赤札を付けていても、何の品か、何個を保留したのか、誰の判断を待っているのかが分からないと、処置が止まってしまいます。不適合品隔離ラベルには、状態表示、品番・品名、追跡用の識別番号、数量、不適合内容、発見日、記入者、処置状態・判断待ち先の8項目を基本として設けましょう。この記事では、判定前の疑い品も含めて誤使用を止め、次の担当へ渡せる表示と運用を説明します。指定要求がある場合は、それに沿った欄も加えてください。
| 状況 | 判断 | 最初の対応 | 次に点検すること |
|---|---|---|---|
| 赤札はあるが内容が読めない | 表示項目が不足している | 基本8項目と指定要求に沿って様式を改訂する | 品番・数量・発見日が必ず読めるか |
| 処置待ち品が長く残る | 担当・期限が不明確である | 状態と判断待ち先を選択欄にする | 古い保留品を点検し、期限超過を連絡できるか |
| 良品と不適合品が混ざる | 貼付・置き場の管理が不足している | 対象全体へ貼付し専用区画へ移す | 分割した箱にも識別が残るか |
| 紙の件数が増えて追えない | 一覧との対応がない | ラベル番号を付けて一覧表に転記する | 状態、担当者、期限を更新できるか |
不適合品隔離ラベルは「何の品か・何が起きたか・次に誰が動くか」を示す
隔離ラベルの役割は、その品を使ってよい状態ではないと伝え、判断や処置に使う情報を引き継ぐことです。たとえば「不良」だけの札では、箱を開けなければ対象が分からず、問い合わせ先も探すことになります。そこで、品物の識別と起きた事実、次に動く人を同じ札から読めるようにします。
上部には「不適合品」「判定待ち」「使用禁止」「隔離中」など、状態に合う統一文言を大きく表示します。まだ不適合と決まっていない品は、確定扱いにせず「判定待ち/使用保留」としてください。その下を現品の特定、発見内容、処置の進捗という3群に分けると読み取る順序が揃います。札だけで誤使用を防げるわけではないため、良品と混在しない専用置き場や容器も併用します。
隔離ラベルの基本となる8つの表示項目
基本の8項目は、発見者が事実を書けて、後の担当者が現品を探せることを狙った構成です。社内だけで通じる略称を多用すると、引継ぎのたびに聞き直すことになります。品番や数量の書き方を決める一方、顧客要求や対象の危険性に関わる情報は、項目数に合わせて削らないようにしましょう。
- 状態表示:確定した不適合品と判定待ちを分け、「使用禁止/保留中」など状態に合う統一文言を大きく表示します。
- 品番・品名:伝票や現品表示と照合できる名称を記入します。品名だけでは重複する場合、品番を必須にします。
- 識別番号:ロット番号、製番、受入番号など、追跡に使う単位を少なくとも一つ書きます。
- 数量・単位:「2箱・40個」など、実際に数えた箱数と中身の個数を併記します。未計数なら、判明した範囲と未特定数量を分けます。
- 不適合内容:寸法、傷、数量差、工程記録の欠落など、発見した事実を短く書きます。疑いは確定事項と分けます。
- 発見日:処置待ちの日数を追うため、発見時点の日付を記入します。
- 記入者:内容の問い合わせ先として、氏名や担当記号など社内で追える表記に統一します。
- 処置状態・判断待ち先:現在の状態と、次に判断する担当を示します。状態は選択式にします。
上の数量欄は、実際に保留した現品と一致させます。再検査へ一部を移すなど数量が変わったら、元の数字を消すだけでなく、変更日、移動先、移動数量、残数量、変更者を残してください。作り直したラベルには新番号や枝番を付け、旧番号との対応を一覧にも記録します。旧ラベルは現品から回収して無効と区別し、履歴の保管方法は記録ルールに従います。
処置が決まる前と決まった後で記入欄を分ける
発見時点で処置方法まで書こうとすると、肝心の使用停止や連絡が遅れることがあります。そのため、直後に分かる欄と判断後に追記する欄を分けましょう。記入が終わるまで待つのではなく、所定の停止・保留・連絡を先に行い、判明した内容から残します。
発見者は、状態、品番・品名、識別番号、数量、発見内容、工程、日時、自分の名前を記入します。分からない情報を推測で埋めず、未特定の項目を示して責任者へ渡してください。処置が決まっていなければ「判定待ち」とし、品質担当など所定の相手へ判断を依頼します。「再加工可」と書くのは、方法と対象範囲が承認されてからです。
判断後には、処置区分、判断者、担当者、期限、再検査の扱いを追記します。「判定待ち」「再加工待ち」「再検査待ち」「返品待ち」「廃棄待ち」「特別な判断待ち」などから選べると、表記を揃えやすくなります。ただし、処置決定と実施完了は別です。返品や廃棄は承認後に該当する待ち状態へ移し、特別な判断を要する品も、許可が出るまで通常の良品置き場へ戻しません。
自社の運用に合わせて試す隔離ラベル記入テンプレート
次はA4用紙へ4面配置する場合のたたき台です。小箱、通い箱、パレットでは見る距離や記入量が違うため、この大きさで十分とは限りません。実物に付けて文字の読める位置と余白を試し、判定者、処置担当、解除を承認する人も決めてから使ってください。
状態を選択:不適合品/判定待ち 使用禁止 保留中
ラベル番号:________
品番・品名:________
ロット・製番・受入番号:________
隔離数量・単位(未特定ならその旨):________
不適合内容・発見した事実:________
発見工程・発見場所:________
発見日:__年__月__日 記入者:________
状態:□判定待ち □再加工待ち □再検査待ち □返品待ち □廃棄待ち □特別な判断待ち
判断者・担当:________ 処置期限:__年__月__日
処置内容・実施日:________
再検査結果・解除承認者:________ 使用保留解除日/最終処置完了日(該当区分):__年__月__日
ラベル番号は、同じ現品群を追えるよう重複しない規則で付けます。たとえば「250401-001」という日付と連番の組合せを用い、後述の一覧表の同じ番号へ対応させます。日付形式や桁数は社内で統一し、再発行や分割の際にも旧番号からたどれるようにしてください。
不適合内容は発見した事実と未確定事項を分けて書く
内容欄では、原因の推測と発見した事実を分けます。「不良」「調査中」だけでは、担当者が現品を見るまで何が起きたか分かりません。そこで、対象箇所と規格との差、判明している対象範囲を書きましょう。分からない原因や範囲は未確定と示し、断定した表現を使わないことが要点です。
| 場面 | 記入例 | 処置状態の例 |
|---|---|---|
| 工程内の寸法不良 | 品番:A-123/製番:M-045/12個。穴径が指定範囲外。測定済み12個を隔離。 | 処置の判定待ち。再加工承認後は再加工待ち |
| 受入材料の外観不良 | 受入番号:R-210/仕入先ロット:L-88/1束。表面に目視で見える傷あり。 | 判定待ち。返品承認後は返品待ち |
| 仕掛品の工程飛ばし疑い | 製番:W-077/対象:5個。工程票に処理記録がない。実施の有無は未判定のため次工程へ投入せず隔離。 | 特別な判断待ち |
| 悪い表記からの改善 | 悪い例:「たぶん傷」「調査中」/改善例:「側面に傷。対象10個を隔離。外観判定待ち」 | 判定待ち |
上の表は書き方の例で、合否基準や処置方法を定めたものではありません。たとえば測定済み12個を隔離したとしても、影響する品がその12個だけとは限らないため、未検査分を含む範囲は別途調べます。規格値、図面、検査結果などが札に収まらなければ、詳細記録の番号と保管先を併記してつなげてください。
色・貼付場所・置き場をそろえて誤投入を防ぐ
内容が正しくても、運搬中に札が隠れると誤投入を止めにくくなります。不適合品用の色を決め、良品や検査待ちと見分けられるようにしたうえで、状態を示す文字も併記しましょう。色覚の違いや汚れ、照明の影響があるため、赤い札だけで意味が伝わるとは考えない運用にします。
- 箱、通い箱、パレット、現品袋のうち、移動時に最も見える面へラベルを貼る。
- 小物を複数の袋や箱へ分けた場合は、代表札だけでなく各単位に識別を残す。
- 隔離場所には「不適合品置き場」と表示し、処置状態ごとに置く区画を決める。
- 札が剥がれた場合は使用を保留し、所定の担当が現品と記録を照合して再発行する。対象が特定できなければ推測で札を付けない。
- 数量を分割した場合は、分割先ごとに新しいラベルを付け、元ラベルと一覧表へ分割先を記録する。
置き場は、専用の棚や容器、台車などを用い、良品と実際に混在しない形を選びます。床の枠線は区画を示す補助になりますが、それだけで物理的に混入を防げるわけではありません。発見者がどこへ移し、判断者がどこで探すかを決め、通路や工程脇へ放置しないようにしてください。
隔離から処置完了までを担当と期限で追う
札を付けた後も、判断依頼から処置、再検査、解除または最終処置まで担当者を引き継ぎます。ここが空欄だと、見つけた人は連絡済みと思い、判断する人は依頼を受けていないという食い違いが起きます。各段階の担当と期限を残し、次の相手が受け取ったところまで追いましょう。
- 発見者は所定の停止・保留・連絡を先に行い、安全な方法で対象を識別・隔離して判明した事実を記入する。
- 品質担当または責任者は、ラベル番号と現品を照合し、処置状態、判断者、期限を追記する。
- 再加工は方法・対象・再検査を事前に承認して実施する。作業完了だけで使用保留を解除しない。
- 返品または廃棄は、承認対象と現品・数量を照合して実施し、処置の完了を記録する。
- 使用保留の解除は、検査結果と解除条件を満たした対象へ権限者が承認する。返品・廃棄完了は別の処置区分で記録する。
そのうえで、品質担当者や置き場の管理者が毎日または週に一度などの周期で見回ります。古い「判定待ち」「特別な判断待ち」を抽出し、担当・期限が空欄なら判断依頼先を決め、一覧や朝礼記録へ残してください。ただし、この周期は放置を見つけるためのものです。緊急の異常や期限超過を把握したときは次の見回り日まで待たず、所定の相手へ連絡します。
紙ラベルから一覧管理へ広げるときの最小ルール
件数が増えたら、紙をなくす前にラベル番号と一覧を結びましょう。一覧表の1行と現品ラベルの1枚が対応すると、離れた場所からでも処置待ちや期限を探せます。以下の8欄を一覧の入口とする場合も、発見時の基本8項目と同じ構成ではない点に注意してください。記入者や発見工程などの詳細を、ラベル番号から元記録へ戻って読めるようにします。
- ラベル番号
- 品番・品名
- 識別番号
- 隔離数量・単位
- 発見日
- 不適合内容
- 状態
- 担当者・期限
一覧の更新担当を決め、数量や状態を変えたときに現品ラベルと両方へ反映します。片方だけ直すと、保留中なのに使用可能と読まれるおそれがあるためです。QRコードを使う場合は、まず番号から該当行や隔離記録を開く用途で試し、読取後に現品との一致も照合しましょう。導入の流れはQRコードで材料の入出庫を記録する方法|スマホで始める手順でも説明しています。
また、不適合内容の要約を作る場合も、原記録と現品の代わりにはなりません。品番、識別番号、数量、処置状態を担当者が照合し、原因の推測が事実へ変わっていないかも読みます。点検の進め方はAIで不良報告を要約するときの確認項目|誤判断を防ぐ手順を参照してください。工程別や日付別に集計するときも、同じ対象の重複登録や再発行分の二重計上を除いて比較します。
よくある質問
ロット番号がない部品は、何を識別番号として書けばよいですか?
製番、受入番号、作業指示番号、入荷日と保管場所の組合せなど、実際の現品群へたどれる情報を用います。既存番号がなければ隔離時にラベル番号を付け、品番、発見工程、発見日、数量を併記しましょう。ただし、番号を新しく付けても来歴が判明するわけではありません。品番や範囲が未特定なら、その状態で保留し、元資料を調べて対応を確定します。
1つの箱に良品と不適合品が混在したとき、どう管理しますか?
まず箱全体を使用保留とし、所定の判定と選別方法に従って対象を分けます。良品と不適合品を見分けられ、責任者が範囲を判断できた場合は別容器へ移して識別を残します。分けられない場合は箱全体を隔離し、判明した各数量と未判定数量を区別して記入してください。中身を数えていないのに、総数から良品数を推測して使用へ回してはいけません。
再加工した品物は、元の不適合品ラベルを外してよいですか?
再加工が終わっただけでは外しません。承認された方法で作業し、定めた再検査とほかの解除条件を満たしたうえで、権限のある担当者が対象範囲と使用保留の解除を承認します。一方、返品や廃棄の完了は、良品としての解除とは別区分で残してください。回収した札の保管・廃棄は記録ルールに従い、一覧には処置内容、判定・承認者、完了日を残します。
処置判断に時間がかかる不適合品は、いつ誰が状況を調べますか?
置き場の管理者や品質担当者が、発生量と処置にかかる期間に応じて日次・週次などの周期を決めます。ただし、担当者がいない札や期限を過ぎた品に気付いたら、定期日を待たず判断依頼先を決めてください。長期保留では状態や数量の変化も追い、期限を延ばす場合は理由と決めた人、新しい期限を記録します。
まとめ
まず現行の札を見て、状態表示、品番・品名、追跡番号、数量、発見内容、発見日、記入者、処置状態・判断待ち先の8項目が読み取れるかを点検しましょう。そのうえで、判明した事実を書く欄と判断後の欄、置き場、貼付位置、再発行と数量移動の手順を決めます。運用後は古い保留品や担当の空欄、数量のずれを探し、原因に合わせて直してください。札は識別と引継ぎの道具です。検査や処置の承認そのものを置き換えるものではありません。

