少人数会社で業務手順を標準化するなら、ミスや遅れの影響が大きい業務を挙げ、その中から手順をそろえて試せる1つを選びましょう。というのも、対象を一度に広げると、手順を書く人も現場で試す人も、どこを直すか追い切れなくなるためです。最初は1つの業務で、今の動きを書き、共通の手順を試作し、使った結果を直すところまで進めます。この記事では、その着手基準から手順書の書き方、更新の続け方まで説明します。次の表で自社に近い状況を選び、どの作業からたどるかを考えてください。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 次に調べること |
|---|---|---|---|
| ミスや遅れが目立つ | 優先して標準化する | 影響が大きい業務を1つ選ぶ | どの工程でばらつくか、記録があるか |
| 担当者しか分からない | 見える化を先にする | その業務の流れを書き出す | 誰が、いつ、何を判断しているか |
| 問い合わせが多い | 回答基準をそろえる | ぶれやすい部分を標準化する | 例外の扱いをどこまで決めるか |
| 引き継ぎが頻繁 | 代替しやすい業務を優先する | 担当を交代する業務を選ぶ | 新人でも再現できるか |
標準化の対象を洗い出す
まず、日次、週次、月次に分けて業務を書き出します。毎日行う作業だけを思い浮かべると、月末月初に集中する仕事が一覧から抜けるためです。受注、見積、出荷、請求、問い合わせ対応、在庫の照合、納期連絡など、相手先とのやり取りを含む業務も挙げてみましょう。前の表で「担当者しか分からない」に当たった業務は、最初から手順を決めるより、誰がどの場面で判断しているかを書き出すところから始めます。
- 毎日必ず発生する業務
- 週に数回以上ある業務
- 月末月初に集中する業務
- 担当者しかやり方を説明できない業務
- ミスや手戻りが起きると影響が大きい業務
一覧には、業務名と一緒に「誰が」「いつ」「どこへ記録するか」を残します。たとえば担当者以外が手順を説明できない業務でも、毎日行うのか、月末だけなのかでは、代わりの担当へ渡す場面が違います。次の優先順位付けで比べられるよう、仕事の名前だけで終えないようにしましょう。
何から標準化するかを決める優先順位の付け方
一覧ができたら、ミスや遅れの影響と、手順を再現できる範囲を組み合わせて着手順を決めます。影響が大きくても、例外ばかりで共通手順を決めにくい業務は、試作の範囲を絞るところから考えます。一方、共通部分がすでに見えている業務なら、その部分を使って書き方と試し方を一巡させるのもひとつです。
比べる軸は、ミスや遅れの影響、発生頻度、担当を代わる場面、手順を一定にできる範囲です。次の表では、優先度が高い状態に加え、その情報を誰が持ち、どこへ残すかを示します。経営者だけで決めず、担当者の記録も同じ一覧へ集めて比べてください。
| 判断軸 | 優先度が高い状態 | 見る人 | 記録先 |
|---|---|---|---|
| ミスや遅れの影響 | 顧客対応や納期に直結する | 経営者・現場責任者 | 業務一覧メモ |
| 発生頻度 | 毎日または毎週発生する | 担当者 | 業務棚卸し表 |
| 担当を代わる場面 | 休みや欠員時に別の担当が受け持つ | 管理側 | 引き継ぎ一覧 |
| 手順の一定化 | 判断の分岐が少ない | 担当者と結果を照合する人 | 標準作業メモ |
表の「影響が大きい」「頻度が高い」「担当不在でも続ける業務である」「手順をそろえやすい」の4つが重なる業務を、上の候補に置きます。すべてを細かく点数化するより、まず3段階に並べる方法でも構いません。ただし、順位を付けただけでは試作する範囲は決まらないため、上位の業務から、短く試せる部分を選んでいきましょう。
最初の1業務はどれを選ぶべきか
最初の1業務は、前の節で挙げた上位候補の中から、試作を短く終えられるものを選びます。会社への影響だけで最大の業務を丸ごと選ぶと、書き終わる前に例外の説明が増え、現場で試す段階まで進めないことがあるためです。まず、手順を決めて使い、直すところまで経験できる範囲にします。
選ぶ目安は、例外が少ない、問い合わせが多い、引き継ぎが起きやすい、短時間で試作できるという条件です。たとえば、受注内容の照合や問い合わせへの回答でも、毎回見る資料や項目が共通している部分なら、最初の1件として取り出せます。業務名だけで選ばず、実際に同じ手順を使える範囲を担当者と探してください。
ただし、相手先の条件で毎回判断が変わる部分まで、一つの手順にまとめるわけではありません。共通して行う作業を先に決め、例外の条件と連絡先を別紙や備考欄へ分けます。例外を省くのではなく、通常の手順では判断できないときに、どこを読み、誰へ渡すかを残すということです。
標準化を進める順番
対象が決まったら、実際の動きを書き出し、採用するやり方を決め、手順書を試して直します。担当者の動きを見ないまま文章を完成させても、現場で迷う箇所が書かれていなければ使えません。そのため、次の5段階では、文章を作る前の比較と、作った後の試行を同じ流れに含めます。
- 現状の見える化をする
- 共通手順へ採用するやり方を決める
- 手順書を試作する
- 現場で試す
- 修正して定着させる
この5段階は、書類を作るだけで終えないための順番です。たとえば試行で判断に迷ったなら、その箇所を現状の記録へ戻って調べ、採用するやり方を決め直します。1つずつ進めながらも、前の段階へ戻って直せるよう、迷った箇所を記録しておきましょう。
1. 現状の見える化をする
最初に、誰がどの資料を受け取り、どの順で作業し、誰へ渡しているかを書き出します。担当者だけでなく、その結果を照合したり承認したりする人にも読んでもらいましょう。担当者の作業が終わった後にも、受け渡しが残る場合があるためです。紙でも表計算でも構いませんが、後から更新する場所を決め、理想の流れと実際の動きを混ぜずに残します。
2. 共通手順へ採用するやり方を決める
実際の動きが分かったら、担当者ごとに違う箇所を比べ、共通手順へ採用するやり方を決めます。相手先の条件に合わせて変えているのか、決まりがないため違っているのかを分けると、そろえてよい範囲が見えます。判断する箇所は「担当者が元資料と照合する」「管理者が承認する」のように役割を分け、何を根拠に決めるかも書いてください。
3. 手順書を試作する
手順書は、1枚で扱える範囲から試作すると良いでしょう。先に書くのは、作業の順番、照合する対象、記録先、例外時の連絡先です。たとえば架空の記入例なら、「受注内容を注文書と照合する」「不足があれば営業担当へ戻す」「完了後は受注一覧に記録する」とつなげます。「よく見る」だけでは、何を見て、その後どうするかが残らないため、対象と動作を一緒に書きます。
4. 現場で試す
試作したら、まず担当者と、結果を照合する人で使ってみます。迷った箇所や例外で止まった箇所をその場で書き留めれば、文章を短くするのか、判断条件を足すのかを考えられます。変更したときは、更新日と改定理由を残し、どの版を使うかを示してください。旧版を現行の資料と同じ扱いで置くと、直した内容が次の担当へ伝わりません。
5. 修正して定着させる
試行で直した内容は、新人教育、日々の照合、例外時の連絡でも使う資料へ反映します。教える資料と現場で使う資料が違えば、同じ業務でも手順が分かれるためです。その後は月1回などの見直し時点と、更新責任者1人を決め、使われない箇所や実際の作業と違う箇所を直していきましょう。
公開事例で見る、工程比較から標準を見直した例
実際の動きを比較した例として、株式会社アルバックの公開事例があります。同一製品のボンディング工程を2工場で比べたところ、1枚当たり74分の作業時間差があり、定点カメラで動線を、tebikiの動画で細かな作業を調べたうえで、両工場によるレビューを通じて標準工程を見直したと紹介されています。先に工程の違いを調べ、その比較から標準を検討した取り組みです。
この公開事例では、取り組みから約6か月で東北工場のボンディング工程の製作時間を78分短縮し、日産可能枚数が167%になったとされています。ただし、公開元が実測として示した条件下の結果であり、工程や現場条件が違う読者の会社で同じ結果を保証するものではありません。自社で参照する際は、数字だけでなく、何を比較して標準を見直したかを株式会社アルバックの公開事例で読んでください。出典:Tebiki公式導入事例。
手順書・チェックリストに落とすときの書き方
ここまでの手順を文書へ残す際は、作業そのものと、条件によって分かれる判断を区別します。「丁寧に行う」と書いても、どの状態なら次へ進んでよいかは読み取れないためです。次の表では、対象・条件・その後の動作まで書いた例と、それらが読み取れない例を比べてください。
| 書き方 | よい例 | 避けたい例 |
|---|---|---|
| 作業の書き方 | 受注内容を注文書と照合し、不足があれば営業担当へ戻す | 内容を丁寧に見る |
| 判断の書き方 | 数量に差異がある場合は出荷前に元の指示と照合する | 状況に合わせて対応する |
| 記録の書き方 | 照合後は受注一覧に日時と担当者名を記録する | 関係することを記録する |
| 例外の書き方 | 例外時は管理者へ連絡し、対応内容をメモに残す | 場合によって判断する |
表のよい例は、単に文が短いという意味ではありません。何を照合し、不足や差異があったらどうするかが読める点に違いがあります。チェックリストでは1項目1判断を目安にし、別の判断が混ざる場合は項目を分けましょう。現場で対象を指しながら読んだとき、どこまで済んだかを残せる形にします。
現場で定着させる運用ルール
手順書を使い始めたら、変更を誰が受け取り、どの資料を直し、誰へ知らせるかまで決めます。現場だけでやり方を変えると資料が古くなり、資料だけを直すと作業者に変更が届かないためです。次の4点を、今ある記録先と教育資料に結び付けてください。
- 更新責任者を1人決める
- 変更時の見直し手順を決める
- 新人教育の資料と共通化する
- 例外対応の記録方法を決める
たとえば例外対応の記録から通常手順を変えることになったら、更新責任者が資料へ反映し、関係者へ知らせます。新人へ教える資料も同じ版に合わせれば、以前のやり方を教えてしまう食い違いを避けられます。変更内容を口頭で伝えたところで終えず、次に使う人が新しい手順を読めるところまで行いましょう。
標準化で失敗しやすいパターン
標準化が進まないときは、対象を広げすぎていないか、現場の動きを読まずに書いていないか、更新しない資料を残していないかを見直します。どれかに当たるなら、文章量を増やす前に、今使う共通部分へ範囲を戻す方法があります。ただし、例外の連絡先まで消してはいけません。通常の手順にまとめられない部分は分けて残し、試した結果を受けて扱いを決めていきましょう。
すぐ使える標準化着手チェックリスト
次のチェックリストは、最初に試す業務を選ぶための目安です。3つ以上当てはまる業務を候補に挙げ、その中から実際に手順を1枚程度へ書ける範囲を探します。当てはまる数だけで決定せず、担当者が試行に参加できるか、例外を分けて残せるかも見てください。
- ミスや遅れが顧客対応や納期に直結する
- 毎日または毎週発生する
- 担当者以外が手順を説明しづらい
- 休みや欠員時に別の担当が受け持つ
- 同じ作業なのに人によってやり方が違う
- 問い合わせが多く、回答がぶれやすい
- 共通する手順を1枚程度に書けそうである
- 記録先を決めれば管理しやすい
着手前には、対象業務の名前、担当者、結果を照合する人、記録先、変更時の連絡先を残します。紙でも構いません。ここが空いたままだと、試作で疑問が出ても、誰が判断してどこを直すかが決まらないためです。候補を選んだら、この受け渡しまで書いてから試しましょう。
日々の終業作業を最初の対象にするなら、終業前の片付けと翌日準備を標準化する方法で、終わらせる作業と翌日へ渡す作業の分け方を読めます。手順を決めても口頭指示が残る場合は、少人数の工場で口頭指示を減らす実務手順を参考に、指示を残す場所までつなげてください。
よくある質問
少人数会社では、最初にどの業務を標準化すべきですか?
ミスや遅れの影響が大きく、発生頻度が高い業務の中から、共通手順をそろえられる部分を選びます。たとえば受注内容の照合や問い合わせ対応でも、顧客ごとの例外まで一度に書くと試作が長くなります。最初は、毎回同じ資料や項目を使う範囲を取り出すと良いでしょう。
標準化とマニュアル化は何が違いますか?
標準化は、採用するやり方を決めて、作業のばらつきを減らすことです。マニュアル化は、そのやり方を文書やチェックリストへ書くことを指します。そのため、文章を先に完成させるより、現場で使う標準を決め、その判断と動作が読める形にする順番で進めます。
標準化は1業務ずつ進めるべきですか?
少人数会社では、まず1業務ずつ試す進め方が考えられます。複数の業務を同時に変えると、使った結果を読む作業や資料の更新も重なるためです。関連する仕事が多い場合も、最初は1つの共通部分で、試行から改定までを一巡させてから範囲を広げましょう。
標準化したのに現場で使われないときはどうすればいいですか?
長すぎる、判断が曖昧、置き場所が分からない、更新されていない、の4点から、実際に使わなかった理由を探します。たとえば長くて読めないなら、現場で使う共通部分を1枚へ絞る方法があります。一方、置き場所が分からないなら、文章を短くするだけでは変わらないため、資料の置き場と更新責任者を決め直してください。
まとめ
少人数会社で標準化を始めるときは、業務を一覧にし、影響と頻度、代わりの担当、共通手順の作りやすさを比べます。そのうえで1業務だけを試作し、担当者が使って迷った箇所を直しましょう。例外が多い業務でも、通常の手順と例外時の連絡先を分ければ、最初に試す範囲を考えられます。
使い始めた後は、更新責任者と記録先を固定し、月1回など決めた間隔で資料と実際の動きを比べます。試して初めて分かった条件は、次の版へ反映して関係者へ渡してください。まずは1つの業務で、書く、試す、直す、知らせるところまでつなぐことから始めると良いでしょう。

