経て適用します。
計数トレーだけでは安定しない場合の見直し順
過不足が続く場合は、速く数える方法へ変える前に、判断が分かれる場所を探します。同じ作業なのに定数やトレーが違うなら、適用する組み合わせを固定できるかを検討しましょう。品番切替えでは、供給元、途中品、端数、保留品、空トレーの残留を照合します。段取り替え前の準備漏れを防ぐ点検表と運用手順へもつなぎ、前の対象が残る状態で次品番を開けない流れにします。
1区画の部品が重なり、1個かどうか読めないなら、その配置は採用しません。1列の入数を減らす、間隔を広げる、区画やトレーを変えるといった候補を比べます。列単位へ変えるだけで重なりが解消するとは限らないためです。数量が多い場合も、定数を増やす前に、満トレーを置く面積、運搬時の安定、受取側の枚数照合まで試してください。
重量や画像による計数を比較する場合は、対象部品のばらつきと、正しい数量を照合できる基準を用意します。重量方式なら個体重量、容器や異物の影響、画像方式なら重なりや照明など、結果に影響する条件を機器の仕様へ照らします。方式名だけで精度を決めず、対象と作業条件を使った評価、差異が出た際の停止・再計数を定めてから採用を判断しましょう。
よくある質問
以下では、中断、類似部品、端数、袋詰め前の再計数を扱います。どれも、表示があることだけで正しい数量とは判断しない点が共通します。迷った対象を他の計数済み品へ混ぜず、実物と記録を照らせる状態に保ってから、再計数や所定の処置へ進めてください。
計数途中で中断したトレーは、再開時にどこから数えればよいですか?
まず「途中」「計数済み数」「再開時照合」の表示と実物を照らします。数や順序が不明なら、そのトレーを他と分けて始点から数え直してください。異品や落下の疑いがあれば、数量の問題だけにせず保留と所定判断も行います。中断を想定して列ごとの計数済み範囲を示す方法は使えますが、表示を根拠に実物を見ず再開することは避けます。
同じ見た目で品番だけが違う部品は、同じ計数台で扱ってもよいですか?
見分けと物理的な分離が保てない場合は、同時に扱わない方法を選びます。同じ台で切り替えるなら、前品の供給元・端数・保留品と残留部品を所定の場所へ戻し、台と空トレーを点検してから次を開けます。戻した品の数量・ロットも記録してください。品番札だけを替えて、中の部品が前品のまま残る使い方を防ぎます。
端数が毎回違う品番では、トレーの定数をどう決めればよいですか?
満トレーの定数は固定し、指示数量との差を端数トレーで数えます。端数へ合わせて定数を変えると、同じ満トレーでも何個かを受取側が読み違えるためです。満トレーがほとんどできない作業なら、列単位や使用単位に合う定数を改めて検討できます。変更時は所定の評価と承認を通し、旧定数のトレーや札と混ざらない切替えにしてください。
数え終えた部品を袋詰めする前に、もう一度全数を数えるべきですか?
顧客指定や社内で定めた全数再計数がある場合は、その手順を維持します。トレーの式が一致したという理由で省略しません。それ以外の運用を設計するときも、品番、実物の入数、満トレー数×定数+端数、数量札と移し替え後の状態を評価します。影響や混入しやすさに合わせ、再計数の対象、担当、実施時点と記録欄を責任者が決めてください。
まとめ
まず、指示数量を満トレーと端数へ分け、1トレーの定数、始点、数え順を標準票へ残しましょう。次に供給元・計数中・計数済み・端数などの4領域を設け、端数と保留品はその中でも容器と表示を分けます。満トレーだけでなく、端数も実物と数量札を照合して受け渡してください。数え直しや混在、中断後の迷いを記録し、所定の検査を維持しながら、定数・表示・配置の変更を担当者間で共有する運用へつなげます。

